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寄合酒|落語のあらすじ・オチ解説【金なし男子会の泥棒グルメ宴会】

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古典落語-寄合酒
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寄合酒

3行でわかるあらすじ

町内の若い連中が集まって飲み会をするが誰もお金がなく、一人は「パッチの紐をゆるめた」と下着の準備だけ。
棒だら、数の子、鯛、かつお節を泥棒同然の方法(盗み、騙し、犬から奪取、脅し)で材料調達する。
料理は大失敗で鯛は犬に全部食べられ、擂りこぎがわからない男が自分の股間を不思議そうに眺める始末。

10行でわかるあらすじとオチ

町内の若い連中が集まって飲み会をすることになり、世話役が頭割り500円を提案するが皆お金がない。
「立て替えてくれ」「財布忘れた」という中、一人の男は懐に手を入れて「パッチの紐をゆるめた」と下着の準備だけ。
世話役は仕方なく材料を各自一品ずつ持参することにして、連中が材料調達に出かける。
棒だらは乾物屋で値段を聞き「市場の方が安い」と嘘をついてそのまま持ち逃げする。
数の子は風呂敷をかぶせて小豆をくれと言い、風呂敷を取る時に一緒に数の子も盗む。
鯛は魚屋の荷から鯛をくわえて逃げる犬を棒で叩いて犬から奪い取る。
かつお節はかつぶし屋の坊ちゃんに鬼ごっこをやろうと言って脅し、逃げた後にそのまま持参する。
いよいよ料理開始だが、鯛のウロコを取っていると犬が現れ、世話人の「食わせろ」の指示で尾、頭、胴を全部犬に食べられる。
数の子は炊いて焦がし、かつお節の汁は痔の患者がケツを温めて足を洗った残り湯にふんどしをつけた代物。
味噌を擂らせようと擂りこぎを説明する世話人に対し、「あんたの真ん前にぶらさがっているやつ」で男が股間を見回すオチ。

解説

「寄合酒」は、江戸時代の庶民の貧しさと無知を痛烈に笑いにした古典落語です。
現代でいう男子会のような設定ですが、参加者全員が金欠で、一人は「パッチの紐をゆるめた」という下着の準備だけという惨状から始まります。
材料調達の手法は完全に窃盗・詐欺・恐喝の類いで、現代では犯罪行為ですが、当時の庶民の生活の厳しさを表現した社会批評でもあります。

料理の場面では当時の庶民の料理に対する無知が描かれており、鯛を犬に食べさせてしまう世話人の指示、数の子を炊いて焦がす、かつお節の出汁を不衛生な用途に使うなど、現代の常識から見ると驚愕の内容です。
最後の擂りこぎのオチは、道具の名前すら知らない無知さを表現しており、世話人の「あんたの真ん前にぶらさがっているやつ」という曖昧な表現を男性器と誤解する二重の無理解が重なった秀逸な構成となっています。
この作品は貧困と無知を笑いに変えることで、聴衆に共感と安堵を与える庶民文化の代表的な作品といえます。

あらすじ

町内の若い連中が寄り集まって、一杯やることになる。
世話役は500円の頭割りにしようというが、「立て替えてくれ」・「財布忘れた」・「財布はあるが中身を忘れた」など、空っけつばかり。
すると黙って懐へ手を入れる男、500円出すのかと思いきや、「飲むと決まったから、パッチの紐をゆるめた」だと。

あきらめた世話役は酒は自分が用意するから、材料と酒のつまみを一人一品づつ持って来るように言う。
早速、棒だらを1本持って来た男、横丁の乾物屋で店主が新聞を読んでいるすきに、1本をかついで、1本を手に持ち、これいくらだと言うと100円という、男はかついでいるのを指してこれは公設市場で70円で売っていた、もう一度、市場で買ってこうと言って、そのまま1本持って来たのだ。

次に数の子を持って来た男は、同じ乾物屋で数の子の上に風呂敷をかぶせ、小豆をくれと言うと、店主から隣の雑穀屋へ行け言われ、風呂敷をさぁーと取る時に一緒に数の子もついて来たなんという調子だ。

今度は大きな鯛を持った男が帰って来た。
魚屋の荷から鯛をくわえて走って行く犬を追って、棒きれで叩いて犬が鯛を放したすきに拾って来たという。

かつおぶし2本を持って来た男は、かつぶし屋のぼんぼんに鬼ごっこをやると言って、ぼんぼんに店のかつぶしを持って来させ、角にして追いかけたらぼんぼんが「こわい、こわい」と逃げて行ってしまったので、そのまま持って来たという。

さて、材料が揃い手分けして料理に取り掛かる。
鯛のウロコを「バリボリバリボリバリボリ」と取っている男のそばに犬が寄って来た。
追っても逃げない。
男は世話人にどうしようと聞くと、「ば-ん、とくらわせろ」と言う。
男「どこをくらわせる」 世話人「どこでもいいからくらわせろ」 男は鯛の尾を食わせたが、まだ逃げない。
こんなやりとりの末、頭も胴も犬に食わせてしまって、鯛の姿はなくなってしまった。

焦げ臭いにおいがすると思ったら、数の子を炊いている男がいる。
塩で揉むんだというと、ねぎを塩で揉んでいると言う。
かつおぶしは釜でぐらぐらはよかったが、だしがらをざるに大盛りにして持って来た。
汁はどうしたと聞くと、もったいないから痔の悪いやつがケツを温め、その後で足を洗った。
残り湯にふんどしをつけてある。
しぼって持って来ようかなんて有様だ。

世話役は手が空いている男に味噌を擂(す)らせようと、すり鉢を持って来させるが、擂りこぎが分からない。

世話役 「先のなれた、丸い、ぶらんとしているやつだ。あんたの真ん前にぶらさがっているやつだ」、勘違いした男、自分の股倉あたりを不思議そうに眺めている。
やっと擂りこぎを持った男に世話役が頭を濡らせと言うと、自分の頭を濡らし始めた。

わいわい騒いでいる、寄合酒の一席。


落語用語解説

寄合酒(よりあいざけ)
仲間が集まってお金を出し合い、酒を飲む集まりのこと。現代でいう「割り勘飲み会」に近いが、この噺では誰も金を持っていない。

パッチ
江戸時代の男性用下着。ももひきのような形で、紐で腰に結んで着用した。「パッチの紐をゆるめた」は飲む準備だけ整えた状態を指す。

棒だら
干したタラを棒状にしたもの。江戸時代の保存食で、水で戻して調理した。

数の子
ニシンの卵。塩漬けにして保存し、塩抜きして食べる。この噺では炊いて焦がしてしまう。

擂りこぎ(すりこぎ)
すり鉢と一緒に使う棒状の道具。味噌や山椒を擂る時に使う。

野施行(のせぎょう)
路上で施しをすること。托鉢僧や貧しい人に食べ物や金銭を与える善行。


よくある質問(FAQ)

Q: なぜ材料を盗んだのに落語として楽しめるのですか?
A: 江戸時代の落語は庶民の貧しさを笑いに変えることで、聴衆に共感と安堵を与える娯楽でした。現代の価値観では犯罪行為ですが、当時は生活の厳しさを表現した社会風刺として受け入れられていました。

Q: 「擂りこぎがあんたの真ん前にぶら下がっている」で股間を見るオチの意味は?
A: 世話人は擂りこぎの場所を説明しようとして「先のなれた、丸い、ぶらんとしているやつ」と言いましたが、この曖昧な表現を男が男性器と勘違いしたというオチです。道具の名前すら知らない無知さを表現しています。

Q: 鯛を犬に全部食べさせてしまったのはなぜですか?
A: 世話人が「くらわせろ」と言ったのを、男が「食べさせろ」と解釈してしまったためです。「ば-んとくらわせろ」は「叩け」という意味でしたが、言葉の行き違いで鯛が全部犬の餌になってしまいました。

Q: かつお節の汁が不衛生になった理由は?
A: かつお節でだしを取った後、その汁を「もったいない」と痔の患者がお尻を温め、さらに足を洗うのに使い、残り湯でふんどしを漬けたという設定です。衛生観念の欠如を極端に表現した場面です。

Q: この噺はなぜ人気があるのですか?
A: 貧しさと無知を笑いに変えることで、聴衆に「自分たちはまだましだ」という安堵感を与える効果があります。また、次々と失敗が重なる展開はコメディとして純粋に面白く、現代でも通じる普遍的な笑いがあります。


名演者による口演

五代目 古今亭志ん生
材料調達の場面を生き生きと演じ、特に犬から鯛を奪い取る場面で爆笑を誘った。擂りこぎのオチまでテンポよく聴かせた名演。

三代目 三遊亭金馬
貧乏人たちの悲哀を愛嬌たっぷりに演じ、「パッチの紐をゆるめた」の場面で客席を沸かせた。

六代目 三遊亭円生
料理の失敗場面を丁寧に描き、鯛が犬に食べられていく様子を臨場感たっぷりに演じた。


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この噺の魅力と現代への示唆

「寄合酒」の魅力は、貧しさと無知を笑いに変えることで生まれる独特の痛快さにあります。金もないのに酒盛りをしようとし、材料を泥棒同然の方法で調達し、料理は大失敗するという展開は、現代でいう「しょうがない人たち」の集まりです。

現代でも、飲み会で「財布忘れた」「立て替えておいて」という人はいます。「パッチの紐をゆるめた」という、飲む準備だけ万端な男は、現代にも通じるダメ人間の典型です。しかし、そうした人々を責めるのではなく、笑いに変えることで救いを与えるのが落語の力です。

また、料理の場面では当時の庶民の料理に対する知識の乏しさが描かれています。数の子を炊く、擂りこぎを知らないなど、現代では考えられない無知ぶりですが、これは教育が行き届かなかった時代の現実を反映しています。

実際の高座では、材料調達の手口の巧みさと料理の失敗の対比が見どころです。落語会で「寄合酒」がかかった際には、演者がどのように貧乏人たちの悲哀と滑稽さを演じ分けるかに注目してみてください。

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