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【古典落語】欲の熊鷹 あらすじ・オチ・解説 | 欲深い二人をカモにした美女の巧妙な詐欺術

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古典落語-欲の能鷹
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欲の熊鷹

3行でわかるあらすじ

鰻谷の通りで二人の男が5円札の入った財布を拾い、半分ずつ分けることにするが細かいお金がない。
通りがかりの美しい女性が親切に両替を申し出て、5円を1円札5枚に替えて各人に2円ずつ渡す。
残り1円に女性が自分の1円を足して手数料として2円を取り、結果的に女性が一番得をするオチ。

10行でわかるあらすじとオチ

鰻谷の通りを歩いていた二人の男が、道端に落ちている財布を発見して「あんた拾い…」と押し付け合う。
結局、中身を半分ずつ分けることで合意し、開けてみると5円札が1枚入っていることが判明する。
2円50銭ずつ分けたいが細かいお金の持ち合わせがなく、どこかで両替してくれる所を探すことになる。
そこへ近くの家から美しい女性が現れ、困っている様子を見て親切に両替を申し出てくれる。
女性が家に入っている間、二人は彼女を妾だと勝手に憶測し、犬の名前まで勝手に決めつけて話している。
女性が戻ってきて、5円札を1円札5枚に両替して持参し、二人に各々2円ずつ手渡す。
残った1円について、女性は自分からもう1円を足してちょうど2円にすると説明する。
この2円は両替の手数料として女性が受け取ることになり、二人は納得してしまう。
結果として女性は実質1円の利益を得て、二人は各々2円しかもらえない計算になる。
人間の欲と計算違いをコミカルに描いた、上方落語らしい巧妙なオチが見事な作品。

解説

「欲の熊鷹」は上方落語の店噺の一つで、人間の欲深さと計算能力の乏しさをユーモラスに描いた作品です。

この噺の巧妙な点は、一見親切そうに見える女性の行為が実は巧妙な詐欺であることにあります。
数学的に考えれば、5円を1円札5枚に替えて各人に2円ずつ渡した時点で残るのは1円ですが、女性はそこに自分の1円を足して「手数料」として2円を取ります。
これにより女性は実質的に1円の利益を得ることになります。

また、待っている間の二人の勝手な憶測(女性が妾だ、犬の名前はタマだ等)も笑いの要素となっており、落語らしい庶民的なユーモアが詰まっています。
タイトルの「欲の熊鷹」は、欲深い二人が結果的に鷹(高い代価)を払うことになるという皮肉を込めたものと考えられます。

あらすじ

鰻谷の通りを歩いて来た二人、すれ違う時に下に財布が落ちているのに気づく。
甲 「財布が落ちてまんなぁ」

乙 「財布でんなぁ。あんた拾いはったらどうです」、「あんた拾い・・・」、「あんた拾い・・・」で結局、

甲 「この財布拾ろてお金入ってたら、半分ずつちゅうことにしまひょか」という事で交渉成立。

乙 「何ぼ入ってます、五百円?」

甲 「桁が違(ちゃ)います。五円札一枚、半分は二円五十銭ということで・・・わたしちょっと細かいもんの持ち合わせがおまへんねが、あんた細かいもん持ち合わせおますか?」

乙 「わたしも細かいもん持ち合わせおまへんねん」

甲 「どこぞで五円替えてくれるとこあったらよろしのになぁ・・・」、そばの家から若い女が出て来て、

町家の女 「あのぉ、先程から聞いとりますとお困りのご様子ですけど、何でしたらわたしの方で両替さしていただきましょか?」

甲 「この人に二円五十銭渡さんなりまへんねん。細かいもんが無いので困っとりましたんで、両替していただけまっしゃろか?」

町家の女 「承知いたしました」、女は五円札受け取って家の中に入った。

乙 「えらい別嬪さんでんなぁ」

甲 「ここの家(うち)の構え、今のお方の化粧の仕方、着物の着こなし、どお見てもただもんやないと思いますなぁ」

乙 「すると曲者でっか?」

甲 「そやおまへん、わたしの勘ではこちら妾宅、お妾(てかけ)さんの家やと思いまんなぁ」

乙 「やっぱし、そうだすか。歳はいくつぐらいで?」

甲 「そうでんな見るところ二十七、八やないかと・・・」

乙 「 そんなとこやろやろけど、化粧落としたら三十五、六、朝起きはった顔は四十五、六・・・旦那ちゅうのは船場の大店の大旦那で、歳の頃は六十二、三、でっぷり肥えてちょっと髭生やして眼鏡かけはって・・・」

甲 「そんなこと、あんた分かりますか?」

乙 「この旦那が来るとチンが一番先に気づいて出迎えますわ。
それで女中のお竹さんが出て来ますんや・・・ちょっとあそこ見てみなはれ。ちゃ~んと犬がこっち見てまっしゃろ、やっぱりチンですわ、わたいの勘がぴったし当たってまんねん・・・チン来い!タマ来い」

甲 「何ですねん、そのタマちゅうのは?」

乙 「チンの名前ですがな。
わたいが呼んだら来まっせ。タマ来 い!チン来い!チンよ、タマよ、チンタマよ」

甲 「あんたなに言うてまんねん」

乙 「ほぉ~れ来ましたろ。可愛いもんでっしゃろ。 ・・・もしあんた、何ぞ食べんもん持ってなはれまへんか?」

甲 「そんなもん、持ち歩いておまへんやがな」

乙 「そうやろな、・・・ほな、この袂糞でも食わしたろ・・・」

甲 「そんなもん食わせよって・・・あぁ、可哀そうにくしゃみして、もがいてるがな」

乙 「こら、くしゃみなどせんで三辺回って、ワンと言え」、なんて犬に向かって無理難題を言っている。 

甲 「それにしてもえらく待たせまんなあ」

乙 「こらひょっとして五円持って裏から逃げたんと違(ちゃ)うやろか」

甲 「そんなアホなこと、これだけのうち構えてて、五円やそこら持って逃げたりしはりますかいな」

町家の女 「えらい長いことお待たせいたしまして、わたしのところにもあいにく細かいのが無かったもんですから、よそへ両替にやっとりまして、えらい遅なりまして・・・」

甲 「いえいえ、とんだ御手数をおかけして相済まんことで・・・」

乙 「あのお女中さんはお竹さんでしゃろな」

町家の女 「お梅です」

乙 「ほな、このチンはタマちゅう名前で・・・」

町家の女 「いいえ、クシャです。・・・ほんだらここに一円札で五円ございます。これ二円をあんさんに、、この二円はあんさんにお渡しいたします」

甲 「こらどうも恐れ入ります。頂戴いいたします。・・・あと一円残りますなぁ・・・」

町家の女 「へえ、この一円へ、わたしの方からもう一円足しますと、ちょうど二円になりますなぁ」

甲 「へぇへぇ、二円になります」

町家の女 「これはわたしが、手数料に頂戴いたします」


落語用語解説

鰻谷(うなぎだに)
大阪市中央区にある地名。心斎橋の東側に位置し、商店や住宅が立ち並ぶ庶民的な通りだった。

五円札
明治から昭和初期にかけて発行された紙幣。当時の五円は現在の価値で数千円から1万円程度に相当する。

妾宅(しょうたく)
妾(てかけ)が住む家のこと。江戸時代には裕福な商人が妾を別宅に住まわせることが珍しくなかった。

両替(りょうがえ)
大きな金額の紙幣を小額の紙幣や硬貨に交換すること。江戸時代には両替商が金融業の中心を担っていた。

手数料
両替やサービスに対して支払う報酬。この噺では女性が巧妙な計算で手数料を取る設定になっている。

チン
犬の種類の一つ。狆(ちん)。江戸時代には大奥や裕福な家庭で飼われる愛玩犬として人気があった。


よくある質問(FAQ)

Q: なぜ女性は手数料として2円を取れたのですか?
A: 5円を1円札5枚に替え、各人に2円ずつ渡した時点で残りは1円。女性は「自分から1円足して2円にする」と言い、その2円を手数料として受け取りました。結果的に女性は1円の利益を得ています。

Q: 二人の男は騙されたことに気づいたのですか?
A: 噺の中では明確に描かれていませんが、計算が苦手な二人は手数料を取られることに納得してしまったようです。後で冷静に考えれば騙されたと気づくはずですが、その場では気づかなかったという設定です。

Q: タイトルの「欲の熊鷹」の意味は?
A: 「欲深い者が痛い目に遭う」という意味を込めたタイトルです。拾った金を独り占めしようとせず半分ずつ分けようとした時点で既に欲深さが見えており、その欲が女性に利用されたという皮肉が込められています。

Q: なぜ二人は女性の家が妾宅だと勝手に決めつけたのですか?
A: 家の構えや女性の着物の着こなし、化粧の仕方から、二人は「ただ者ではない」と推測し、妾だと決めつけました。これは当時の庶民の想像力と偏見を表現した場面です。

Q: この噺の教訓は何ですか?
A: 人の善意を無条件に信じてはいけないという教訓と、計算能力の大切さを示しています。また、拾った金を分けようとする欲深さ自体が、騙される原因になったとも解釈できます。


名演者による口演

三代目 桂米朝
上方落語の大御所として「欲の熊鷹」を得意演目とした。女性の巧妙な話術と二人の男の間抜けさを対照的に演じ分けた。

六代目 笑福亭松鶴
二人の男が女性の家について勝手な想像を膨らませる場面を面白おかしく演じ、大阪らしいテンポで聴衆を笑わせた。

桂枝雀
独特の間と表情で女性の計算高さを演じ、オチの「手数料に頂戴いたします」の決め台詞を絶妙なタイミングで落とした。


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この噺の魅力と現代への示唆

「欲の熊鷹」の魅力は、一見親切に見える行為の裏に計算高い意図が隠されている点にあります。女性は両替という善意の行為を装いながら、巧妙な計算で1円の利益を得ています。これは現代でも、「無料」や「お得」を謳う商法に通じるものがあります。

また、二人の男が女性の家について勝手な想像を膨らませる場面は、人間の先入観や偏見を風刺しています。犬の名前を「タマ」と決めつけたり、女中の名前を「お竹」と推測したりする姿は滑稽ですが、現代でも初対面の人を外見で判断してしまうことはよくあります。

計算が苦手な二人が騙されてしまう展開は、金融リテラシーの重要性を教えてくれます。複雑な計算を提示されて納得してしまう姿は、現代の詐欺被害にも通じる教訓です。

実際の高座では、女性の「手数料に頂戴いたします」の決め台詞と、二人の男の呆然とした反応の対比が見どころです。落語会で「欲の熊鷹」がかかった際には、演者がどのように女性の計算高さを演じるかに注目してみてください。

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