屋台魚屋
魚屋が屋台を始めるというのは、一見理にかなっているようですが、
そこは落語の世界、一筋縄ではいきません。
新鮮さが仇となる、珍しい商売の話でございます。
新鮮すぎて困る屋台
あらすじ
魚屋の源七が、夜は屋台を引いて商売することにした。
源七:「昼は魚屋、夜は屋台。これで売り上げ倍増だ」
友人:「いい考えだな。何を出すんだ」
源七:「そりゃあ、新鮮な魚に決まってる」
友人:「屋台で刺身か」
源七:「いや、もっと新鮮だ。客の目の前でさばく」
友人:「それは…どうかな」
—
初日の夜、源七は威勢よく屋台を引いて出た。
源七:「へい、らっしゃい!新鮮な魚はいかが」
客 A:「お、魚か。一杯やりながら食うか」
源七:「今日はいいカツオが入ってます」
客 A:「じゃあ、それを」
源七は水槽からピチピチ跳ねるカツオを取り出した。
源七:「ほら、この通り新鮮!」
客 A:「う、動いてる…」
—
源七は手際よくカツオをさばき始めた。
客 A:「ちょ、ちょっと」
源七:「なんです」
客 A:「さっきまで泳いでたやつを、目の前で…」
源七:「新鮮な証拠ですよ」
客 A:「いや、なんか食欲が…」
源七:「大丈夫、美味いですから」
しかし客は青い顔をして席を立った。
—
次の客も同じような反応だった。
客 B:「タコをもらおうか」
源七:「へい!」
源七は生きたタコを取り出し、その場で調理を始めた。
タコの足がまだ動いている。
客 B:「うわっ、動いてる」
源七:「新鮮な証拠です」
客 B:「いや、これは…ちょっと…」
客 B も逃げるように去っていった。
—
そこへ酔っ払いの熊公がやってきた。
熊:「おう源七、景気はどうだ」
源七:「それが、みんな新鮮すぎて逃げちまう」
熊:「何言ってんだ。新鮮なのはいいことだろ」
源七:「じゃあ、あんた食ってみな」
熊:「おう、なんでも来い」
源七がイワシをさばいていると、一匹がぴょんと跳ねた。
—
熊:「うおっ!魚が生き返った!」
源七:「違う、まだ新鮮なだけだ」
熊:「いや、確かに死んでたのが生き返った!奇跡だ!」
熊は大声で騒ぎ始めた。
熊:「みんな来てくれ!源七の魚が生き返ったぞ!」
通行人:「なんだって?」
熊:「死んだ魚が生き返る屋台だ!」
—
あっという間に人だかりができた。
通行人 A:「本当に生き返るのか」
通行人 B:「それは見ものだ」
源七:「違う違う、ただ新鮮なだけで」
熊:「謙遜するな!これは奇跡の屋台だ」
通行人 C:「生き返り魚屋か」
翌日から源七の屋台は「魚が生き返る屋台」として大評判に。
源七:「新鮮なのを売りにしたかったのに、なんで心霊スポットになってんだ!」
まとめ
新鮮さを追求しすぎた結果、オカルト屋台として有名になってしまう。
客は魚を食べに来るのではなく、「生き返り」を見に来るようになり、商売あがったり。
時には程々が一番という教訓でございますな。


