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【古典落語】付き馬 あらすじ・オチ・解説 | 吉原の取り立て屋が詐欺師に騙され、棺桶を背負って逆付き馬される皮肉な復讐劇

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話芸の殿堂-古典落語-付き馬
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付き馬

3行でわかるあらすじ

吉原で無銭飲食の取り立てをする若い衆が、金がない男に騙されて一緒に酒や料理でどんちゃん騒ぎしてしまう。
男は若い衆を連れ回し、早桶屋(棺桶屋)で「兄貴が急死した」と嘘をついて『図抜け大一番小判型』の特殊な棺桶を作らせる。
男が逃げた後、棺桶の代金を請求された若い衆は、「棺桶なんか背負って大門くぐれません」と渋るも逆に付き馬される。

10行でわかるあらすじとオチ

吉原の若い衆が、金がないと言う男を引き留めると、「今日は金が無いが明日の朝手紙を書く」と言って見世に上がる。
男はたんと料理、酒、芸者を頼んでどんちゃん騒ぎし、翌朝の勘定では印鑑を忘れたと言って若い衆と一緒に出かける。
男は若い衆に金を払わせて風呂に入り、湯豆腐屋で飲み食いし、花屋敷から浅草観音、仙見世まで連れ回す。
最終的に田原町の早桶屋に着いて、男は「ここで叔父さんが早桶屋をやっているから勘定を払ってもらい、帯もお礼にあげる」と言う。
男は若い衆を外で待たせ、店の中で大きな声で「おじさん、お願いがあってまいりました」と言ってから、急に小声で「外で待っている若い男の兄貴が急死した」と嘘をつく。
早桶屋は「図抜け大一番小判型」の棺桶を作ることを面白がって引き受け、男は「できるから安心しろ」と若い衆に言わせてから逃げてしまう。
残された若い衆は早桶屋に「兄貴をなくして気の毒だ」となぐさめられ、棺桶を「財布の中に入れて持って行く」ととんちんかんな答えをしてしまう。
早桶屋は「預金代5円を置いて持って行け」と言うが、若い衆は「もう一文なしだ」。
すると早桶屋は「銀がねえ、じゃあ、仕方がねえ、小僧、なか(吉原)まで付き馬に行け」と最後のオチ。

解説

「付き馬」は、吉原で無銭飲食の取り立てをする若い衆(し)の立場が逆転する皆皮な人情劇です。
詐欺師の男は、若い衆を連れ回しながら次々に支払いをせたさせ、最終的に早桶屋で「兄貴が急死した」という嘘をついて特殊な棺桶「図抜け大一番小判型」を注文します。

この棺桶名は落語特有の称球・相撲用語を模した言葉遊びで、聞き手にインパクトを与えます。
男が逃げた後、残された若い衆は棺桶の代金を求められ、「棺桶なんか背負って大門くぐれやしません」と渋るも、結局自分が「付き馬」されてしまう皆皮なオチが絶妙です。

この作品は、江戸の市井の人たちの生活や、吉原という特殊な社会の仕組みを背景に、人間の欲望や騙し、そして因果応報をユーモラスに描いた傑作で、現代でも通じる人間の本性を描いた不滅の魅力を持つ演目です。

あらすじ

吉原で遊んで無銭飲食した者や、勘定が足りない者には若い衆(し)がその家までついて行って勘定を取り立てました。
これを付き馬といいます。

見世の前で客を引いていた若い衆が男を呼び止める。
男は多町で金貸しをしているおばさんの代わりに、貸した金を取りに回っている最中で、冷やかしているだけで見世には上がれないと言う。

若い衆なおも引き留めると、男は今日は金が無いが一晩遊ばせてくれたら、明日の朝、金を貸してある仲の町のお茶屋へ手紙を書く。
それを持って貸した金を取ってきてもらえば、それで勘定を払うからといい見世へ上がる。
ふんだんに料理、酒を頼み芸者もあげてどんちゃん騒ぎとなった。

翌朝、勘定の段になると手紙を書くはずだったが印鑑を忘れたので、相手も信用しないだろうから、若い衆に一緒に行ってくれという。
茶屋の前まで来ると、表のほうをちょっとぶらついてから入ろうといって大門から出てしまう。

若い衆に金を払わせて風呂に入り、湯豆腐屋で飲み食いして、後でまとめて払うから立替えてくれと図々しいが、若い衆は男の言うことを聞いてついて行くしかない。

花屋敷から浅草観音、仲見世、雷門から電車通りまで出て、ついに田原町まで来てしまった。
男はここで叔父さんが早桶屋をやっているから勘定を払ってもらい、預けてある帯もお礼にあげると言い出した。

男は若い衆を外へ待たせて、「こんにちは、おじさん」と大きな声で早桶屋に入る。
外の若い衆に聞こえるように、「おじさん、お願いがあってまいりました」、急に小声になり、外で待っている若い男の兄貴が昨晩、急な腫れの病で死んだので、「図抜け大一番小判型」の棺桶をすぐにこしらえてくれと頼む。

早桶屋は職人が「図抜け大一番小判型」を作るのを面白がっているので引き受ける。
男は早桶屋に、「大丈夫だ、俺が引き受けた、できるから安心しろ」と若い衆に言うように頼み、若い衆を店の中に入れる。

早桶屋から、「できるから安心しろ」といわれ、ほっとしている若い衆を置いて、男はまた近いうちに店に寄るからと言い残し、とんずらしてしまう。

残った若い衆に早桶屋は兄貴をなくして気の毒だなどとなぐさめの言葉なんかをかけるが、どうも話がかみ合わない。
早桶屋は、棺桶ができたらどうやって持って帰るのかと聞くと、財布の中に入れて持って行くと頓珍漢な答えだ。
早桶屋は兄貴が急に死んで気が動転しているのだと可哀想がっている。
できあがった棺桶を前に、

若い衆 「どうも、これはご立派で、どなたのあつらえで」 

早桶屋 「なに寝とぼけてんだ、おまえさんのあつらえでこしらえたんだ・・・」、などと言っているうちに、お互いにさっきの男にだまされたことに気がつく。

早桶屋 「この勘定はどうするんだ」 

若い衆 「なんとか、ひとつご勘弁を」

早桶屋 「馬鹿言うな、並の棺桶なら次に回せるが、こんな図抜け大一番小判型のフロの化け物のようなのはどうしようもできなやしねえ。手間代は負けてやるから木口代5円を置いて持って行け」

若い衆 「早桶なんか背負って大門くぐれやしません・・・」、早桶屋は、店の者に早桶を若い衆の背中に背負わせてしまう。

早桶屋 「さあ、背負ったら5円置いて帰んな」

若い衆 「わたしは、もう一文なしだ」

早桶屋 「なに、銭がねえ、じゃあ、仕方がねえ、小僧、なか(吉原)まで付き馬に行け」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 付き馬(つきうま) – 吉原で無銭飲食した客や勘定が足りない客の家まで付いて行き、代金を取り立てる役目。若い衆(わかいし)が担当していました。
  • 若い衆(わかいし) – 吉原の見世(妓楼)で働く男性従業員。客引きや取り立て、雑用などを担当していました。
  • 大門(おおもん) – 吉原遊廓の正門。ここを通らないと吉原には入れず、出ることもできませんでした。
  • 仲の町(なかのちょう) – 吉原のメインストリート。大門から続く中央の大通りで、両側に見世が並んでいました。
  • 早桶屋(はやおけや) – 棺桶を作る職人・店。早桶は急死した人用の簡易な棺桶で、普通の棺桶より早く作れるためこの名がつきました。
  • 図抜け大一番小判型(ずぬけだいいちばんこばんがた) – 落語特有の誇張表現。相撲の番付を模した言葉遊びで、とてつもなく大きな特殊な棺桶を指します。
  • 見世(みせ) – 吉原の遊女屋、妓楼のこと。格式により大見世、中見世、小見世などに分かれていました。
  • 花屋敷 – 浅草にあった遊園地。江戸時代から続く庶民の娯楽施設でした。
  • 田原町(たわらまち) – 現在の台東区寿付近。江戸時代は職人町として知られていました。

よくある質問(FAQ)

Q: 付き馬は実際にあった制度ですか?
A: はい、江戸時代の吉原には実際に存在した制度です。無銭飲食を防ぐための取り立てシステムで、若い衆が客の家まで付いて行き、代金を回収していました。

Q: なぜ棺桶屋で騙すという設定なのですか?
A: 棺桶は縁起が悪いため、普通の人は関わりたがらないという心理を利用しています。また、「兄貴が急死した」という嘘で同情を誘い、若い衆を混乱させる巧妙な手口として描かれています。

Q: 「図抜け大一番小判型」とは何ですか?
A: 落語特有の誇張表現で、相撲の番付(大関、関脇など)を模した言葉遊びです。「とてつもなく大きく特殊な」という意味を面白おかしく表現しています。

Q: 最後のオチ「付き馬に行け」の皮肉な点は?
A: 取り立てをする側だった若い衆が、逆に棺桶の代金を取り立てられる立場になってしまうという立場の逆転が皮肉であり、落語らしい「因果応報」を表現しています。

Q: この噺は江戸落語ですか、上方落語ですか?
A: 「付き馬」は江戸落語の演目です。吉原という江戸特有の遊廓を舞台にしており、江戸の風俗や言葉遣いで語られます。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の名人。飄々とした語り口で、詐欺師の狡猾さと若い衆の間抜けさを絶妙に演じ分けました。
  • 立川談志(七代目) – 現代的な解釈を加えながら、テンポの良い語り口で若い世代にも人気がありました。
  • 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。品格ある語り口で、下世話な題材を上品に仕上げる名手でした。
  • 春風亭一朝 – この噺の名手として知られ、江戸前の粋な語り口で演じました。

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この噺の魅力と現代への示唆

「付き馬」のオチは、取り立てる側が取り立てられる側になるという見事な立場の逆転劇です。

現代でも、債権回収業者が逆に詐欺に遭うケースや、監視する側が監視される側になるといった皮肉な状況は起こり得ます。この噺は、どんな立場の人間も油断すれば騙されるという普遍的な教訓を、笑いに包んで伝えています。

詐欺師の男の手口も実に巧妙です。最初は金がないと言いながら、若い衆の同情を誘い、徐々に立場を逆転させていきます。「兄貴が急死した」という嘘で棺桶屋を巻き込むあたりは、現代の振り込め詐欺にも通じる心理操作の妙があります。

実際の高座では、詐欺師のずる賢さ、若い衆の間抜けさ、早桶屋の職人気質など、それぞれのキャラクターの演じ分けが見どころです。特に最後の「小僧、なか(吉原)まで付き馬に行け」というオチの決め方は、演者によって様々な工夫があり、それぞれの個性が光ります。

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