つぼ算
3行でわかるあらすじ
徳さんが友達と瀬戸物屋に二荷入りの壺を買いに行く。
一荷入りを買って引き取らせる巧妙な算術トリックを使う。
番頭は混乱し、結局二荷入りを安く譲ってしまう。
10行でわかるあらすじとオチ
友達の水壺が割れたので、徳さんと二荷入りの壺を買いに行く。
瀬戸物屋で徳さんが一荷入りの壺を3円で購入する。
友達が二荷入りが必要だと思い出し、店に戻る。
二荷入りは一荷入りの倍の7円だが、徳さんは6円だと主張。
さらに今買った一荷入りを3円で引き取らせようと提案。
3円の現金と3円の壺で合計6円だから二荷入りが買えると説得。
番頭は混乱しながらもそろばんで計算すると確かに6円。
大きなそろばんでも同じ結果で番頭はお手上げ状態。
仕方なく二荷入りの壺を渡すことになる。
徳さんは「こっちの思うつぼや」と言って去る。
解説
「つぼ算」は算術を使った詐欺的な取引を描いた知恵比べの落語です。
徳さんの巧妙な論理のすり替えが見どころで、一見正しそうに聞こえる計算で番頭を混乱させます。
実際には一荷入りの壺3円+二荷入りとの差額4円=7円が正しい計算ですが、徳さんは引き取り価格を利用して6円で済ませる論理を展開します。
オチの「こっちの思うつぼや」は、「壺」と「思惑通り」を意味する「つぼ」を掛けた絶妙な言葉遊びで、徳さんの策略が成功したことを表現しています。
あらすじ
徳さんの家に友達が来る。
一荷入りの水壺が割れてしまったので、一緒に二荷入りの水壺を買いに行って欲しいという。
友達の女房が、あんたは買い物が下手だが、徳さんは腹黒いので買い物がうまいからおだてて付いて行ってもらえといったという。
仕方なく徳さんは友達と瀬戸物町に水壺を買いに出かける。
瀬戸物屋の店に来ると徳さんは一荷入りの水壺の値段を聞き始める。
徳さん 「この壺何ぼにしといてくれる?」
番頭 「へえ、軒並みずう~っと同商売でございます。朝商いのこってございますし、精々勉強いたしまして、お安うおまけいたしまして3円50銭が一文もまかりまへんので、へい、へっへっへえ」
徳さん 「ほな、軒並みずう~っと同商売やのうて、朝商いでものうて、勉強も安くもせんと、まけなんだらいくらだ」、するとやっぱり3円50銭という答えだ。
なんとか3円にまけさせ、二人で天秤棒でかついで帰りはじめる。
友達が二荷入りの壺を買うことを思い出し騒ぎ出す。
徳さんはこの壺がじきに二荷入りの壺になるのだといい、途中まで行ってまた店に戻る。
買いたかったのは二荷入りの壺で、いくらだと聞くと番頭は一荷入りの倍の値段だという。
徳さんはそれなら6円でいいだろうという。
番頭は6円だと1円もまけてしまうことになるので困るという。
徳さんはうまいことをいって6円で話をつけ勘定の支払いとなる。
徳さんは今買った一荷入りの壺をいくらで引取ってくれるかと聞く。
番頭は元値の3円で引取るという。
すると、徳さんはさっき渡した3円とこの壺の引取り代の3円で合計6円で、二荷入りの壺を持っていってもいいだろうとたたみかける。
なんだか狐につままれたようで腑に落ちない番頭もそういう勘定になりますというので、二荷入りの壺を運び出す。
すると、勘定のおかしいことに気がついた番頭が追ってきて、勘定についてのやりとりが始まる。
ややこしい勘定に番頭は徳さんにいわれてそろばんを入れる。
何度やっても6円だ。
番頭さんは店の者に大きなそろばんを持ってこさせはじくがやっぱり6円となる。
いらついて今にも泣き出しそうな番頭さん、いくらやっても銭の3円と壺の3円で6円となり、ついに
番頭 「ええ-、もうけっこうです。この壺持って帰っておくれなはれ。」
徳さん 「ははっ こっちの思うつぼや」
落語用語解説
- 一荷入り – 天秤棒の片側で運べる分量の水が入る壺。約18リットル程度。
- 二荷入り – 一荷の倍の容量の壺。両側で運ぶ一荷分の倍。
- 瀬戸物町 – 陶器や瀬戸物を売る店が並ぶ町筋。大阪では本町あたりに集まっていた。
- 朝商い – 朝一番の商売。縁起を担いで値引きすることが多かった。
- 軒並み – 隣り合う店々。同業者が並んでいるので値段を競り合う意味も。
- 思うつぼ – 計画通りになること。「壺」と「思惑」を掛けた言葉遊び。
よくある質問(FAQ)
Q: 徳さんのトリックはなぜ成立したのですか?
A: 一荷入りの壺3円を「引き取ってもらう」ことで、その3円を二荷入りの代金に含めるという論理のすり替えです。実際は一荷入りの3円+差額4円=7円が正しい計算です。
Q: 番頭はなぜそろばんで計算しても騙されたのですか?
A: 徳さんが「3円の現金+3円の壺=6円」という誤った前提を設定したため、その前提でそろばんを弾けば6円になります。前提自体が間違っていることに気づけなかったのです。
Q: オチの「思うつぼ」の意味は?
A: 「壺」を買う話と、「思惑通り」を意味する「つぼ」を掛けた言葉遊びです。徳さんの策略が完全に成功したことを、壺の話で締めくくっています。
名演者による口演
- 桂米朝(三代目) – 人間国宝。算術のやりとりを丁寧に説明しながら笑いを取りました。
- 桂枝雀(二代目) – 爆笑王。番頭の混乱ぶりを大げさに演じて爆笑を誘いました。
- 笑福亭松鶴(六代目) – 上方落語の重鎮。徳さんの腹黒さを巧みに演じました。
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この噺の魅力と現代への示唆
「つぼ算」は、巧妙な論理のすり替えで相手を騙す知恵比べの傑作です。徳さんの算術トリックは一見正しそうに聞こえますが、実は「引き取り価格」を二重にカウントするという詐欺的な論理構造になっています。
番頭がそろばんで計算しても騙される場面は、前提条件が間違っていれば正確な計算も意味をなさないという教訓を示しています。現代でも、統計やデータの前提を操作して誤った結論を導く手法は詐欺師の常套手段です。
最後の「こっちの思うつぼや」というオチは、「壺」の話と「思惑通り」という意味を重ね合わせた絶妙な言葉遊びで、徳さんの策略成功を見事に締めくくっています。


