時そば
3行でわかるあらすじ
夜鷹そばを褒めちぎった男が、代金16文を数える途中で「今何刻?」と聞き、「九つ」の返事を利用して1文ごまかす。
それを見ていた別の男が翌晩真似をしようとするが、まずい蕎麦に文句を言いながら同じように時刻を聞く。
「四つ」と言われて「五つ六つ七つ八つ…」と数えてしまい、逆に多く払ってしまう。
10行でわかるあらすじとオチ
夜鷹そばの屋台を呼び止めた男が、そば屋と商売の話をしながらしっぽくそばを注文する。
男は看板の「当たり矢」から始まり、出来の早さ、箸、丼、汁、そばの細さなど全てを褒めちぎる。
勘定の16文を払う際、「一つ二つ三つ…八つ」まで数えて「今何刻?」と聞く。
そば屋が「九つで」と答えると、「十、十一、十二…」と続けて15文だけ払って立ち去る。
これを見ていた別の男が、1文ごまかしたことに気づき、翌晩同じことをしようと企む。
男は夜鷹そばを呼び止めるが、そばは不味く、箸は汚く、丼は欠けていて文句ばかり。
それでも勘定の時に同じように「一つ二つ三つ…八つ」まで数えて「今何刻?」と聞く。
そば屋が「四つで」と答える。
男は「五つ六つ七つ八つ…」と数え始めてしまう。
結局8文払った後にまた8文払うことになり、16文きっちり払って1文も得しなかった。
解説
「時そば」は古典落語の代表作で、江戸時代の時刻制度を巧みに利用した知恵比べを描いた滑稽噺です。上方では「時うどん」として演じられることもあります。
江戸時代の時刻は、現在の2時間を1刻(いっとき)として、明け六つ、朝五つ、昼四つ、昼九つ(正午)、昼八つ、夕七つ、暮六つ、宵五つ、夜四つ、夜九つ(真夜中)、夜八つ、暁七つという順番で、数字が不規則に並んでいました。この噺では「九つ」と「四つ」の違いが肝となります。
最初の男の褒め言葉は単なるお世辞ではなく、そば屋を油断させる心理作戦です。「商売は飽きない(商い)」という言葉遊びから始まり、看板の矢が「当たり矢」で縁起がいいなど、江戸っ子らしい洒落た会話が続きます。
一方、真似をした男は褒めることができず、「はずれ矢」「まずい」「汚い」と文句ばかり。さらに時刻が「四つ」だったことが命取りになります。「四つ」の次は「五つ」なので、結果的に正直に16文払うことになってしまいます。
この噺の見どころは、単純な詐欺行為ではなく、褒め上手と話術、そして時刻の知識を組み合わせた知恵比べにあります。また、安易に人の真似をすると失敗するという教訓も含まれています。
夜鷹そば(二八そば)は、江戸時代の夜間に屋台で売られていた安価なそばで、一杯16文(2×8=16)だったことから二八そばと呼ばれました。庶民の日常を舞台にした、江戸の風俗が色濃く残る名作です。
あらすじ
「夜鷹そば」の二八そば屋を呼び止めた男、「寒いねぇ、何が出来る」。
そば屋の「花巻にしっぽく」に、しっぽくを頼む。「商売は商い(あきない)と言うから飽きずにやらにゃだめだ」に始まり、行灯(あんどん)が的に「当たり矢」で縁起がいい、出来の早さ、割りばし、綺麗な丼(どんぶり)、鰹節のダシの汁(つゆ)、そばの細さ、コシの良さ、厚く切った竹輪を褒め倒しながらそばをたぐって、さあ勘定となる。
そば屋の「十六文で」に、「銭は細かいよ、手を出せ」と、「一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ、」と銭を二八そば屋の手の平に乗せ、「今、何刻(なんどき)でぇ?」と聞いた。「九つで」に「十、十一、十二・・・」と払って、さぁーと行ってしまった。
これを一部始終ぼぉーっと見ていた男、よく喋って食い逃げでもするかと思いきや勘定までちゃんと払って拍子抜けだ。
それにしても勘定の途中の妙な所で時を聞いたのに気づき、何度も指を折ってやっと納得、一文かすめ取ったことが分かった。
うまいことやりやがった自分もやって見ようと翌晩、二八そば屋を捕まえる。「寒いねぇ」に「今夜はだいぶ暖かで」で、出鼻をくじかれる。
看板の的の「はずれ矢」から始まり、遅いしぬるいし、使い回しの黒ずんで先が濡れた箸、縁の欠けたきたない丼、しょっぱい汁、うどん顔負けの太いそば、丼に張り付いている薄い竹輪麩ではなく本物の麩。
とても食べ切れる代物ではない。
でも今夜の目的はそばではない。
そばは食べかけのまま男は勘定に取り掛かった。
そば屋の「へい、十六文で」に、
男 「小銭は間違えるといけねえ。手を出しねえ、それ、一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ、
今、何刻でぇ?」
そば屋 「四ツで」
男 「五つ六つ七つ八つ・・・・」
落語用語解説
- 夜鷹そば – 江戸時代に夜間、屋台で売られていた安価なそば。一杯16文だった。
- 二八そば – 2×8=16文の値段から名付けられた。また、そば粉8割・小麦粉2割の配合という説も。
- 九つ – 江戸時代の時刻で深夜0時頃。時の鐘が9回鳴った。
- 四つ – 江戸時代の時刻で夜の10時頃。時の鐘が4回鳴った。
- しっぽく – かまぼこ、椎茸、三つ葉などを載せた温かいそば。
- 花巻 – 海苔を載せただけのシンプルなそば。
よくある質問(FAQ)
Q: なぜ「九つ」で1文ごまかせたのですか?
A: 8まで数えて「今何刻?」と聞き、「九つ」と答えさせることで、そのまま「十、十一…」と続けて15文で済ませました。本来16文のところ1文得しています。
Q: なぜ「四つ」では失敗したのですか?
A: 8まで数えて「四つ」と言われると、次は「五つ」から数え始めることになり、結局8文払った後にさらに8文払うことになりました。
Q: 江戸時代の時刻制度はどうなっていたのですか?
A: 明け六つから暁七つまで不規則に数字が並び、九→八→七→六→五→四→九…と巡りました。現在の時間とは異なる仕組みでした。
名演者による口演
- 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の名人。褒め言葉のリズムと間合いが秀逸でした。
- 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。そばをすする仕草が見事で「時そば」の定番となりました。
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。後半の男のドジぶりを巧みに演じました。
関連する落語演目
同じく「食べ物・蕎麦」がテーマの古典落語


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真似して失敗する古典落語


この噺の魅力と現代への示唆
「時そば」は、江戸時代の時刻制度と庶民文化を巧みに利用した古典落語の代表作です。最初の男の褒め言葉は単なるお世辞ではなく、そば屋を油断させる心理作戦でもあります。
一方、真似をした男は褒めることができず文句ばかり。さらに時刻の違いに気づかないまま失敗します。安易に人の真似をすると失敗するという教訓と、知恵と話術の大切さを教えてくれる名作です。
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古典落語「時そば」は、誰もが知る超有名演目です。Amazonオーディブルでは、五代目柳家小さん版をはじめ複数の「時そば」が配信されています。
「今何刻だい?」の間の取り方や、蕎麦をすする仕草の表現は演者の腕の見せどころ。ぜひお楽しみください。
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