テレテレテレ
3行でわかるあらすじ
薬種店の若旦那徳次郎が嫁探しで谷中墓地へ行き、墓参りしている美女を見染める。
幇間の一八が山井養仙医師の娘だと聞き結婚を申し込みに行くが、出てきたのは「テレテレテレ」としか言えない不器量娘。
逃げ出した一八たちに怒った医者が薬の匙を投げ、「医者が匙を投げて寺へ参りました」と言葉遊びオチ。
10行でわかるあらすじとオチ
本町の薬種店の若旦那徳次郎が何十回も見合いをしても気に入った嫁が見つからない。
父親の勧めで小僧の定吉を連れて嫁探しに出かけ、花川戸で幇間の一八に出会う。
一八は「盛り場の女は浮気者、墓参りに来る先祖思いの女が嫁に向いている」と谷中墓地へ連れて行く。
若旦那は墓石の前で花を手向け長い間手を合わせる若い女を見染める。
天王寺の門番から三味線堀の医者山井養仙の娘と聞き、一八が結婚の申し込みに行く。
養仙は最初は取り合わなかったが、一八が粘るので娘を呼ぶ。
出てきたのは不器量不細工で「テレテレテレ」としか言えない娘だった。
一八が「もう一人のお嬢さん」と言うと、養仙は「娘は一人しかおらん」と怒り出す。
養仙は門番にからかわれたと気づき、薬の匙を一八に投げつける。
オチ:一八が「医者が匙を投げて寺へ参りました」と、「匙を投げる」(諾める)の二重の意味でオチ。
解説
「テレテレテレ」は、見かけと実際のギャップを扱った古典落語の名作です。
タイトルの「テレテレテレ」は、娘が具体的な言葉を話せずに発する意味不明な音を表しています。
幇間の一八が「墓参りに来る先祖思いの女が嫁に向いている」という理屈は、江戸時代の嫁選びの価値観を反映しています。
しかし墓地で見かけた美女は実際には別人で、天王寺の門番が一八たちをからかったことが判明します。
最後のオチは、医者が「匙を投げる」(諾める、手の施しようがない)という慣用句と、実際に薬の匙を投げつけたことをかけた言葉遊びで、「寺へ参りました」は「死んだ」という意味の洒脱な表現です。
あらすじ
本町の薬種店の若旦那の徳次郎、何十回と見合いをしているが、気に入った嫁が見つからない。
女嫌いでもなく、意中の人でもいるのかと聞いてもそれないようだ。
父親の大旦那は上野、浅草、向島などを歩いてどんな女性がいいのか、嫁にしたいか見て来いと勧める。
小僧の定吉を連れて出掛けた徳次郎はキョロキョロと若い女の顔を見ながら歩いている途中、花川戸あたりで幇間の一八に出会う。
事情を話すと一八は女を見る目なら自信あり、おまかせと、くっついて来た。
一八が言うには盛り場を歩いている女は浮気者、金使いの荒い者が多いから、墓参りに来る先祖思い、親思いの心がけのよい女の方が嫁には向いていると言って、方向転換して谷中の墓地へ行く。
墓地の中をぐるぐると廻った若旦那は、ある墓石の前で花を手向け、長い間、手を合わせている若い女が気に入ってしまう。
一八が天王寺の門番に聞くと、三味線堀の医者の山井養仙の娘だという。
一八はここが忠義の見せどころと、徳次郎を上野山下の茶店で待たせ、定吉と山井養仙の家に行って嫁取りの談判だ。
一八 「・・・どうかお嬢さんを若旦那のお嫁さんにしてください」
養仙 「お前、わしをからかいに来たな。ふざけたこと言わずにすぐ帰れ」と、取り合わないが、
一八 「ふざけてなんていらゃあしませんよ。若旦那がお嬢さんを見染めたんですから・・・」と、粘るので、
養仙 「そうか、相分かった。だが一度決めたからには決して変更はしないから、しかと心得よ」と、念押しして娘を呼んだ。
なんと出て来たのは不器量、不細工、遠山政談のお染さん顔負けの娘で、口もよくきけないようで、何を言ても、「テレテレテレ」にしか聞こえない。
びっくりして、
一八 「このお嬢さんではないんで。もう一人のお嬢さんのほうで・・・」
養仙 「馬鹿なこと言うな。娘は一人しかおらん」
一八 「天王寺の門番がたしかにここの娘さんと言いやしたんで・・・」
養仙 「お前たち、その門番にからかわれおったな。不埒な門番だ、勘弁ならん!こらしめてやるから一緒について来い!」と、えらい剣幕でそばにあった薬の匙(さじ)を一八に投げつけた。
一八と定吉はあわてて逃げ出して茶店に駆けつける。
徳次郎に顛末を話し、
定吉 「医者が後から追いかけて来ますから、若旦那はどこかに隠れてください」
一八 「なに、もう大丈夫でげすよ」
徳次郎 「どうして大丈夫なんだ?」
一八 「医者が匙を投げて寺へ参りました」
落語用語解説
- 匙を投げる – 医者が治療を諦めることから転じて、諦める・手の施しようがないという意味の慣用句。
- 幇間(ほうかん) – 太鼓持ちとも呼ばれる、宴席で客を楽しませる職業の男性。
- 谷中墓地 – 東京都台東区にある広大な墓地。江戸時代から多くの寺院が集まっていた。
- 寺へ参りました – 死んだという意味の婉曲表現。墓参りに行く=死者の仲間入りという洒落。
- 薬種店 – 薬の材料を扱う店。江戸時代は漢方薬の材料を売っていた。
- 三味線堀 – 現在の東京都台東区にあった堀の名前。周辺は医者が多く住んでいた。
よくある質問(FAQ)
Q: なぜ門番は嘘をついたのですか?
A: 一八たちが「美女の父親は誰か」と聞いたのを、門番がいたずら心で養仙の娘と答えたと思われます。門番にとっては軽い冗談だったのでしょう。
Q: 「テレテレテレ」とは何ですか?
A: 娘が言葉をうまく話せない様子を表す擬音語です。具体的な意味はなく、不明瞭な発声を表現しています。
Q: オチの「医者が匙を投げて寺へ参りました」の意味は?
A: 「匙を投げる」という慣用句(諦める)と、実際に匙を投げられたこと、そして「寺へ参る」(死ぬ)という三重の言葉遊びになっています。
名演者による口演
- 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の名人。一八のおっちょこちょいぶりを軽妙に演じました。
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。養仙の怒りと娘の異様さの対比が見事でした。
- 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。オチの言葉遊びの間合いが絶品でした。
関連する落語演目
同じく「嫁探し・縁談」がテーマの古典落語


同じく「医者」が登場する古典落語


勘違い・思い込みがテーマの古典落語


この噺の魅力と現代への示唆
「テレテレテレ」は、見かけと実際のギャップを描いた古典落語です。墓参りに来る女性は先祖思いで嫁に向いているという一八の理屈は、江戸時代の価値観を反映していますが、その判断が大きく裏切られる展開が笑いを誘います。
「匙を投げる」という言葉遊びは、医者という職業と慣用句を見事に結びつけたオチです。見かけだけで人を判断することの危うさと、安易な助言を鵜呑みにする愚かさを風刺した一席です。


