狸の釜
3行でわかるあらすじ
前回鯉に化けて失敗した子狸が再び八五郎を訪れ、今度は茶釜に化けて寺の和尚に売り込む。
和尚は10円で買うと言うが火にかけて試すと言い出し、八五郎は5円だけもらって子狸を置き去りにして逃亡。
火責めに耐えられない子狸が正体を現して逃げ出し、小坊主が「包んだ風呂敷が八畳でした」とオチをつける。
10行でわかるあらすじとオチ
前作で鯉に化けて鯉こくにされそうになった子狸が、再び八五郎の家にやって来る。
懲りずにまた化けてくれると言うので、八五郎は寺の和尚が茶釜を欲しがっていたことを思い出す。
子狸はお安い御用とトンボを切って立派な茶釜に化け、八五郎は大きな風呂敷に包んで寺へ持参。
茶釜を見てすっかり気に入った和尚は10円で買うと言い、思わぬ高値に八五郎は大喜びする。
しかし和尚が火にかけて試してみると言い出し、八五郎は慌てて半金の5円だけもらって子狸を置き去りにして逃亡。
和尚が小坊主に茶釜を火にかけさせると、子狸は熱さに耐えられず灰神楽を上げて飛び出していく。
小坊主が追いかけて行くと正体は狸だったと報告する。
和尚は「それで半金で騙られたか」と悔しがる。
すると小坊主が「包んだ風呂敷が八畳でした」と報告する。
「半金で騙る(かたる)」と「風呂敷が八畳(はちじょう・はちじょー)」を掛けた言葉遊びでオチとなる。
解説
狸の釜は、狸の化けダヌキ話と詐欺をテーマにした古典落語で、前作「狸の鯉」の続編として親しまれている。
子狸が茶釜に化ける設定は、分福茶釜の民話を背景にした日本らしい発想で、聴衆に親しみやすい内容となっている。
八五郎が子狸を見捨てて逃げるという行動は前作と同様で、人間の身勝手さを一貫して描いている。
オチの「包んだ風呂敷が八畳でした」は、「半金で騙る(詐欺)」と「風呂敷が八畳(大きさ)」を掛けた秀逸な言葉遊び。
火責めという拷問的要素が子狸の正体暴露につながる構成は、因果応報の教訓も含んでいる。
この作品は動物の化け話、人間の欲深さ、そして最後の機転の利いた言葉遊びという多層的な面白さを持った名作である。
あらすじ
鯉(コイ)に化けてあわや鯉こくにされそうになって、「鯉の薪(滝)登り」で逃げ出した子狸がまた八五郎の家にやって来た。
懲りもせずまた化けてくれると言うので、八五郎は寺のお尚が茶釜が欲しいと言っていたのを思い出し、茶釜に化けてくれと頼む。
子狸はお安い御用と、トンボを切って立派な茶釜に化けた。
八五郎は茶釜を大きな風呂敷に包んで寺に持って行く。
茶釜を見てすっかり気に入ったお尚は十円で買うと言う。
思わぬ高値がつき八五郎は大喜びだが、お尚は火に掛けて試して見ると言う。
あわてた八五郎は半金でいいからと、五円もらって子狸を置き去りにして逃げ帰った。
お尚が小坊主に茶釜を火に掛けさせると、子狸はたまらず灰神楽を上げて飛び出して行った。
小坊主 「追い駆けて行ったら狸でございました」
お尚 「それで半金で騙(かた)られたか」
小坊主 「包んだ風呂敷が八畳でした」
落語用語解説
- 茶釜 – 茶の湯でお湯を沸かすための鉄製の釜。寺や茶人には必需品だった。
- 分福茶釜 – 狸が茶釜に化ける有名な民話。群馬県館林市の茂林寺に伝わる。
- トンボを切る – 宙返りをすること。狸が化ける際の定番の動作。
- 灰神楽(はいかぐら) – 灰が舞い上がる様子。火にかけられた茶釜から飛び出す描写。
- 風呂敷 – 物を包んで運ぶための布。大きさを畳で表すことがある。
- 八畳 – 畳8枚分の広さ。風呂敷の大きさを表すと同時に「騙る」との掛詞。
よくある質問(FAQ)
Q: 「風呂敷が八畳でした」というオチの意味は?
A: 「半金で騙る(かたる)」と「風呂敷が八畳(はちじょう)」の掛詞です。和尚が詐欺にあったことを、小坊主が風呂敷の大きさで答えるという機転の利いたオチになっています。
Q: なぜ八五郎は子狸を置き去りにしたのですか?
A: 和尚が茶釜を火にかけて試すと言い出したため、子狸が正体を現すのは時間の問題だと悟り、半金だけもらって逃げ出しました。人間の身勝手さを表現しています。
Q: この噺は「分福茶釜」と関係がありますか?
A: はい。狸が茶釜に化けるという設定は、群馬県の茂林寺に伝わる分福茶釜の民話を背景にしています。落語ではこれをコミカルにアレンジしています。
名演者による口演
- 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の名人。八五郎の身勝手さと子狸の可哀想さを絶妙に演じました。
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。和尚と小坊主のやり取りと最後のオチの間合いが見事でした。
- 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。子狸が火責めにあう場面の臨場感が絶品でした。
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この噺の魅力と現代への示唆
「狸の釜」は、子狸と八五郎の協力関係と、その裏切りを描いた古典落語の名作です。分福茶釜の民話を下敷きにしながら、人間の欲深さと身勝手さをコミカルに描いています。
八五郎が子狸を見捨てて逃げるという展開は、困った時だけ頼って都合が悪くなると切り捨てる人間関係の皮肉を表現しており、現代にも通じるテーマです。「風呂敷が八畳でした」という機転の利いたオチは、落語の言葉遊びの面白さを存分に味わえます。


