たがや
3行でわかるあらすじ
両国橋の花火見物で桶のたが屋が武士の笠を飛ばしてしまい、怒った武士が手打ちにすると言う。
開き直ったたが屋が武士の侍たちと激闘を繰り広げ、刀を奪って次々と侍を倒していく。
最後に武士の首を切ると群衆が花火の掛け声になぞらえて「たがやぁ~」と叫ぶ地口オチで幕となる。
10行でわかるあらすじとオチ
両国の川開きの花火見物で、両国橋の上は大変な人出で身動きが取れない状況。
花火が打ち上がるたびに「玉屋ぁ~」「鍵屋ぁ~」の掛け声が響く中、桶のたがを抱えたたが屋が通りかかる。
見物人に押されたはずみでたががはずれ、馬で通りかかった武士の笠を飛ばしてしまう。
たが屋は平謝りに謝るが、怒った武士は手打ちにすると言って許さない。
いくら謝っても許されないたが屋は「切るなら、切れ」と開き直り、伴の侍と激闘が始まる。
たが屋は体をかわして刀を奪い取り、切りかかってきた侍を切り倒す。
次の侍も切りつけてきたが誤って欄干に刀を食い込ませ、そこをたが屋が切りつける。
群衆は皆たが屋の味方となり、馬上の武士に悪口雑言を浴びせて小石をぶつけ始める。
馬から降りた武士が槍で突いてきたが、たが屋は刀で槍先を切り落とし、武士が刀を抜こうとした時に首を切る。
群衆が花火の掛け声になぞらえて「たがやぁ~」と叫び、地口オチで痛快に幕を閉じる。
解説
「たがや」は江戸時代の両国橋での花火見物を舞台にした古典落語で、庶民と武士の身分差を逆転させた痛快な作品です。この演目の最大の魅力は、花火の掛け声「玉屋」「鍵屋」と「たがや」をかけた巧妙な地口オチにあります。江戸の代表的な夏の風物詩である花火大会の雰囲気を背景に、偶然の事故から始まる理不尽な武士の横暴に対して、桶屋という庶民が立ち向かう構図が描かれています。
この噺の特徴は、通常であれば武士に逆らうことなど考えられない時代背景の中で、たが屋が開き直って武士と対等に戦うという非現実的な展開にあります。群衆がたが屋を応援する場面は、庶民の武士階級への不満を代弁する痛快さがあり、江戸っ子の気質を表現した作品として親しまれています。
最後の「たがやぁ~」という掛け声は、花火の「玉屋」「鍵屋」と韻を踏んだ見事な地口オチで、聞き手に強い印象を残す落語の醍醐味を味わえる古典落語の傑作です。
あらすじ
両国の川開きの花火見物で、両国橋の上は大変な人出でで身動きがとれない。
花火が打ち上がるたびに、「玉屋ぁ~」「鍵屋ぁ~」の掛け声が上がるが、
「橋の上玉屋玉屋の声ばかり なぜか鍵屋と言わぬ情(錠)なし」の歌にもあるように、玉屋の掛け声が多い。
橋の上を通りかかったのが桶のたがを抱えたたが屋。
見物人に押されたはずみに、たががはずれて馬で通りかかった武士の笠を飛ばしてしまう。
たが屋は平謝りに謝るが、怒った武士は手打ちにすると言う。
いくら謝っても許されないたが屋は、「切るなら、切れ」と開き直る。
伴の侍が、刀を抜いて切りかかってくるのを、たが屋は体をかわして刀を奪い切り倒す。
次の侍も切りつけてきたが誤って欄干に刀を食い込ませてしまった所に、たが屋は切りつける。
こうなると、群衆は皆、たが屋の味方で馬上の武士に悪口雑言、小石なんかをぶつけはじめる。
馬から降りた武士は槍を取り、たが屋めがけて突き出した。
たが屋は刀で槍先を切り落としてしまう。
槍先のない槍ではやりくりがつかず、武士は槍を放り出す。
やりっぱなしというやつだ。
武士が刀を抜こうとしたがたが屋のほうが早かった。
刀を横にはらうと、武士の首が中天高くスポーン。
群衆 「たがやぁ~」
落語用語解説
- たが屋 – 桶の「たが(箍)」を作ったり修理したりする職人。桶のたがを担いで売り歩いた。
- 両国橋 – 江戸の隅田川に架かる橋。花火大会の名所として知られた。
- 玉屋・鍵屋 – 江戸時代の二大花火師。花火が上がるたびに「玉屋ぁ~」「鍵屋ぁ~」と掛け声をかけた。
- 川開き – 夏の川遊びの開始を祝う行事。両国では花火大会が行われた。
- 地口オチ – 同音異義語や語呂合わせで落ちをつける落語のオチの種類。
- 手打ち – 武士が無礼な者を斬り捨てること。当時は身分により許されていた。
よくある質問(FAQ)
Q: 「たがやぁ~」というオチの意味は?
A: 花火の掛け声「玉屋ぁ~」「鍵屋ぁ~」と同じ調子で「たがやぁ~」と叫ぶことで、職業名と花火の掛け声を掛けた地口オチです。たが屋の武勇を称える痛快な結末です。
Q: 庶民が武士に勝つのは現実的ですか?
A: 江戸時代には考えられない展開ですが、これは落語の誇張表現です。庶民の武士階級への不満を代弁する痛快さが人気の理由でした。
Q: 玉屋と鍵屋の関係は?
A: どちらも江戸時代の有名な花火師です。玉屋は鍵屋から独立した店で、両者は競い合って花火を上げていました。掛け声の多さで人気を競ったとされます。
名演者による口演
- 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。たが屋の痛快な立ち回りを臨場感たっぷりに演じました。
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。花火見物の賑やかさと武士の横暴を見事に描き分けました。
- 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の名人。群衆の「たがやぁ~」の掛け声を印象的に演じました。
関連する落語演目
同じく「地口オチ」の古典落語


庶民vs武士がテーマの古典落語


江戸の風俗・行事がテーマの古典落語


この噺の魅力と現代への示唆
「たがや」は、江戸時代の両国橋での花火見物を舞台にした痛快な古典落語です。庶民のたが屋が武士の横暴に立ち向かい、最後には武士を倒すという展開は、身分制度への庶民の不満を代弁する痛快さがあります。
「玉屋」「鍵屋」と「たがや」をかけた地口オチは、江戸っ子の洒落っ気と機知を象徴する見事な構成で、落語の醍醐味を味わえる傑作です。


