しわい屋
3行でわかるあらすじ
極端な倹約家の店の旦那が、火事の際に焼けた家から炭をもらいに行かせたり、梅干しをにらんで唾液でご飯を食べたりする。
鰻屋の匂いをおかずにし、裸で過ごして頭上にたくわん石をぶら下げて冷や汗で暖を取るという常軌を逸した節約ぶりを披露。
最後はケチ仲間が裸足で来ることを予想して、畳まで裏返しにしておいたというオチで終わる。
10行でわかるあらすじとオチ
極度の倹約家である店の旦那のもとに定吉という奉公人がいて、様々なケチエピソードが展開される。
町内で火事があった際、旦那は向こう側の焼けた家から十能で炭のおきをもらってこいと定吉に命令する。
隣家から金槌を借りようとすると「鉄の釘を打つと金槌が減る」と断られ、旦那は近所をケチ呼ばわりする。
旦那は梅干しをにらんで口の中に酸っぱい水を溜めてご飯を食べ、隣の鰻屋の匂いをおかずにしている。
鰻屋から匂い代を請求されると、財布を振って音だけ聞かせて「かぎ賃だから音だけで十分」と答える。
扇子は開くが振らずに首を振って風を起こし、部屋は真っ暗にして灯り代を節約する。
ある晩ケチ仲間が訪ねてくると、旦那は裸で過ごしており、寒くないかと聞かれる。
旦那は頭の上に細い紐でたくわん石をぶら下げ、いつ落ちるかと冷や汗をかき続けて暖を取っていると説明。
帰り際に薪で目と鼻の間を殴って火を出して履物を探せと言うが、客は裸足で来ていた。
旦那は「そうだろうと思って畳を裏返しにしておいた」と、ケチの極みを披露してオチとなる。
解説
しわい屋は、「しわい」(関西弁でケチ、吝嗇の意味)な人物を主人公にした古典落語の代表作である。
江戸時代の庶民にとって身近な「ケチ」という性格を極限まで誇張して描いた笑話で、次第にエスカレートする節約術が笑いを誘う。
火事の炭をもらう話から始まり、金槌の摩耗を心配する隣人、梅干しで唾液を出してご飯を食べるなど、現実離れした節約ぶりが展開。
鰻屋の匂い代と財布の音の応酬は、江戸の商人文化を反映した洒落た掛け合いとして評価されている。
最後の「畳を裏返し」は、客が裸足で来ることを予想した究極のケチとして、聴衆の想像を超える落ちを提供する。
この作品は単純な笑話を超えて、当時の商人社会の金銭感覚や生活文化を風刺した社会性も含んでいる名作である。
あらすじ
“倹約・もったいない”が過ぎた、ドケチ、吝嗇(りんしょく)のお噺。
町内に火事があっておさまった頃、見舞客に店の旦那「おかげ様で風向きが変わりまして、こちらは被害がなくて済みました・・・定吉や火がないよ・・・起こすことはないよ。向こう側の焼けた家から十能を持って、おきをもらっておいで・・・」
定吉が向かいの家に行くと、「ふざけるな。おきなんか一かけらもやれるもんか、とっとと帰れ!」、定吉は帰ってこのことを話すと、旦那「ケチな野郎だ。今度こっちが焼けたって火の粉もやるもんか」
旦那「定吉、雨戸を修繕するからお隣から金槌を借りておいで」、定吉が隣へ借りに行くと、主人「貸さないこともないが、打つのは鉄の釘か竹の釘か」、「たぶん鉄の釘でしょう」、「それなら金槌が減ってしまうから貸せない」、戻って定吉「金槌が減るから貸せないということで」、旦那「回り近所はケチばかりだな。そんならうちのを出して使おう」
この旦那は梅干しをにらんで、口の中に酸っぱい水を溜めてご飯を食べ、隣の鰻屋で焼く鰻のにおいをおかずにして飯を食っている。
月末に鰻屋が鰻のにおいかぎ賃を取りに来た。
旦那「うーん、なかなかやるなと」思ったが、懐(ふところ)から財布を出して振って、「かぎ賃だから、音だけ聞いて帰れ」と、ひるむことはない。
扇子なんぞは気前よく?全開して一生使うと言う。
扇子は振らずに首を振るというから恐れ入る。
ある晩、ケチ仲間が訪ねて来た。
通された部屋は真っ暗で何も見えない。
旦那 「少し辛抱すれば暗闇でも目が慣れて見えてきますよ」、それは理屈で、
ケチ仲間 「ああ、見えてきました。
おや、こりゃ驚いた。あなたは裸ですね」
旦那 「ええ、表へ出る時だけ着物を着るんですよ」
ケチ仲間 「寒くありませんか?」
旦那 「寒くなんかありません。いつも汗をかいています」
ケチ仲間 「汗をかいている。・・・何かまじないでも・・・」
旦那 「あたしの頭の上をご覧なさい。
細い紐でたくわん石をぶら下げてあります。いつ紐が切れて落ちて来やしないかと、冷や汗をかき続けています」
ケチ仲間 「いやあ恐れ入りました。
危なくてとてもいられません。おいとまします」
旦那 「お帰りですか。じゃあ、この薪をお持ちなさい」
ケチ仲間 「薪なんか持ってどうするんです?」
旦那 「薪であなたの目と鼻の間をぽかりと殴りなさい。そしたら火が出るから、それで履物を探しなさい」
ケチ仲間 「へへ、たぶんそんなことだろうと思って、下駄ははかずに参りました」
旦那 「なに、裸足で来た。たぶんそうだろうと思って畳を裏返しにしておきました」
落語用語解説
- しわい – 関西弁でケチ、吝嗇(りんしょく)の意味。この噺のタイトルの由来です。
- 吝嗇(りんしょく) – 金銭に対して極端にけちなこと。この噺の旦那の性格を表しています。
- 十能(じゅうのう) – 炭や灰を運ぶための道具。柄付きの小さな鉄製の容器です。
- たくわん石 – 漬物を漬ける際に重しとして使う石。この噺では恐怖を与えるために使われます。
- 匂いかぎ賃 – 鰻屋の匂いを嗅いだ代金という架空の請求。落語らしい発想です。
よくある質問(FAQ)
Q: 「畳を裏返しにしておいた」というオチの意味は何ですか?
A: 客が裸足で来ることを予想して、畳の表面(きれいな面)を傷めないように裏返しにしておいたという究極のケチぶりを表しています。
Q: 鰻屋の匂い代と財布の音の応酬は本当にあった話ですか?
A: 落語のエピソードであり、実話ではありません。しかし江戸時代の商人の金銭感覚を風刺した洒落た掛け合いとして評価されています。
Q: たくわん石で冷や汗をかくというのはどういう意味ですか?
A: 頭上に重い石をぶら下げて、いつ落ちるかと恐怖で冷や汗をかき続けることで、暖房代を節約するという常軌を逸した発想です。
名演者による口演
- 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。ケチ旦那の様々なエピソードを軽妙に演じました。
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。ケチの応酬を品良く表現しました。
- 桂文楽(八代目) – 各エピソードを間を活かして演じました。
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古典落語「しわい屋」は、極限のケチを描いた爆笑噺です。Amazonオーディブルでは、名人による落語が聴き放題で楽しめます。
梅干しで唾液を出す場面、鰻の匂い代の応酬など、名人の間と表現でお楽しみください。
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同じく「ケチ・吝嗇」がテーマの古典落語
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この噺の魅力と現代への示唆
「しわい屋」は、極限のケチを描いた古典落語の代表作です。火事の炭をもらう話から始まり、次第にエスカレートする節約術が笑いを誘います。
梅干しで唾液を出してご飯を食べる、鰻の匂いをおかずにするなど、現実離れした発想が落語らしい荒唐無稽さを表しています。
最後の「畳を裏返し」は、客の行動を予想した究極のケチとして、聴衆の想像を超えるオチを提供しています。








