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【古典落語】真景累ヶ淵① あらすじ・オチ・解説 | 親の仇の息子と恋に落ちる運命の皮肉

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話芸の殿堂-古典落語-真景累ヶ淵1
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真景累ヶ淵①

3行でわかるあらすじ

盲人の鍼医者皆川宗悦が金の回収に行った新左衛門に殺され、家族にも悲劇が降りかかる。
新左衛門の息子新五郎と宗悦の娘お園が偶然同じ質屋で働くことになる。
お互いの素性を知らないまま新五郎が恋心を抱くが、手籠めにしようとした際にお園が押切りで死亡。

10行でわかるあらすじとオチ

根津七軒町の盲人鍼医者皆川宗悦が、貸した金の回収のため新左衛門の屋敷を訪ねる。
新左衛門は酔っ払っており、金の支払いを拒絶し、精力する宗悦を斬り殺してしまう。
下男三右衛門が宗悦の死体を葛籠に詰めて秋葉の原に捨てるが、発覚される。
新左衛門の家族にも悲劇が降りかかり、新左衛門は奥方を誤殺し、後に自らも殺される。
新左衛門の息子新五郎が絶望して家を出るが、質屋で働くことになる。
その店には宗悦の娘お園も奉公しており、お互いの素性を知らない。
新五郎はお園に想いを寄せるが、お園は本能的に彼を嫌い嫌っている。
ある日、新五郎が蔵でお園を手籠めにしようと押し倒した際、押切りの刃が背中に刺さる。
お園は血だらけになって苦しみながら死亡し、新五郎は金を盗んで逃亡する。
3年後、新五郎が捕らえられる際にまた押切りで足を切り、お園の命日と同じ日だったという因果応報のオチ。

解説

「真景累ヶ淵」は、三遊亭円朝(山陽)が明治時代に創作した長編落語の傑作で、全体で十一席から構成されています。この第一席は、全体の物語の導入部として、後に継続される悲劇の連鎖の発端を描いています。「累ヶ淵」とは、因果応報で悲劇が累積していく様子を淵にたとえたタイトルで、「真景」は「真実の情景」を意味しています。

この作品の特徴は、従来の落語のスタイルを超えた重厚なドラマ性と、精密に組み立てられたプロットにあります。父親同士の因縁が子世代にも影響し、本能的に相手を嫌うお園と、それとは知らずに想いを寄せる新五郎の心理描写は、運命の皮肉と残酷さをよく表現しています。

「押切り」という道具が物語のキーアイテムとなっており、お園の死と新五郎の最後の捕物の際に再登場することで、因果応報の恐ろしさを象徴的に表現しています。また、最後に新五郎が捕縛される日がお園の三年目の命日であったという設定は、仏教的な因果観念を反映した結末となっています。

あらすじ

根津七軒町に住む盲人の鍼医者の皆川宗悦は、女房のお兼は亡くし娘の十九才の志賀(後の豊志賀)と十七才のお園との三人暮らし。
宗悦の楽しみは娘たちの成長と、座頭金を貸して小金を貯めること。

宗悦は安永二年(1773)の暮れの雪模様の空の寒い日に小日向の服部坂上の旗本、深見新左衛門の屋敷に貸した金を受け取りに行く。

宗悦 「わたくしはこういう不自由なからだで杖を引っ張って来るのでげすから、今日は半分でも頂戴して帰らんければなりません」、昼間から酔っ払っている新左衛門は、「・・・当家も手元不如意で無い袖は振れぬ」の一点張り。
なおも食い下がる宗悦を新左衛門は、「この無礼者!」と斬り殺す。

新左衛門は下男の三右衛門に十両の金をやり、葛籠に詰めた宗悦の死骸をどこかに捨てて、そのまま在所の下総に帰るように命じる。

臆病者の三右衛門は葛籠をなかなか捨てられずにあちこちうろついて、根津七軒町の喜連川家の屋敷のそばの秋葉の原に置き捨てて下総へと帰ってしまった。

この葛籠に目をつけた狡猾で欲張りな上方者が葛籠の中には金目の物が入っていると睨んで、家主にうまい事を言って自分の物にして家に担ぎ込む。

これを見ていた長屋の遊び人の博打打二人が葛籠を盗み出す。
暗闇の中で開けてさわってびっくりの玉手箱、中には無残な宗悦の死骸だ。
あわてて逃げ出した二人はしばらくして御用となって佃島の人足寄場に送られた。
葛籠を自分の物だと偽った上方者夫婦は所払いとなった。

一方、昨日から帰らない宗悦を心配していた娘のお園が、葛籠に中の哀れな宗悦の死骸を見てびっくり。
長屋の者たちは宗悦を日暮里の青雲寺に埋葬した。

深見家では宗悦が斬り殺されたのを目にした奥方が塞ぎ込んでお乳が出なくなり、二つになる次男の新吉は門番の勘蔵が下谷大門町の知り合いの家に乳を飲ませに行くようになった。

新左衛門は市ヶ谷の仙台藩の剣術師範の黒坂一斎のところへ内弟子に行っていた十九になる惣領の新五郎を呼び戻して母親の看病をさせている。
女手も必要と新左衛門は深川の網打場のお熊という二十九才の女を屋敷に入れる。

お熊は酒の相手もするうちに新左衛門の妾同様になってしまう。
呆れた新五郎は家を出て行ってしまった。
そのうちにお熊は腹が大きくなり、奥方の病は重くなるばかりだ。

ある日、酔った新左衛門はちょうど通りかかった按摩を呼び入れるが、その療治は痛くてしょうがない。
すると按摩が「・・・あなたの脇差でこの左の肩からこう切られた時の苦しみは・・・」、見ると宗悦で、おのれ、迷ったか!」と切りつけるとこれが奥方で、そのまま息絶えてしまった。

冬になって新左衛門は本所北割下水の座光寺源三郎と言う御不審がかかった旗本家の宅番(見張り番)をしていたが、浅草竜泉寺前の梶井主膳らの一味が押し寄せて来て槍で突き殺されてしまう。

深見家は改易になり、お熊はもとの深川の網打場に戻り、門番の勘蔵は新吉を連れて大門町の知り合いの家で、新吉の伯父と言って育てることになる。

家出をして下総のもと下男の三右衛門のところにいた新五郎が戻って来る。
両親は非業の死をとげ、深見家は改易、絶望して菩提所の青松寺の墓の前で切腹しようとする。

そこへ墓参に来ていた谷中七面前の下総屋惣兵衛という質屋の主人に止められて、惣兵衛の店で働くことになった。
その店に奉公していたのが宗悦の二女のお園だ。

お互いの素性も知らない二人だが、器量よしで気立てもいいお園に新五郎は惚れてしまうが、虫が知らせるのか、お園は親の仇の息子の新五郎を毛嫌いする。

新五郎はお園にしつこくつきまとい、病気の看病をしたりして尽くしているがお園は身震いがするほど嫌がっている。

ある日、新五郎は店の用で蔵に入ったお園に言い寄り手籠めにしようと押し倒した。
お園の身体の下には鋭く研がれた苆(スサ)を切る押切りの刃が・・・。
もがいているうちに刃がお園の背中に食い込んで血だらけになって七転八倒苦しんで息絶えてしまった。

うろたえた新五郎だが、毒食わば皿までと、店の金百両持ち出して逐電した。
新五郎は仙台へ帰っていた黒坂一斎のところへ身を寄せていたが、水が合わないのか故郷忘れ難しなのか三年も経った頃また江戸に戻って来た。

浅草観音に参って吾妻橋を渡り、もと深見家の下男だった松倉町の勇治の家に行く。
勇治は去年死んで娘のお春が居たがその亭主は岡っ引きで、お園殺しの手配はまだ回っていた。

大捕り物の末、新五郎が屋根から飛び降りると下には押し切りが・・・。
新五郎は足を深く切ってついに御用となった。
何の因果かお園を殺したのも押し切りで、今日は三年目の命日とは。


落語用語解説

  • 真景累ヶ淵 – 三遊亭圓朝作の長編怪談落語。「累(かさね)」は悲劇が積み重なる意味で、因果応報の恐ろしさを描いています。
  • 座頭金 – 盲人が貸し付ける金のこと。江戸時代、盲人は金貸しの特権を持っていました。
  • 葛籠(つづら) – 竹を編んで作った衣装や物を入れる箱。この噺では死体を隠すために使われます。
  • 押切り – 藁や苆(すさ)を切るための農具。刃が鋭く、この噺では凶器として登場します。
  • 浄玻璃の鏡 – 閻魔大王が死者の生前の行いを映し出す鏡とされる仏教の概念です。

よくある質問(FAQ)

Q: 「真景累ヶ淵」は全部で何席ありますか?
A: 全体で十一席から構成される長編落語です。この第一席は、後に続く悲劇の連鎖の発端を描いています。

Q: なぜお園は新五郎を本能的に嫌ったのですか?
A: 父親を殺した加害者の息子という因縁を、本能的に感じ取ったためです。因果応報の恐ろしさを表現しています。

Q: 押切りが二度登場する意味は何ですか?
A: 因果応報の象徴です。お園を殺した凶器が、3年後に新五郎の足を切る道具として再登場し、運命の皮肉を表しています。

名演者による口演

  • 三遊亭圓朝 – この作品の創作者。明治時代の名人で、怪談落語の大成者として知られています。
  • 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。圓朝の作品を継承し、格調高い口演で知られました。
  • 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。人情味あふれる演出で因縁話を語りました。

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この噺の魅力と現代への示唆

「真景累ヶ淵①」は、三遊亭圓朝が創作した長編怪談落語の第一席です。盲人の鍼医者殺害から始まる悲劇の連鎖が、子世代にまで影響するという因果応報の恐ろしさを描いています。

加害者の息子と被害者の娘が偶然出会い、一方は恋心を抱き、一方は本能的に嫌うという対比は、運命の皮肉を見事に表現しています。

押切りという凶器が二度登場する構成や、命日の一致など、圓朝の緻密な構成力が光る傑作です。

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