死神 落語|あらすじ・オチ「消えた」の意味を完全解説
死神(しにがみ) は、グリム童話を翻案した古典落語の傑作。死神から医術を教わった男が欲に目がくらんで破滅し、寿命の蝋燭が「消えた」で終わる衝撃的なオチが落語史に残る名場面として知られています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 演目名 | 死神(しにがみ) |
| ジャンル | 古典落語・怪談噺 |
| 原典 | グリム童話「ゴッドファーザー・デス」 |
| 呪文 | アジャラカモクレンテケレッツのパ |
| オチ | 「消える」「ほおら消えた」 |
| 見どころ | 寿命の蝋燭、衝撃的な結末 |

3行でわかるあらすじ
貧困にあえぐ男が死神から病気治しの秘訣を教わり、医者として大成功を収める。
しかし浪費して再び困窮すると、1万両欲しさに死神を騙して病人を治そうとする。
怒った死神に寿命の蝋燭を見せられ、つなぎ直そうとするが失敗して「消えた」で終わる。
10行でわかるあらすじとオチ
金に困った男が女房に馬鹿にされ自殺を考えていると、死神が現れて医者になる方法を教える。
死神が足元にいれば呪文で病気が治り、枕元にいれば助からないという秘訣を聞く。
かまぼこ板で看板を作ると早速患者が来て、呪文で病気を治して大評判となる。
大儲けした男は豪邸に住み、古女房と別れて若い女と遊び暮らすが金を使い果たす。
再び医者を始めるが死神はいつも枕元にいて儲けにならない状況が続く。
ある日、1万両の報酬で病人を治してくれと頼まれ、男は妙案を思いつく。
死神が居眠りしている隙に店の若い衆に布団を回させて死神を足元に移し、呪文で病人を治す。
家で祝杯を上げていると死神が現れ、男を暗い穴蔵の蝋燭が並ぶ部屋に連れて行く。
死神は蝋燭が人間の寿命で、男の蝋燭は病人の寿命と入れ替わって今にも消えそうだと説明。
男は必死に新しい蝋燭とつなごうとするが手が震え、「消える」「ほおら消えた」でオチとなる。
解説
死神は、西洋の民話「ゴッドファーザー・デス」を桂文枝(後の桂文楽)が日本に翻案した落語である。
原作の教父(ゴッドファーザー)が死神に置き換えられ、江戸時代の庶民生活に適応した設定となっている。
「アジャラカモクレンテケレッツのパ」という呪文は、密教の真言をもじった創作で、観客に親しみやすい響きを持たせている。
寿命を蝋燭の長さで表現するメタファーは視覚的で分かりやすく、聴衆に強烈な印象を与える仕掛けとなっている。
最後の「消える」「ほおら消えた」は、演者が前に倒れる演出と共に、死の瞬間をリアルに表現する衝撃的なオチ。
欲に目がくらんだ人間の愚かさと、死という絶対的な運命からは逃れられないという教訓を含んだ作品である。
あらすじ
わずかな金の算段もできず、女房から悪口雑言で馬鹿にされた男、家を飛び出し大きな木の下で首でもくくろうかと思っていると、後ろから死神に声を掛けられる。
お前はまだ寿命があるから、死のうと思っても死ねない、金の儲かる仕事を教えるというのだ。
医者になって病人の寝ている部屋へ行き、死神が枕元に座っていれば病人は寿命が尽きていて助からず、足元にいれば、「アジャラカモクレンテケレッツのパ」と呪文を唱えれば直るという。
男は半信半疑だが、家にかまぼこの板で医者の看板を掲げるとすぐに、日本橋の越前屋四郎兵衛の番頭がやって来て、幾人もの医者から見放された当家の主人を見てくれという。
行って見ると、死神は足元に座っている。
これ幸いと例の呪文唱え、手を打つと死神は消えてなくなり、病人ははたちまち起き上がり、何か食べたいと元気になる。
これが評判となり、引く手あまたで大繁盛、大儲けだ。
裏長屋から表通りの邸宅に移り、うるさい古女房と子どもとは金を渡して別れ、若い女を引っ張り込み、上方見物で散在する。
気がつけばすっからかん。
若い女も金の切れ目が縁の切れ目でどこかへ行ってしまった。
男はまた医者を始めるが、いつも死神が枕元に座っていて儲けにはならない。
ある日、麹町五丁目の伊勢屋伝右衛門から迎えが来る。
行って見るとやっぱり死神は枕元だ。
なんとか直してくれ、1月でも寿命を延ばせたら1万両差し上げると言われ目がくらみ、妙案を男は考えた。
店の若い衆4人に病人の寝ている布団の隅をもたせ、一気に回して死神を足元にしてまうのだ。
枕元に座り、夜中は目を爛々と輝かせ、病人を苦しめ唸らせていた死神も、昼近くになると疲れてコックリ、コックリと居眠りを始めた。
ここがチャンスと男は店の若い衆に一に二の三で布団を回させ、呪文を唱える。
驚いた死神だがもう遅い、あっという間に消えてしまい、病人は蘇って、計略は大成功に見えた。
家に帰って計画大成功と浮かれて男が酒を飲んでいると、死神が現れ男を暗い穴蔵に誘う。
そこには無数の蝋燭(ろうそく)が並んでいる。
長いのや短いの、あかあかと威勢よく燃えているもの、今にも消えそうなもの様々だ。
死神は蝋燭の長さが人間の寿命という。
あそこで長くて元気よく燃えているのはお前のせがれで、半分の長さのは前のかみさんの蝋燭という。
死神は今にも消えそうな一本を指し、これがお前の寿命だという。
驚いた男に隣の半分くらいの長さで燃えているのが、もともと男の寿命の蝋燭だったが、麹町の病人の家で馬鹿なことをしたものだから、寿命の尽きる病人のものと入れ替わってしまったのだという。
男は死神に謝り、必死でもう一度助けてくれと頼む。
死神は灯しかけがあるから、お前の蝋燭とつないでみろという。
うまくつながれば命は助かるという。
死神に早くしろとせっつかれ、男はつなごうとするが、手が震えてなかなかできない。
死神 「ほら、早くしろ、震えると火が消えるぞ」
男 「ああ、消える・・・・」
死神 「ほおら消えた」、(男(圓生)がばったり前に倒れる)
落語用語解説
- 死神 – 西洋の死神(ゴッドファーザー・デス)を日本風にアレンジしたキャラクター。原典はグリム童話の民話です。
- アジャラカモクレンテケレッツのパ – 死神が教える呪文。密教の真言をもじった創作で、落語らしい滑稽な響きになっています。
- 寿命の蝋燭 – 人間の寿命を蝋燭の長さで表現したメタファー。視覚的に分かりやすく、聴衆に強い印象を与えます。
- 灯しかけ – 新しい蝋燭のこと。古い蝋燭とつなぐことで寿命を延ばすという設定です。
- 桂文楽(初代) – この噺を日本に紹介・翻案した落語家。西洋民話を落語化しました。
よくある質問(FAQ)
Q: 「死神」は西洋の話が元になっているのですか?
A: はい、グリム童話に収録されている「ゴッドファーザー・デス」が原典です。桂文楽(初代)が明治時代に日本風に翻案しました。
Q: なぜ男は蝋燭をつなげなかったのですか?
A: 欲に目がくらんで死神を騙した報いとして、手が震えて蝋燭をつなげませんでした。人間の欲深さへの戒めが込められています。
Q: 「消えた」で演者が倒れる演出はどの落語家が始めたのですか?
A: 三遊亭圓生(六代目)が有名ですが、演者によって演出は異なります。照明を消す、そのまま正座を続けるなど様々なバリエーションがあります。
名演者による口演
- 三遊亭圓生(六代目) – 「消えた」で前に倒れる演出で有名。蝋燭の場面の緊迫感は圧巻でした。
- 柳家小三治 – 人間国宝。死神と男の対話を丁寧に演じ、哲学的な深みを持たせました。
- 立川談志 – 独自の解釈で人間の欲望を掘り下げ、現代的な「死神」を作り上げました。
関連する落語演目
同じく「怪談・超自然」がテーマの古典落語
欲に目がくらんで破滅する古典落語
衝撃的なオチの古典落語
この噺の魅力と現代への示唆
「死神」は、西洋の民話を日本の落語に見事に翻案した名作です。「アジャラカモクレンテケレッツのパ」という呪文や、寿命を蝋燭で表現するメタファーは、日本の聴衆に親しみやすい形にアレンジされています。
この噺が描いているのは、欲に目がくらんだ人間の愚かさです。死神のルールを破って病人を助けた男は、一時的には成功しますが、最終的には自分の寿命と引き換えになります。
「消えた」という衝撃的なオチは、演者によって様々な演出がされており、落語の中でも特に印象的な締めくくりとして知られています。








