品川心中 落語|あらすじ・オチ「比丘にされた」意味を完全解説
品川心中(しながわしんじゅう) は、心中を持ちかけられて騙された金蔵が見事な復讐を遂げる廓噺の傑作。幽霊に扮してお染を脅かし、髪を切らせた後に「客を釣るから比丘にされた」という洒落たオチで締める痛快な逆転劇です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 演目名 | 品川心中(しながわしんじゅう) |
| ジャンル | 古典落語・廓噺 |
| 主人公 | お染(遊女)・金蔵(貸本屋) |
| 舞台 | 品川宿・白木屋 |
| オチ | 「お前があんまり客を釣るから、比丘にされたんだ」 |
| 見どころ | 騙された金蔵の痛快な復讐劇 |
3行でわかるあらすじ
金に困った品川宿の遊女お染が、心中相手に選んだ間抜けな貸本屋の金蔵を騙して一人で海に飛び込ませる。
生きて這い上がった金蔵が親分と組んで復讐計画を実行し、幽霊に扮してお染を脅かす。
恐怖で髪を切ったお染に対し「客を釣るから比丘(びく・魚籠)にされた」とオチをつける。
10行でわかるあらすじとオチ
品川宿白木屋の板頭お染は、年齢により客足が減り四十両の金に困り心中を決意する。
心中相手として「馬鹿で大食いで助平」な貸本屋の金蔵を選び出す。
金蔵を呼び出し心中を持ちかけると、金蔵は家財を売って金策しようと申し出るが一両程度。
お染は金蔵を説得し一緒に死ぬことを約束させ、白無垢まで用意して準備を整える。
いざ心中という夜、山の御前が五十両を持参してお染の金策が成功する。
お染は心中を取りやめ「あの世でお目にかかります」と金蔵だけを海に飛び込ませる。
品川の海は遠浅で金蔵は溺死せず、ヘドロまみれで岸に這い上がる。
翌日、金蔵は親分と組んで復讐計画を実行し、幽霊に扮してお染の店に現れる。
恐怖したお染は髪を根元から切り、さらに回向料として五両も支払う。
最後に金蔵が踊りながら現れると親分が「客を釣るから比丘(魚籠)にされた」と名オチ。
解説
「品川心中」は江戸時代の品川宿を舞台にした古典落語の代表作の一つです。遊郭を舞台にした廓噺(さとばなし)の系統に属し、心中物のパロディとしての要素を持った異色の演目です。
この噺の最大の見どころは、前半で完全に騙された金蔵が後半で見事な復讐を成し遂げる痛快な逆転劇です。お染に「馬鹿で大食いで助平で欲張り」と散々にこき下ろされた金蔵が、最終的にお染から髪と金を巻き上げる展開は聴衆の溜飲を下げます。
オチの「客を釣るから比丘(びく)にされた」は、遊女が客を「釣る」ことと魚を「釣る」ことをかけ、さらに「比丘」(魚籠・びく)と音を合わせた巧妙な言葉遊びです。この一言で金蔵の完全勝利が印象深く締めくくられます。
また、品川の海が遠浅であることや、江戸時代の遊郭事情、博打場の様子など、当時の風俗が詳細に描かれており、時代背景を知る上でも興味深い作品です。
あらすじ
品川宿の白木屋で長年、板頭を張っていたお染。
寄る年波には勝てず客が減り、紋日に必要な金の工面も出来なくなった。
勝気なお染めは、いっそひと思いに死のうと思うが、一人で死んだんでは金に詰まって死んだと言われくやしい。
心中にしよう、その方が賑やかでいいと、相手を物色し始めるが、「帯に短したすきに長し」で、なかなか人選がはかどならい。
ついに神田から通って来る貸本屋の金蔵に白羽の矢を立てる。「金蔵は一人者だし、馬鹿で、大喰らいで、助平で欲張りだから、あんな奴は死んだほうが世のためになる」なんて可哀そうに金蔵、すっかり見込まれてしまった。
早速、相談ごとがあるからと手紙を書くと、金蔵さん、喜び勇んで品川へ飛んで来た。
お染は四十両の金ができずに、死ななければならないというと、金蔵は家の物全部売り払ってこしらえてやるという。
いくら位になるかと聞くと一両位なら何とかと、頼りなく、情けない。
お染は一緒に死んでくれと頼むが、なかなか踏ん切りのつかない金蔵をお染はなんとか説き伏せた。
その夜は至れり尽くせりのもてなしで、金蔵は魂が抜けたようになる。
翌朝、家の物を道具屋に売る払った金で、心中用の白無垢を買うが、お染の分はまともなのを買えたが、金蔵のは腰までしかない半端もの。
長年、世話になった親分の所へ暇乞いに行く。
金蔵「少し田舎へでも行って稼ごうと思って・・・」、親分「で、どっちへ行くんだ」、金蔵「西の方へ行こうかと」、親分「いつ帰(けえ)ってくるんだ」、金蔵「お盆の十三日には」、親分「よほど遠い所か」、金蔵「人のうわさに十万億土・・・」、こんなやりとりをして金蔵は匕首を忘れて駆け出して行ってしまう。
親分は喧嘩でもしに行ったのかと心配したが、そのまま放って置く。
夕暮れ時に、首を長くして待っているお染の所へ金蔵が現れる。「今夜はお別れだからうんと飲んで騒ごう、どうせ勘定は払わねえんだから」とがぶがぶ飲んで、大食いして寝てしまった。
お染は金蔵のぶ様の寝姿を見て、こんな奴と一緒に死ぬなんて情けないと思うが、そんなことは言ってられない。
揺り起すともう金蔵は心中のことはすっかり忘れている。
なんとか言いくるめてお染は金蔵を裏庭から海岸、桟橋へと連れ出す。
そのうちに二階で、「お染さんぇ~、お染さんぇ~」と呼ぶ声。
お染は尻込みをしてガタガタ震えている金蔵の腰を押す。
もんどり打って海へ落ちた金蔵に続いてお染が飛び込もうとすると、後ろから若い衆が帯をしっかり押さえ、「山の御前が五十両持って来たよ。
間に合ってよかった。金ができたんだよ」 これを聞いたお染、海に向かって「お金ができたっていうから、死ぬのは見合わせ、いずれあの世でお目にかかりますから。どうも失礼」と、はいサヨナラだ。
一方の金蔵、品川の海は遠浅で腰までしかない。
ざんばら髪、貝の引っ掻き傷、顔に舟虫、頭に海藻、腰から上はヘドロがべったりの白装束で岡に這い上がり、高輪あたりで駕籠屋を驚かせ、犬に吠えられ、追いかけられて親分の所へ駆け込んで戸を叩く。
ちょど博打の真っ最中で、手入れが入ったのかと大あわて。
戸を開けると白い着物のお化けのような金蔵が立っている。
疲れた金蔵はその夜は親分の所で寝てしまう。
翌朝、顛末を聞いた親分はお染に仕返しをしてやろうという。
段取りを打合せ、大引け前の白木屋に現れた青い顔をした金蔵、幽霊かと驚いたお染に、陰気な声で縁起の悪いことを並べ、気分が悪いから寝かせてくれと、奥の間に引きこもる。
そこへ現れたのが親分と、金蔵の弟に化け込んだ子分の留公。
土左衛門で見つかった金蔵の体からお染との起請文が見つかったという。
お染はそんなおどかしは通じない、金さんは部屋で寝ているとせせら笑う。
留公は懐の金蔵の位牌を見せようとするがない。
お染が金蔵の寝ている部屋に案内すると、布団はも抜けの殻で、中には「大食院好色信士」の位牌が。
さすがのお染も青くなり、一部始終を話す。
親分は金蔵は恨んでお前を取り殺す。
せめて髪でも切って謝って、供養しろとせまる。
お染が恐ろしさのあまり、根元からぷっつり髪を切り、さらに回向料として五両出したところで、当の金蔵が「えへへへ、ちゃらちゃらちゃら」と踊りながら登場。
お染 「幽霊にしちゃあスケベな幽霊だと思ったんだよ、頭の毛まで切っちまうとはひどいじゃあないか」
親分 「まあ、そう怒りなさんな、お染さん。お前があんまり客を釣るから、比丘(びく・魚籠)にされたんだ」
落語用語解説
- 品川宿 – 東海道の第一宿。江戸四宿の一つで、遊郭としても栄えました。吉原より格下でしたが庶民に人気がありました。
- 板頭(いたがしら) – 遊郭で最も格の高い遊女。店の看板娘的存在でした。
- 紋日(もんび) – 遊郭の祝い日。この日は遊女は客から多額の祝儀をもらう習慣がありました。
- 比丘(びく) – 魚を入れる籠(魚籠)のこと。「客を釣る」遊女が「比丘(尼僧)」にされた(髪を切った)という洒落。
- 起請文(きしょうもん) – 遊女と客が交わす愛の誓約書。偽りがあれば神罰が下るとされました。
よくある質問(FAQ)
Q: 「比丘にされた」というオチの意味は?
A: 「比丘」は魚籠(びく)と尼僧(比丘尼)の両方を指しています。遊女が「客を釣る」ことと、髪を切られて「尼」のようになったことを掛けた秀逸な言葉遊びです。
Q: なぜお染は金蔵を心中相手に選んだのですか?
A: お染は「馬鹿で大食いで助平で欲張り」な金蔵なら簡単に騙せると考えました。また独り者で身寄りがないため、騒ぎが大きくならないと踏んだのです。
Q: 品川の海が遠浅だったのは本当ですか?
A: はい、品川は東京湾に面した浅瀬でした。金蔵が溺死できずに這い上がれたのはこの地理的特徴を活かした設定です。
名演者による口演
- 古今亭志ん生(五代目) – 独特の味わいで金蔵の間抜けさと復讐の痛快さを演じました。
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。お染と金蔵の心理描写を丁寧に演じました。
- 古今亭志ん朝(三代目) – 軽妙洒脱な語り口で、前半と後半の対比を際立たせました。
関連する落語演目
同じく「遊郭・廓噺」の古典落語
復讐・仕返しがテーマの古典落語
言葉遊びが秀逸な古典落語
この噺の魅力と現代への示唆
「品川心中」は、前半で完全に騙された金蔵が後半で見事な復讐を成し遂げる痛快な逆転劇です。お染に散々馬鹿にされた金蔵が、最終的に髪と金を巻き上げる展開は聴衆の溜飲を下げます。
この噺が描いているのは、人を見下すことの危うさです。お染は金蔵を「馬鹿」と決めつけて利用しようとしましたが、結果的に手痛いしっぺ返しを受けました。
また、品川の遊郭事情や心中物のパロディとしての要素も、当時の風俗を知る上で興味深い作品です。








