締め込み
3行でわかるあらすじ
空き巣に入った泥棒が床下に隠れている間に、夫が風呂敷包みを見て妻の浮気を疑い夫婦喧嘩が勃発。
夫が投げたやかんの熱湯を浴びた泥棒が床下から這い出し、なぜか夫婦の仲裁に入って喧嘩を収める。
最後は泥棒に感謝しつつも「表から心張棒かえ」と締める絶妙なオチで幕を閉じる古典落語の名作。
10行でわかるあらすじとオチ
留守宅に侵入した泥棒が箪笥から盗品を風呂敷に包んでいると、急に住人の八五郎が帰宅。
泥棒は慌てて台所の床下に隠れるが、風呂敷包みはそのまま置き去りに。
帰宅した八五郎は風呂敷包みと開いた箪笥を見て、妻が間男と逃げる準備をしていると早合点。
湯屋から帰った妻に離縁状を突きつけて激しい夫婦喧嘩が始まる。
腹を立てた八五郎が熱湯の入ったやかんを投げつけると、湯が床下に流れ落ちる。
熱湯を浴びた泥棒がたまらず床下から這い出してきて、驚く夫婦の前に姿を現す。
泥棒は事情を説明して風呂敷包みは自分が作ったものだと白状し、夫婦の誤解が解ける。
喧嘩が収まった夫婦は泥棒に感謝するが、調子に乗った泥棒が「またちょいちょい伺います」と図々しく言う。
八五郎が「泥棒にちょいちょい来られては困る。戸締りをしろ」と言うと、妻が「もう泥棒は家の中にいるのに」と返す。
最後に八五郎が「じゃあ表から心張棒かえ」と締めて、見事なオチで幕となる。
解説
「締め込み」は江戸時代から愛され続ける古典落語の代表作の一つで、泥棒噺と夫婦喧嘩を巧妙に組み合わせた秀逸な構成が特徴です。この演目の見どころは、泥棒という悪役が皮肉にも夫婦の仲裁役となる逆転の発想と、最後の「表から心張棒かえ」という絶妙なオチにあります。
物語の核心は「勘違い」にあり、八五郎の早とちりから始まる夫婦喧嘩が、思わぬ形で泥棒によって解決されるという皮肉な展開が笑いを誘います。特に泥棒が床下で煮え湯を浴びて飛び出すくだりは、落語ならではの荒唐無稽さと絶妙なタイミングが光る名場面です。
オチの「表から心張棒かえ」は、泥棒がすでに家の中にいるのに外からの侵入を防ごうとする滑稽さを表現した地口オチで、落語の醍醐味である言葉遊びの面白さを存分に味わえる秀逸な締めくくりとなっています。
あらすじ
路地奥の家に、「今日は、お留守ですか」と空き巣に入った泥棒、家人はいないが長火鉢に火がおきていて、やかんの湯が煮立っている。
家の者はすぐ帰って来ると思い、急いで箪笥の引き出しから盗んだ物を風呂敷に包んで、逃げようとしたら八五郎が帰って来た。
泥棒は裏から逃げようとするが塀で行止まりで、あわてて台所のへっついの横の羽目板を上げて床下に隠れた。
帰って来た八五郎、女房はいないし、お湯は沸きっぱなし、見ると大きな風呂敷包みが置いてある。
箪笥の引き出しも開けっ放しだ。
早とちりの八五郎はてっきり女房が間男と逃げるのだと思い込む。
そこへ女房がフロから帰って来た。
仏頂面でキセルを吹かせている八五郎に話しかけるが、何も答えず怒ったような顔をしている。
長湯をして留守にしたことを怒っていると思い謝るが、八五郎は突然、離縁状をやるからすぐこの家から出て行けと言い出す。
間男して逃げる算段をしていたのだろうと、風呂敷と開いた箪笥を指さすが、身に覚えのない女房もかんかんに怒りだし、二人の馴れ初めの、八五郎が無理やり言い寄った時の「"うん"か"出刃"か、"うん出刃"か」なんて内輪話なんかを持ち出して八五郎に逆襲だ。
分が悪くなった八五郎、口ではかなわないと、たぎった湯の入ったやかんを投げつけた、これが台所に転がって湯が床下にだらだらと流れ落ちた。
床下に隠れていて煮え湯を頭から浴びた泥棒さん、たまらずに這い上がって来た。
不思議そうに見る二人を尻目に、泥棒は夫婦喧嘩の仲裁に入った。
ついに風呂敷包みはこの泥棒がこしらえたと分かり、二人は喧嘩別れせずに済んだと泥棒に感謝、調子に乗った泥棒は、「これをご縁に、またちょいちょい伺います」なんて図々しい。
八五郎 「冗談じゃない。
泥棒にちょいちょい来られたんではたまらない。しっかり表の戸締りをしろよ」
女房 「だって、もう泥棒は家の中にいるのに・・・・」
八五郎 「じゃぁ、表から心張棒かえ」
落語用語解説
- 締め込み – 空き巣や泥棒が家に侵入すること。タイトルは泥棒の侵入と、最後の「心張棒」を締める行為を掛けています。
- 心張棒(しんばりぼう) – 戸や障子を内側から固定する棒。「心張りを入れる」で戸締りをするという意味になります。
- 間男(まおとこ) – 人妻と密通する男。江戸時代は重罪でした。
- へっつい – かまど、竈のこと。台所に置かれ、その下に床下へ通じる空間がありました。
- 離縁状 – 夫が妻に渡す離婚届。「三行半(みくだりはん)」とも呼ばれました。
よくある質問(FAQ)
Q: 「表から心張棒かえ」のオチの意味は?
A: 泥棒がすでに家の中にいるのに、外からの侵入を防ごうとする滑稽さを表現しています。心張棒は内側から閉めるものなので、外から閉めては泥棒を閉じ込めることになるという言葉遊びです。
Q: なぜ泥棒は夫婦喧嘩の仲裁に入ったのですか?
A: 煮え湯を浴びて床下から這い出した泥棒は、自分が作った風呂敷包みが原因で夫婦喧嘩になっていることを知ります。真相を明かして夫婦の誤解を解くことが結果的に仲裁になりました。
Q: 八五郎はなぜ風呂敷包みを見て浮気と思ったのですか?
A: 箪笥の引き出しが開いていて、着物などを風呂敷に包んであったため、女房が間男と逃げる準備をしていると早合点しました。
名演者による口演
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。泥棒と夫婦のやり取りを絶妙な間で演じました。
- 古今亭志ん朝(三代目) – 軽妙な語り口で、勘違いの夫婦喧嘩を滑稽に表現しました。
- 柳家小三治 – 人間国宝。泥棒の災難と仲裁の皮肉を丁寧に描きました。
関連する落語演目
同じく「泥棒」が登場する古典落語


夫婦喧嘩・勘違いがテーマの古典落語


言葉遊びが秀逸な古典落語


この噺の魅力と現代への示唆
「締め込み」は、泥棒噺と夫婦喧嘩を巧みに組み合わせた古典落語の名作です。泥棒という悪役が皮肉にも夫婦の危機を救うという逆転の発想が見事です。
八五郎の早合点から始まる夫婦喧嘩は、思い込みの怖さを表現しています。相手の話を聞かずに結論を出してしまう姿は、現代の人間関係にも通じる教訓かもしれません。
最後の「表から心張棒かえ」というオチは、泥棒がすでに家の中にいるという滑稽な状況を一言で表現した秀逸な締めくくりです。


