三味線栗毛
3行でわかるあらすじ
父に疎まれ下屋敷暮らしの三男・角三郎が、按摩の錦木に「大名になる骨格」と言われ、検校にしてやると約束する。
後に本当に家督を継いで大名となり、約束通り錦木を検校にする。
名馬に「三味線栗毛」と名付け、三味線にかけた洒落を連発し、最後は「バチがあたる」で締める。
10行でわかるあらすじとオチ
酒井雅楽頭の三男・角三郎は父に疎まれ、鶏声ヶ窪の下屋敷で用人夫婦と暮らしていた。
ある夜、按摩の錦木を呼んで体を揉んでもらうと、錦木は角三郎の骨格を見て大名になると予言する。
角三郎は冗談半分に、もし大名になったら錦木を検校にしてやると約束する。
その後、錦木は大病で一月も寝込んでしまう。
ちょうどその頃、父が隠居し、長男は病弱、二番目は女子のため、角三郎が家督を継ぐことになる。
この話を聞いた錦木は病が癒え、雅楽頭となった角三郎のもとへ駆けつける。
雅楽頭は約束通り錦木を検校の位に取り立てる。
雅楽頭は南部産の栗毛の名馬を買い、「三味線栗毛」と名付ける。
なぜ三味線かと問われ、「酒井雅楽頭でウタが乗るから」「コマ(駒)という縁」「引かせる(弾かせる)」「ドウ(胴)」と洒落を連発。
最後に「家来が乗ったら?」と聞かれ、「バチがあたるぞ」と三味線の撥にかけたオチで締める。
解説
「三味線栗毛」は、出世物語と言葉遊びが巧みに組み合わされた古典落語の名作です。
前半は按摩の予言が的中する出世譚として展開し、後半は馬の名前を巡る洒落の連発で楽しませます。
「三味線栗毛」という名前には、「雅楽頭(ウタ)が乗る」「駒(コマ)」「引かせる(弾かせる)」「胴(ドウ)」といった三味線にまつわる言葉が次々と重ねられ、最後の「バチがあたる」で見事に締めくくります。
按摩が骨格を見て出世を予言するという設定も、江戸時代の按摩が持つ特別な洞察力への信仰を反映しており、庶民の夢と希望を託した噺となっています。
あらすじ
老中筆頭、酒井雅楽頭(さかいうたのかみ)の三人の子の末っ子の角三郎、どういう訳か父親にうとまれ、鶏声ヶ窪の下屋敷で部屋住みの身。
用人の清水吉兵衛夫婦と三人暮らしで出世の見込みはない。
とはいえ当の角三郎は生来、呑気なのか腹が大きいのか全く意に介さず自由気ままに毎日を暮していた。
ある夜、書見が過ぎて肩がこりあん摩の錦木を呼んで揉んでもらう。
錦木は世事に明るく、商売上手、話し上手で、角三郎はすっかり気に入ってひいきにする。
今日も角三郎の体も揉んでいた錦木は、角三郎の骨格は大名になる骨組みだという。
さすが商売上手とも思ったが角三郎も冗談半分に、もし自分か大名になったら錦木を検校にしてやると約束する。
錦木は自分の見立てによほど自信があったのか真に受けて、喜んで帰って行った。
そのうち錦木は大病にかかり、一月も寝込んでしまう。
ちょうどその頃、酒井雅楽頭が隠居し、長男は病弱、二番目は女子のため末っ子の角三郎が家督を継ぐことになった。
用人の清水吉兵衛もご意見番に出世した。
この話を見舞いに来た長屋の安兵衛から聞いた途端にすっかり病の癒えた錦木は、雅楽頭の屋敷に駆けつけると、約束通り検校の位を授かった。
文武両道に励むの雅楽頭は南部産の栗毛の名馬を買い求め「三味線栗毛」と名付けた。
錦木がなぜ名馬に「三味線」なのかと聞くと、
雅楽頭 「酒井雅楽頭で、ウタが乗るから三味線だ。
コマ(駒)という縁もある。乗らん時は、引かせる(弾かせる)、止める時はドウ(胴)と言うではないか」、
錦木 「もし、ご家来衆が乗りました時は」
雅楽頭 「その時は、バチがあたるぞ」
落語用語解説
- 雅楽頭(うたのかみ) – 雅楽寮の長官を意味する官職名。酒井雅楽頭は実在の大名家で、「ウタ」と読むことから三味線の洒落に使われています。
- 検校(けんぎょう) – 盲人の最高位の官職。按摩や琵琶法師などの盲人組織の頂点に立つ地位で、大名に匹敵する待遇を受けることもありました。
- 按摩(あんま) – 江戸時代、按摩は盲人の主要な職業の一つで、体を揉むだけでなく骨格を見る技術も持っていたとされます。
- 部屋住み – 家督を継がない次男以下の子息が、本家で暮らしながら独立せずにいる状態を指します。
- バチ – 三味線を弾く道具(撥)と、悪いことをすると受ける「罰」を掛けた言葉遊びです。
よくある質問(FAQ)
Q: 「三味線栗毛」という名前にはどんな洒落が込められていますか?
A: 「雅楽頭(ウタ)が乗る」「駒(コマ)」「引かせる(弾かせる)」「胴(ドウ)」という三味線に関連する言葉を重ねています。さらにオチの「バチがあたる」は撥と罰の掛け言葉になっています。
Q: 按摩の錦木はなぜ角三郎の出世を予言できたのですか?
A: 落語の中では按摩が骨格を見て運命を読む能力を持つという設定です。実際に江戸時代の按摩は、体に触れることで健康状態だけでなく人相見のような役割も果たしたと言われています。
Q: 検校とはどのくらいの地位だったのですか?
A: 検校は盲人組織の最高位で、大名から扶持を受けることもありました。江戸時代には検校が高利貸しで財を成した例もあり、社会的にも経済的にも高い地位にありました。
名演者による口演
- 桂米朝(三代目) – 人間国宝。上方落語の重鎮として、出世譚と言葉遊びのバランスを見事に演じました。
- 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。按摩の錦木の予言場面に独特の神秘性を持たせた名演。
- 柳家小三治 – 人間国宝。オチの洒落の連発を軽妙に演じ、聴衆を笑わせました。
関連する落語演目
同じく「出世」がテーマの古典落語


言葉遊び・洒落が秀逸な古典落語


武士・大名が登場する古典落語


この噺の魅力と現代への示唆
「三味線栗毛」は、前半の出世物語と後半の洒落の連発という二部構成が見事な噺です。父に疎まれた末っ子が按摩の予言通りに家督を継ぐという展開は、庶民の夢を投影した痛快な物語として楽しめます。
この噺の特徴は、三味線に関連する言葉を次々と重ねる洒落の技巧にあります。「ウタが乗る」「駒」「弾かせる」「胴」と畳みかけ、最後に「バチがあたる」で締めるという構成は、落語の言葉遊びの醍醐味を凝縮しています。
また、約束を守る武士と、それを信じて待ち続けた按摩という信頼関係も、この噺の温かみを生み出しています。


