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【古典落語】三味線鳥 あらすじ・オチ・解説 | 百両の鳥が義太夫節で鳴き出す奇想天外譚

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話芸の殿堂-古典落語-三味線鳥
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三味線鳥

3行でわかるあらすじ

古道具屋の金兵衛が殿様に三味線のように鳴く珍しい鳥を百両で売りつける。
十日経っても全く鳴かず、殿様の怒りを買った家老の三太夫が切腹覚悟で鳥を責める。
三太夫が芝居がかりで「おのれぇ~」と責めると、その義太夫節に反応して鳥が「ちんちん、ちりちり」と鳴き出す。

10行でわかるあらすじとオチ

初音の鼓騒動から時が経ち、古道具屋の金兵衛が再び殿様のもとへやって来る。
今度は三味線のように本調子、二上がり、三下がりと鳴く珍鳥を持参する。
家老の三太夫は前回の件で懲りているが、殿様は性懲りもなく百両で買い上げる。
殿様は鳥が鳴くのを楽しみに待つが、十日経っても全く鳴かない。
怒った殿様は三太夫を責め、金兵衛と示し合わせたのではと疑い、切腹を匂わせる。
三太夫は鳥籠を抱えて退出し、鳥に向かって「なぜ鳴かんのだ」と問い詰める。
「わずか一羽の鳥のために命を捨てるとは」と嘆き、芝居がかった調子になる。
「ご先祖さまに顔向けができようぞ」と義太夫節のような語り口になる。
「おのれぇ~はぁ~なぁ~」と責めた途端、鳥が反応する。
鳥は「ちんちん、ちりちり、ちりりりりん」と三味線のように鳴き出すオチ。

解説

三味線鳥は、「初音の鼓」の続編として演じられることの多い噺です。
初音の鼓では鼓の音を家老自身が「ぽんぽん」と鳴いて騙したのに対し、この噺では本当に鳥が鳴くという展開になっています。
オチの仕組みは、三太夫の芝居がかった語り口が浄瑠璃(義太夫節)の語りになったことで、三味線の伴奏を必要とする義太夫に反応して、三味線鳥が鳴き出したというものです。
「おのれぇ~はぁ~なぁ~」という部分は典型的な義太夫の語り口で、この噺を演じる際は、落語家がここで実際に義太夫調で語ることで、観客に「なるほど、これなら三味線鳥も鳴くはずだ」と納得させる仕掛けになっています。
殿様と古道具屋の騙し合い、家老の苦労という構図は初音の鼓と同じですが、オチの付け方がより洗練されています。

あらすじ

「初音の鼓」の一件のほとぼりがさめる頃、殿さまのところに古道具屋の金兵衛が、また一儲けしようとやって来る。

いつもろくでもない、怪しげな物ばかり持って来る金兵衛に家老の、
三太夫 「今日はちゃんとした物でないと殿さまにお取次はいたさないぞ」

金兵衛 「へぇ、恐れ入ります。殿さまがたいそう小鳥がお好きとお聞きいたしまして、世にも珍しい小鳥を持参いたしました」

三太夫 「なに、道具屋が小鳥とはちと妙じゃが、どんな鳥じゃ」

金兵衛 「あたかも三味線を弾くのとそっくりに本調子、二上がり、三下がり、と鳴く珍しい鳥でございます」

三太夫 「また鳴くのか。
今度は拙者が鳴かないでもよいのであろうな。もう鳴くのは御免だぞ」

金兵衛 「ご冗談を、この鳥が自ら美しい声で鳴きおります」、三太夫は殿さまにこのことを取り次ぐと、なんと殿様、性懲りもなく百両でこの三味線鳥なるものをお買い上げになった。

さて、暇な殿様、座敷に鳥籠をぶら下げて、そばで三味線鳥が鳴くのを楽しみに待っているが、三味線の音どころか、ピィともチィとも鳴かない。
しびれをきらし、業を煮やして、

殿さま 「三日ほどなれば場所に慣れないということもあろうに、今日で十日も過ぎたのに一向に鳴かんではないか。
これ三太夫、その方また道具屋と示し合わせて、よろしくいたしたのであろう。
申し開きがあるなら言うてみよ。ことと次第によっては捨て置かんぞ」と、ご立腹で鳥籠を三太夫の目の前へ放り投げた。

三太夫は恐縮して鳥籠を抱えて殿さまの御前から引き下がって鳥籠を前にして、

三太夫 「その方、なぜ鳴かんのだ。
そのために拙者は切腹を申し受けるやも知れん。
拙者も武士のはしくれ、殿のためお家のため戦場で命を捨てるはいとわねども、わずか一羽の鳥のために命を捨てるとは、(芝居がかりになって)どうしてご先祖さまに顔向けができようぞ。みなその方から起こったこと・・・・おのれぇ~はぁ~なぁ~・・・」、すると鳥籠の鳥が、

「♪ちんちん、ちりちり、ちりりりりん」


落語用語解説

  • 義太夫節(ぎだゆうぶし) – 人形浄瑠璃(文楽)で使われる語り物音楽。三味線の伴奏で太夫が物語を語ります。独特の節回しで知られ、この噺ではそれに反応して鳥が鳴き出します。
  • 本調子・二上がり・三下がり – 三味線の調弦法。本調子は基本の調弦、二上がりは明るく軽快、三下がりは渋く落ち着いた音色になります。
  • 初音の鼓 – この噺の前編にあたる落語。鼓の音を家老が自分で「ぽんぽん」と鳴らして殿様を騙す話。
  • 家老(かろう) – 藩の最高位の家臣。殿様の側近として藩政を取り仕切ります。

よくある質問(FAQ)

Q: なぜ三太夫が義太夫調で語ると鳥が鳴いたのですか?
A: 三太夫が芝居がかって「おのれぇ~はぁ~なぁ~」と語った調子が義太夫節の語りそのものだったため、三味線の伴奏を待ち望んでいた三味線鳥が反応して鳴き出したという仕掛けです。

Q: 「初音の鼓」との関係は?
A: 「三味線鳥」は「初音の鼓」の続編として演じられることが多い作品です。両方とも古道具屋が殿様に珍品を売りつけ、家老が苦労するという構図が共通しています。

Q: 本当に三味線のように鳴く鳥はいるのですか?
A: 落語の中のフィクションです。ただし、インコやオウムなど音を真似る鳥は存在し、江戸時代にも珍鳥として高値で取引されていました。

名演者による口演

  • 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。義太夫の素養を活かした三太夫の語りが見事でした。
  • 古今亭志ん朝(三代目) – 軽妙な語り口で殿様のお人好しぶりと家老の苦悩を対比させました。
  • 柳家小三治 – 人間国宝。三太夫の切羽詰まった様子をリアルに演じました。

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この噺の魅力と現代への示唆

「三味線鳥」は、前編「初音の鼓」と比較すると、オチの仕掛けがより洗練されています。前編では家老自身が鳴き真似をするという単純な騙しでしたが、本作では義太夫節への反応という音楽的な仕掛けが加わっています。

三太夫が切腹覚悟で鳥を責める場面は、芝居好きの江戸っ子にとって見せ場でした。追い詰められた家老が自然と義太夫調になってしまうという設定が絶妙で、それに反応して本当に鳥が鳴くという展開は、聞き手の予想を裏切る見事なオチとなっています。

落語家によっては実際に義太夫の一節を語ることもあり、その技量が問われる噺でもあります。

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