スポンサーリンク

【古典落語】佐々木政談 あらすじ・オチ・解説 | 13歳の天才少年が奉行を頓智で翻弄する痛快劇

スポンサーリンク
話芸の殿堂-古典落語-佐々木政談
スポンサーリンク
スポンサーリンク

佐々木政談

3行でわかるあらすじ

南町奉行・佐々木信濃守がお忍びで見つけた子供のお奉行ごっこで、奉行役の四郎吉の頓智に感心する。
奉行所に呼び出された四郎吉は、お白州での問答で次々と機知に富んだ返答をして奉行や与力を翻弄する。
最後に衝立の仙人の話で「絵に描いたものが物を言うはずがない」と答え、奉行を感心させる。

10行でわかるあらすじとオチ

南町奉行・佐々木信濃守がお忍びで市中見回り中、子供たちのお奉行ごっこを見つける。
奉行役の四郎吉が「一から十まで、つがそろっているか」の喧嘩を「いつつのつを取って十に付ける」と見事に裁く。
感心した奉行は、桶屋の息子・四郎吉と父親を奉行所に呼び出す。
お白州で四郎吉は「砂利の上では位負けする」と奉行の隣に対等に座る。
「空の星の数」を聞かれると「お白州の砂の数が分かるか」と切り返す。
「母と父どちらが好きか」には「二つに割った饅頭、どちらが美味いか」と答える。
与力について聞かれると、起き上がり小法師で「ご威光を笠に着てそっくり返るが、踏んだらすぐつぶれる」と皮肉る。
さらに天保銭を結び付けて「銭のある方に傾く」と与力の心を暴露する。
最後に「衝立の仙人が何を話しているか」と聞かれ、「佐々木信濃守は馬鹿だと言っている」と答える。
しかし続けて「絵に描いてあるものが物を言うはずがない」と頓智で返し、奉行は大笑いして四郎吉を後に近習に取り立てる。

解説

佐々木政談は、江戸時代の名奉行と利発な少年の頓智問答を描いた傑作です。
実在の南町奉行・佐々木信濃守(佐々木顕発)を題材にしていますが、史実とは異なる創作噺です。

この噺の見どころは、13歳の四郎吉が権威に屈せず、機知と頓智で大人たちを翻弄する痛快さにあります。
「いつつのつを取って十に付ける」という言葉遊びから始まり、饅頭の比喩で親への愛情の深さを表現し、起き上がり小法師と天保銭で与力への痛烈な風刺を織り込みます。

最後の「絵に描いたものが物を言うはずがない」というオチは、一見奉行を馬鹿にしているようで、実は自分の知恵を示す見事な論理的帰結です。
奉行が四郎吉の才能を認め取り立てる結末は、身分を超えた才能の評価を描いており、江戸時代の理想的な統治者像を示しています。

あらすじ

江戸南町奉行の佐々木信濃守が、お忍びで市中を見回っていると新橋の竹川町で子供たちが、お奉行ごっこ、お白州ごっこで遊んでいる。
立ち止まって見ているとなんと奉行役の子どもは佐々木信濃守と名乗った。
お調べは「一から十まで、つがそろっているか」でもめた喧嘩口論の裁きだ。

佐々木信濃守ジュニアは「さような些細なことをもって、上に手数をわずらわすは不届きである」と、喧嘩両名を諌めてから、「一から十まで、つはみなそろっておる」、「だって、十つとは申しません」、「黙れ、奉行の申すことに偽りはない。
中で一つ、つを盗んでいる者がある。いつつのつを取って十に付けると、みなそろう」と、なかなかの頓智頓才ぶりで一件落着と相成った。

見ていた佐々木信濃守は感心し、奉行役の子どもと親を町役人付き添いの上、奉行所に出頭させるよう供の者に申しつける。
お奉行ごっこで本物の奉行を邪魔だと竹の棒で追い払ったらしいと町内は大騒ぎだ。

一方、奉行役の子供は桶屋の高田綱五郎のせがれの十三歳になる四郎吉で、綱五郎は突然の奉行所からの呼び出しにびっくりで真っ青だが、四郎吉はいつもと相変わらず、平気の平左でしゃあしゃあとしている。

四郎吉父子は家主と町役人付き添いで南町奉行所へ出頭する。

奉行 「これ四郎吉、これから奉行の言う事に答えられるか」

四郎吉 「お白州の砂利の上では位負けがする。そこに並んで座れば、何でも答えられる」と、奉行の隣に対等に並んだ。

奉行 「空の星の数が分かるか」

四郎吉 「このお白州の砂の数が分かりますか」

奉行は三方に饅頭を乗せ食べてもよいと差出すと、四郎吉はパクついて、おっ母の買ってくれる饅頭よりよっぽど美味いとほおばっている。

奉行 「父親は何をくれる?」

四郎吉 「小言ばかりくれます」

奉行 「饅頭を買ってくれる母親と、いつも小言をくれる父親とどちらが好きか?」

四郎吉 「二つに割った饅頭、どちらが美味いと思いますか?」で、また一本取られた。

奉行 「四角くても三方とは?」

四郎吉 「一人でも与力と言うが如し」

奉行 「では、与力の身分を存じておるか?」

四郎吉は懐(ふところ)から起き上り小法師を取り出して、「これです。
身分は軽いが、御上のご威光を笠に着てピンシャンピンシャンとそっくり返っています。そのくせ踏んだらじきにつぶれる、腰の弱い者です」、いきなり横っ面を引っぱたかれたようで与力たちは下を向いてしまった。

奉行 「それでは与力の心はどうか」

四郎吉は天保銭を借りて、起き上り小法師にくくりつけて放り出した。「銭のある方に傾きます」、とんだすっぱ抜きを喰らって与力たちは青くなったり、赤くなったりまるで七面鳥だ。

奉行 「衝立に描かれた仙人が何を話しているか聞いて参れ」

四郎吉 「へい、聞いてまいりました、佐々木信濃守は馬鹿だと言ってます。絵に描いてあるものが物を言うはずがないって」、四郎吉に何本も取られあげくの果ては馬鹿呼ばわりされた佐々木信濃守は大笑い。

四郎吉が十五になると近習に取り立てたという、「佐々木政談」の一席。


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 佐々木信濃守(ささきしなののかみ) – 佐々木顕発(1810-1872)。江戸時代後期に南町奉行を務めた実在の人物。この噺は史実に基づいた創作です。
  • お白州(おしらす) – 奉行所の法廷。白い砂が敷かれていたことからこの名で呼ばれ、訴訟を受ける者は砂の上に座らされました。
  • 与力(よりき) – 奉行所で奉行を補佐する役職。同心の上役にあたり、町奉行所では重要な役割を担っていました。
  • 三方(さんぽう) – 神前や高貴な人への献上に使う台。この噺では饅頭を乗せて四郎吉に差し出されます。
  • 起き上がり小法師 – 倒してもすぐに起き上がるおもちゃ。四郎吉が与力の性格を表現するのに使います。
  • 天保銭(てんぽうせん) – 天保通宝とも呼ばれる江戸時代の銭貨。四郎吉が与力の賄賂好きを表現するのに使います。
  • 近習(きんじゅう) – 主君の身近に仕える役職。四郎吉が成長後に取り立てられる役目です。

よくある質問(FAQ)

Q: 「いつつのつを取って十に付ける」とはどういう意味ですか?
A: 「一つ(ひとつ)」「二つ(ふたつ)」「三つ(みっつ)」と数えると、すべてに「つ」が付きますが、「十」には「つ」がありません。そこで「五つ(いつつ)」の「つ」を取って「十」に付ければ「十つ(とおつ)」となり、すべて揃うという言葉遊びです。

Q: 饅頭の比喩はどういう意味ですか?
A: 「父と母どちらが好きか」という難問に対し、「二つに割った饅頭、どちらが美味いか」と答えることで、どちらも同じように大切で選べないという意味を表現しています。

Q: 与力への皮肉は強すぎませんか?
A: 落語では権威への風刺がよく見られます。起き上がり小法師で「ご威光を笠に着てそっくり返るが踏んだらつぶれる」、天保銭で「銭のある方に傾く」という皮肉は、庶民の目から見た役人への批判を代弁しています。

Q: オチの「絵に描いたものが物を言うはずがない」は何がすごいのですか?
A: 奉行が「衝立の仙人が何を話しているか聞いてこい」と命じたのに対し、四郎吉は「佐々木信濃守は馬鹿だと言っている」と答えます。一見無礼ですが、「絵に描いたものが物を言うはずがない」と続けることで、「そんな質問をする方が馬鹿だ」という論理的な帰結を示しています。

Q: 現代でも演じられていますか?
A: はい、頓智噺の代表作として現在も多くの落語家によって演じられています。権威に屈しない少年の姿は、時代を超えて痛快な笑いを誘います。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 三遊亭圓生(六代目) – 昭和の名人。四郎吉の聡明さと奉行のやり取りを、品格を保ちながら演じました。
  • 古今亭志ん朝(三代目) – 江戸前の粋な語り口で、少年の機転と大人の反応を活き活きと描きました。
  • 柳家小さん(五代目) – 人間国宝。庶民的な温かみで四郎吉の愛嬌ある姿を表現しました。
  • 春風亭柳枝(八代目) – 威厳ある奉行と生意気な少年の対比が見事な高座でした。

関連する落語演目

同じく「頓智・機転」がテーマの古典落語

三方一両損 落語|あらすじ・オチ「たった一膳(越前)」意味を完全解説
【5分でわかる】三方一両損のあらすじとオチを完全解説。大岡越前の粋な裁きで三人とも一両ずつ損。「たった一膳(越前)」の意味とは?
転失気 落語|あらすじ・オチ「ブウブウ文句を言う」意味を完全解説【知ったかぶり】
【5分でわかる】転失気のあらすじとオチを完全解説。知ったかぶりの和尚が「転失気(屁)」を盃と勘違いして大恥。「ブウブウ文句を言う」の意味とは?
千早振る 落語|あらすじ・オチ「そのくらい負けておけ」意味を完全解説
古典落語「千早振る」のあらすじとオチを解説。娘から百人一首の「千早ふる」の意味を聞かれた金さんが、横町の自称物知りの隠居に教えてもらいに行く。隠居が龍田川という相撲取りと千早太夫の悲恋物語として無理やり解釈し、最後の『とは』を聞かれると『そのくらい負けておけ』と武切な答えで誤魔化したオチが絶妙な長屋噺をお伝えします。

「奉行・裁き」が登場する古典落語

三方一両損 落語|あらすじ・オチ「たった一膳(越前)」意味を完全解説
【5分でわかる】三方一両損のあらすじとオチを完全解説。大岡越前の粋な裁きで三人とも一両ずつ損。「たった一膳(越前)」の意味とは?
井戸の茶碗 落語|あらすじ・オチ「また小判が出るといけない」意味を完全解説
【5分でわかる】井戸の茶碗のあらすじとオチを完全解説。正直者たちが織りなす美談から名器発見と縁談成立まで。「また小判が出るといけない」の意味とは?
【古典落語】天狗裁き あらすじ・オチ・解説 | 見てない夢で拷問から天狗も聞きたがる夢オチ傑作
古典落語「天狗裁き」のあらすじとオチを解説。夢を見ていないと主張する喜八が次々と夢の話を聞きたがられ、天狗に助けられるも天狗も夢を聞きたがり、最後は全てが夢だったという二重の夢オチの名作。

「子供」が活躍する古典落語

【古典落語】真田小僧 あらすじ・オチ・解説 | ずる賢い子供と騙される父親の滑稽噺
真田小僧は、賢い子供・亀坊が父親から小遣いを巧みにせしめる古典落語。留守中の訪問者話で父を焦らせ、真田幸村の六連銭から銭を持ち逃げし、薩摩(焼き芋)への落ちで締める名作。
初天神 落語|あらすじ・オチ「蜜つぼにドボン」意味を完全解説
【5分でわかる】初天神のあらすじとオチを完全解説。父親と息子・金坊の初天神参り。「蜜つぼにドボン」オチの意味とは?親子の絆を描いた古典落語の代表作。
薮入り 落語のあらすじとオチを解説|「ちゅう(忠)のおかげ」親子愛と疑心の人情噺
落語「薮入り」のあらすじとオチ「ちゅう(忠)のおかげ」を完全解説。三年ぶりの薮入りで帰省した息子を大金が原因で疑ってしまう父親の心情。江戸時代の奉公制度やペスト流行時のネズミ捕り懸賞の背景、名演者の口演スタイルまで詳しく紹介します。

この噺の魅力と現代への示唆

「佐々木政談」の魅力は、13歳の少年が権威に屈せず、機知と頓智で大人たちを翻弄する痛快さにあります。お白州で「砂利の上では位負けする」と言って奉行の隣に座る四郎吉の姿は、形式にとらわれない自由な発想を示しています。

現代社会でも、肩書きや権威に萎縮してしまうことは多いもの。しかし四郎吉は、奉行という最高権力者の前でも臆せず自分の考えを述べます。この姿勢は、面接や会議など、権威のある人と向き合う場面でも参考になるかもしれません。

また、与力への痛烈な風刺は、権力者の腐敗を庶民の目から批判するものです。「ご威光を笠に着てそっくり返る」「銭のある方に傾く」という描写は、現代の汚職問題にも通じる普遍的な人間の弱さを指摘しています。

最後に奉行が四郎吉の才能を認めて取り立てるという結末は、身分を超えた才能の評価という理想を描いています。権威を笑い飛ばしながらも、最終的には和解する。この落語らしい大団円も、この噺の魅力の一つです。

実際の高座では、四郎吉の生意気さと聡明さの塩梅、与力たちの狼狽する様子が見どころです。機会があれば、ぜひ生の落語会や動画配信でお楽しみください。


関連記事もお読みください

タイトルとURLをコピーしました