算段の平兵衛
3行でわかるあらすじ
算段上手の平兵衛が金に困り、妻のお花を使って元庄屋に美人局を仕掛けるが、誤って殺してしまう。
死体を首吊り、盆踊り、崖落ちと三度も「殺し」て、その度に始末料をせしめる悪知恵を働かせる。
五十両を手にして安泰かと思いきや、按摩の徳之市に弱みを握られて金をむしり取られることになる。
10行でわかるあらすじとオチ
知恵者で有名な算段の平兵衛は、庄屋の妾だったお花を譲り受けて女房にしたが金が底をつく。
苦し紛れにお花を餌に美人局を仕掛け、庄屋を間男に仕立てて金を巻き上げようと企む。
計画通り庄屋を誘い込み「間男だ!」と殴ったら、誤って殺してしまった。
平兵衛は庄屋の死体を家に運び、奥さんの「首でも吊って死になはれ」という言葉を利用して首吊り死体にする。
奥さんから始末料二十五両を受け取ると、今度は死体に浴衣を着せて隣村の盆踊りに紛れ込ませる。
死体を蹴飛ばしていた隣村の人々は、自分たちが殺したと勘違いして平兵衛に始末を頼み、また二十五両。
平兵衛は皆で酒を飲んでいる最中に庄屋が崖から落ちたという筋書きを作り、一件落着させる。
五十両を手にした平兵衛だが、按摩の徳之市が何か嗅ぎつけたようで金をせびりに来るようになる。
村人たちは「算段の平兵衛が按摩に金をむしられている」と噂し始める。
「相手は算段の平兵衛だから徳は酷い目に遭うぞ」「いや、盲蛇(めくらへび)に怖じずだ」というオチ。
解説
「算段の平兵衛」は、知恵者が悪知恵を働かせて金を騙し取る痛快な噺ですが、最後には因果応報で弱みを握られるという教訓も含んでいます。一人の死体を三度も「殺す」という奇想天外な展開が見どころで、首吊り、盆踊り、崖落ちと死因を変えていく平兵衛の算段の巧みさが笑いを誘います。
オチの「盲蛇に怖じず」は、「盲(めくら)」と「盲蛇(めくらへび)」を掛けた地口オチです。盲蛇は実在する目の退化したヘビで、「盲蛇に怖じず」は「何も恐れない」という意味のことわざです。按摩(盲人)の徳之市と、恐れ知らずという意味を掛けて、算段の平兵衛でさえも手を焼く存在として描いています。
この噺は悪事を重ねる平兵衛の痛快さと、最後に報いを受ける因果応報の構造が絶妙で、江戸時代の庶民の「悪賢い奴も最後には痛い目を見る」という願望を満たす作品となっています。
あらすじ
どんなもめ事、厄介事、無理難題でも知恵を働かして上手く収めてしまう、人呼んで「算段の平兵衛」。
村の庄屋から妾だったお花を手切れ金つきで譲り受け女房にする。
この金で遊び暮らしていたが、ついには底をついてしまう。
こうなると弱り目に祟り目で得意の算段も上手く行かず、切羽詰ってしまう。
苦し紛れに頼るのはやっぱり自分の算段しかなく、お花を餌に美人局、庄屋を間男にして一稼ぎしようと算段する。「そんなこと、ようやらんで」と渋っていたお花も背に腹は代えられず、計画に加担する。
早速、お花は隣村から帰って来た庄屋を、平兵衛は留守と言って家に中に誘い込む。
お花は平兵衛の悪口を言い酒を勧める。
庄屋も奥さんから比べれば、若くて月とスッポンの器量よしのお花に未練たっぷりで、すっかり鼻の下を伸ばし、手もお花の体に伸ばし始めた。
チャンス到来と平兵衛は隣の部屋から飛び出し「間男見つけた!」と庄屋をバァーンとどついた。
なんと倒れた庄屋の息は止まっている。
思わぬ展開に取り乱したお花をなだめ、平兵衛はあわてず騒がず本領の算段の見せ所だ。
夜になって平兵衛は庄屋の死骸をかつぎ庄屋宅へ行き、庄屋の声色で「わしじゃ、平兵衛の所へ寄っていた」と言うと、中から奥さんが、お花と会っていたのだろうとやきもちを焼き、「首でもくくって死になはれ」。
これを聞いた平兵衛、いいことを言ってくれた、これ幸いにと庄屋の帯をほどいてそば松の木に引っ掛け、首を吊るして帰って行った。
急に静かになって何だろうと戸を開けてびっくりした奥さん。
どうしたものかと考えた末に頼りにするのは平兵衛しかいない。
夜中に相談に来た奥さんに、首吊り死体の算段はできないと一応は断るが、二十五両の始末金を出すと言うのでもちろんOKだ。
隣村では毎晩、盆踊りの稽古をしている。
庄屋に浴衣を着せ、顔にも薄化粧をさせ、夜陰に紛れて平兵衛は死骸を踊らせ、踊りの中に置き去りにしてとんずらした。
庄屋の死骸とは知らずに邪魔くさいので足で蹴ったり、踏んだりして踊っていた隣村の連中は死骸を見つけ、自分たちが殺したと思ってしまう。
あわてた連中は、表沙汰になれば村が敵同士になってややこしくなる。
そこで考えるのはお手軽な平兵衛だ。
村の隠居から二十五両を借りて平兵衛の家に向かった。
むろん平兵衛は隣村の連中が相談に来ることは、とうにお見通しの計算済みだ。
もったいぶって殺しの始末の算段などは出来ないと突っぱねるが、二つの村が仇同士になってはことだと算段を承知する。
上手くまとめて二十五両は濡れ手で粟という寸法だ。
平兵衛は庄屋の死骸を、崖際の一本松まで持って行かせ、連中が庄屋と一緒に一杯呑みながら騒いでいるうちに、崖から足を滑らせ転がり落ちたという算段をする。
隣村の連中と計画を実行し、すぐに庄屋の奥さんを呼んで崖下の死骸に対面させた。
庄屋が死んでいることは知っている奥さんは今さら何も言うこともなく、無事に一件落着の運びとなった。
浮かばれないのは庄屋だろう。
平兵衛にどつかれて殺され、隣村の連中に踏んだり蹴ったりされ、挙げ句の果て崖から突き落とされて三度も死んだことになるのだから。
五十両もの大金を悪賢い算段でつかんだ平兵衛は昼間から酒を飲んでご機嫌だ。
そこへ按摩の徳之市がやって来て、煙草銭を融通くれとねだる。
どうも徳之市は目は見えなくとも、何か嗅ぎ付けたようような口ぶりでねちこくせまる。
仕方なく平兵衛はいくらかの銭を徳之市に与える。
案の定、四、五日立つと徳之市はまた金をせびりにくる。
これを繰り返しているうちに近所の連中も気づき始めた。
按摩の徳がしょちゅう平兵衛から金をせびって、むしり取っている。
きっと平兵衛の痛い所を握ってるに違いない。
上には上があるものだと噂し合っている。
村人① 「何を握ってるか知らんけども、相手は算段の平兵衛や、終いにはどえらい目に遭いよるで」
村人② 「 さぁ、そこが盲平兵衛(盲蛇)に怖じずやがな」
落語用語解説
- 算段(さんだん) – 計画や策略を立てること。知恵を働かせてうまく物事を運ぶこと。
- 美人局(つつもたせ) – 妻や愛人を使って男を誘惑し、現場を押さえて金品を脅し取る詐欺行為。
- 按摩(あんま) – マッサージを生業とする職業。江戸時代は盲人が従事することが多かった。
- 盲蛇に怖じず(めくらへびにおじず) – 盲目のヘビ(実在する種)が何も恐れないように、無知で向こう見ずなこと。按摩の「盲(めくら)」と掛けたオチ。
名演者による口演
- 桂米朝(三代目) – 人間国宝。平兵衛の悪知恵と因果応報を見事に演じました。
- 桂枝雀(二代目) – エネルギッシュな演技で、死体を三度殺す展開を迫力満点に描きました。
- 桂ざこば(二代目) – 豪快な語り口で、平兵衛の悪賢さと最後の報いを痛快に演じます。
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