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【古典落語】真田山 あらすじ・オチ・解説 | 幽霊が抱きしめたかった骨肉の情

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話芸の殿堂-古典落語-真田山
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真田山

3行でわかるあらすじ

引っ越し先に幽霊が出て困った喜六が、友人の清八に相談する。
幽霊が「虎の子の金」を掘り出してくれと頼むので、二人で真田幸村の軍用金だと期待して掘り出す。
しかし出てきたのは「お寅」の子「お兼」の骨で、「骨折り損」のオチとなる。

10行でわかるあらすじとオチ

宿替えした喜六の新居に、年配の女の幽霊が毎晩現れる。
清八に相談すると、幽霊の嫁にすれば便利だと冗談を言われる。
喜六が幽霊に理由を尋ねると「虎の子の金を出してくれ」と頼まれる。
三光神社の裏の松の木の根元に埋めてあると聞き、清八は推理する。
真田幸村が大阪落城時に埋めた軍用金に違いないと考えた二人。
夜中に境内へ忍び込み、松の木の根元を掘り始める。
やがて壺が見つかり、金の隠し場所の地図だと期待して封印を開ける。
すると白髪の老婆の幽霊が現れ「これが虎の子の金」と言う。
壺の中身は骨で、幽霊の名は「お寅」、骨は娘の「お兼」のものだった。
期待外れの二人、喜六が「これがほんまの骨折り損やなぁ」とオチをつける。

解説

真田山は大阪の上町台地にある地名で、真田幸村ゆかりの地として知られる。
この落語は怪談噺として始まりながら、最後は人情噺に転じる構成が巧みである。
「虎の子の金」という言葉の取り違えが話の核心で、「虎の子」は大切なものを意味する慣用句。
清八と喜六のコンビは大阪落語の定番で、利口な清八とお人好しの喜六の掛け合いが見どころ。
オチの「骨折り損」は、文字通り骨を掘り出した苦労が無駄だったことと、慣用句をかけた言葉遊び。
母親の霊が子供の遺骨を抱きたがる場面は、怪談でありながら母の情愛を描いた人情噺でもある。

あらすじ

宿替えした喜六が浮かない顔してやって来る。
清八 「宿替えした家どないしたんか」

喜六 「出んのです。幽霊が」

清八 「幽霊か、オモロイなぁ、 おら幽霊ちゅうもん見たことないわ。で、その幽霊は男か女か?」

喜六 「女ですねん」

清八 「女の幽霊ならなおさら結構やないか。
それ嫁はんにせえや。
幽霊の嫁はん便利でええぞ。
昼間出てけへんからうるそうなくて気楽だし、いつも同じ格好で着物も買わへん、頭も結やへんし、飯も食いよらへん。その幽霊かかあにしいな」

喜六 「そない言うけど、この幽霊わいよりだいぶ年上やねん」

清八 「幽霊に年なんかあるんか。いくつぐらいなんや」

喜六 「そやな、年はよう分からんけど、わてのおふくろと同じぐらいやろか」

清八 「お前、その幽霊に恨まれて出られるよな悪いことしたんと違うか?」

喜六 「わい、そんなことしてへん。そやさかい夕べ幽霊に、"何で毎晩出て来るんや"って聞いたんや」

清八 「へえ、お前いい度胸してるな。
アホは蛇に怖じずちゅうけど、ほんまやなあ。ほな幽霊何ちゅうた?」

喜六 「そしたら幽霊嬉しそうにわいの顔見てな"あのぉ、トラの子のカネを出してくれ"と、言うねん」

清八 「"虎の子の金"? そんな金、お前預かってんのかいな?」

喜六 「わいそんな預かってへんもん、どないして出せちゅうねんと聞いたんや。そしたら幽霊が三光さんのお宮の裏の松の木の根元に埋めてあるので掘ってくれ言いよんねん」

清八 「分かった。
あのへんは真田山と言うて、大阪落城の時に真田幸村があのへんまで落ちのびて、豊臣の再興を期して軍用金をどっさり埋めたんや。それを知っている腰元なんかが金に思いが残って浮かばれずに幽霊になってお前のところへ出て来るちゅうことや」と、清八にしては名推理。

喜六 「たいした金やろな」

清八 「そりゃそうや、小判か大判、金の延べ棒かも知れん。よっしゃ、その金二人で掘り出したろ」

喜六 「掘り出して幽霊にやるんか?」

清八 「アホかお前は。
幽霊にお足は要らんねん。
金の顔さえ見たら安心して成仏しよるがな。金は二人で山分けに決まってるやがな」

二人は夜を待って三光神社の境内へ行って裏の松の木の根元を掘り出した。
しばらくして、
清八 「おお、当たった。コツッちゅうたやろ、あとは手で、手で掘れ・・・壺や、壺や!」

喜六 「わいも、昔から軍用金なんか壺に入れて埋めた言うのんよお聞くわ」

清八 「どや重たいか?」

喜六 「軽いで、やけに軽いで」

清八 「そうか、ここにじかに金が入ってるわけやないねん。
金の隠し場所の絵図面かなんかが入ったるのんやろ。よーし、開けて見よか」と、封印の油紙をゆっくりはがしにかかると、生暖かい風フワ~ッと吹いて来て、白髪の老婆がすう~っと現れ、「トラの子のカネ・・・」

清八 「こら、ちょっと待て幽霊、お前この男に掘り出してくれちゅうて頼んだから掘り出してやったんや。金のツラ見たら安心するやろ、見て安心したらさっさと去(い)んで成仏してくれ」

幽霊 「いやや、この手で抱きたい」

清八 「抱いて見たかてどうにもならんやろ。
まあ、ええわ見たら安心するやろ。喜イ公、フタ開けて見いや」で、フタを開けると、

喜六 「あれ、清やん、これ金と違うがな。何やら・・・骨や、骨が入ったる!」

清八 「ほんまや、おい幽霊、金も小判も入ってへんやないか、骨が入っとるやんか」

幽霊 「それがトラの子のカネ、わたしの名前が「お寅」。
わたしの子どもの「お兼」が死んで、これがその骨でおます」

清八 「なにい~!お寅の子のお兼ぇ~、こら、喜イ公、ドジ、ボケ、カス、アホ、虎の子の金と違うねや、寅の子の兼やないかいな。・・・あ~あ、どっと疲れが出よったがな」

幽霊 「この手で抱きたい」

清八 「抱け、抱け!勝手に抱いてどこへでも去んでさらせ。誰が要るかい、そんなもん」、幽霊は嬉しそうにお兼の骨を抱き上げて、ニコニコニ・・・。

喜六 「おお、恐わ、清やん、これがほんまの骨折り損やなぁ」


落語用語解説

  • 真田山(さなだやま) – 大阪市天王寺区にある地名。真田幸村ゆかりの地として知られ、三光神社があります。大坂の陣で真田幸村が活躍した場所として伝承されています。
  • 三光神社(さんこうじんじゃ) – 真田山にある神社。真田幸村が大坂城から抜け穴を掘ったという伝説が残り、境内にその跡があります。
  • 虎の子(とらのこ) – 大切にしているもの、手放したくない貴重なものを指す慣用句。母親にとって子供は何より大切な「虎の子」でした。
  • 骨折り損(ほねおりぞん) – 苦労して努力したのに報われないこと。文字通り「骨を掘り出す苦労」と慣用句を掛けたオチになっています。
  • 喜六と清八(きろくとせいはち) – 上方落語の定番コンビ。喜六は愚かで素直、清八は利口で常識人として描かれます。

よくある質問(FAQ)

Q: 真田幸村は本当に真田山に軍用金を埋めたのですか?
A: これは伝説であり、史実ではありません。大坂城落城後、真田幸村が財宝を埋めたという話は各地に残っていますが、確証はありません。この噺はその伝説を利用した創作です。

Q: なぜ母親の霊は子供の骨を抱きたがったのですか?
A: 江戸時代は子供の死亡率が高く、親が子を看取ることも多くありました。母親の霊は、生前に抱けなかった我が子を死後も抱きたいという情愛から現れたのです。怪談でありながら人情噺の要素が入っています。

Q: 「お寅の子のお兼」はなぜ「虎の子の金」と聞こえたのですか?
A: 「お寅(おとら)の子(こ)のお兼(おかね)」を続けて言うと「とらのこのかね」となり、「虎の子の金(かね)」と聞き間違えやすい言葉遊びです。このダジャレがこの噺の核心になっています。

名演者による口演

  • 桂米朝(三代目) – 人間国宝。怪談要素と人情要素のバランスを見事に表現し、母親の情愛を温かく描きました。
  • 桂枝雀(二代目) – エネルギッシュな演技で、喜六と清八のやり取りをコミカルに描き、オチの「骨折り損」を鮮やかに決めます。
  • 桂ざこば(二代目) – 豪快な語り口で、金への期待と失望の落差を大きく表現します。
  • 桂文枝(六代目) – テンポの良い語り口で、怪談から人情噺への転換を自然に演じます。

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この噺の魅力と現代への示唆

「真田山」は、怪談噺でありながら母子の情愛を描いた名作です。「虎の子の金」という言葉の取り違えから始まる展開は、言葉遊びの妙と人間の欲望を巧みに描いています。最後に母親の霊が子供の骨を抱く場面は、怪談の恐怖を超えて母の愛情の深さを感じさせます。

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