【時事落語】プール給水栓物語(新作落語)
皆さん、本日ニュースで話題になった川崎市の小学校での出来事、ご存知でしょうか?
プールの給水栓を閉め忘れて、なんと167トンもの水を流出させてしまったという事故。15時間も水が流れっぱなしだったそうです。
「うっかりミス」で済ませるには、ちょっと大きすぎる失敗ですよね。でも人間誰しも、そういう「やっちゃった!」という経験はあるもの。
今回は、この現代の水騒動を江戸時代の銭湯に置き換えてみました。ただの失敗談かと思いきや、最後にはアッと驚く展開が待っています。水は流れるところに流れる、そんな不思議なお話です。
銭湯の番台
えー、毎度おおきに。
最近の若いもんは、ホンマに注意力が足らんなぁ思いますわ。
マニュアルは読まへん、確認はせえへん、ほんでから後になって「すんまへん」の一点張り。
昔かて、そういうことはありましたけどな、せやけど今みたいに大事にはならへんかった。
なんでかいうたら、みんなで見張っとったからや。
神田の湯屋騒動
神田に「松の湯」いう立派な銭湯がありましてな。
番頭の源さんは、もう二十年もここで働いとる真面目一筋の男や。
ある日のこと、源さんが湯船の水を入れ替える作業をしとったんですわ。
源さん「よっしゃ、今日も綺麗な湯ぁ入れて、お客さんに喜んでもらお」
朝の五時から水を抜いて、掃除して、新しい水を入れる。
これがまた重労働でんねん。
運命の朝
その日は特に暑うて、源さんも汗だくになりながら作業しとった。
源さん「ふぅ、暑いなぁ。水栓開けたし、あとは勝手に溜まるやろ」
ほんで、ちょっと休憩しよ思て、裏の縁側で一服。
そのまま、うとうとと居眠りしてもうたんですわ。
三時間後
近所の八っつぁん「おい!源さん!えらいことや!」
源さん「はっ!わ、わいどないしたん?」
八っつぁん「どないもこないも、表見てみぃ!」
水の海
表へ出てみると、もう辺り一面が水浸しや。
道という道が川みたいになって、向かいの豆腐屋も、隣の蕎麦屋も、みんな水につかっとる。
豆腐屋の親父「源さん!うちの豆腐が全部流れてもうたがな!」
蕎麦屋の女将「うちの蕎麦粉も台無しや!」
源さん「す、すんまへん!水栓閉め忘れて…」
大家さんも飛んできた。
大家「源さん、これどないすんねん!水道代だけでも、とんでもない金額になるで!」
弁償問題
源さん、青くなってもうて。
源さん「せ、せやけど、そんな大金、わいには…」
大家「知らんがな!お前の不注意やろ!」
そこへ、銭湯の主人の旦那はんが来はった。
旦那「源さん、ちょっと奥へ」
源さん「旦那はん、ホンマにすんまへん。首にしてもらても…」
旦那「まあまあ、そう慌てんと」
三日後の奇跡
それから三日ほど経った朝のことや。
八っつぁん「源さん!源さん!また大変や!」
源さん「今度は何や…もう勘弁してぇな」
八っつぁん「違う違う!ええことや!」
なんと、水が流れた跡から、温泉が湧き出てきたんですわ。
それも、めっちゃええ湯ぁで、神経痛にも効くし、肌もつるつるになる。
温泉ブーム
噂はあっという間に江戸中に広まって、松の湯は大繁盛。
豆腐屋の親父「源さん、この前は悪かったな。おかげで客が増えて、豆腐も飛ぶように売れるわ」
蕎麦屋の女将「うちも温泉帰りの客でいっぱいや」
大家「いやー、地代も上げられるし、ええことずくめやな」
みんな手のひら返したように、源さんに感謝しとる。
源さん「いや、わいは別に…ただの閉め忘れで…」
真実の告白
そこへ旦那はんが、にやにやしながら来はった。
旦那「源さん、みんなに本当のこと言うてもええか?」
源さん「え?本当のことって…」
旦那「実はな、前から地質調査の先生に頼まれとってん」
みんな「なんやて?」
旦那「この辺に温泉脈があるはずやから、大量の水を流して地下水の流れを変えてみぃって」
源さん「ほな、わいの閉め忘れは…」
旦那「計画通りや」
みんな「ええーっ!」
旦那「源さんには悪いけど、閉め忘れたことにしといてもろた」
源さん「せやけど旦那はん、それやったら最初から言うてくれたら…」
旦那「そしたら自然な水の流れにならへんやろ?」
オチ
大家「ほな、水道代の請求書は?」
旦那「それも計画のうちや。領収書は経費で落とすから」
源さん「旦那はん、ひどいですわ。わい、三日三晩眠れへんかったんですよ」
旦那「すまんすまん。お詫びに給金三倍にするわ」
源さん「ホンマですか!」
旦那「その代わり…」
源さん「その代わり?」
旦那「今度は、ガス栓の閉め忘れ頼むわ」
まとめ
いかがでしたか?まさか計画的な「閉め忘れ」だったとは…。
実際の事故は本当にうっかりミスでしょうけど、落語の世界では全てが計算ずくという逆転の発想も面白いですよね。
今回の落語、自己採点するなら75点くらいでしょうか。もうちょっと源さんの慌てぶりを描写できればよかったかも。
でも、水が流れて温泉が湧くという展開は、まさに「災い転じて福となす」。現実でもこんな奇跡が起きたら…なんて考えちゃいますね。
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※この作品は完全なフィクションであり、実在の事故や人物とは一切関係ありません。創作落語としてお楽しみください。


