パチンコ店恋愛
現代の庶民の娯楽といえば、パチンコもその一つですが、そこには様々な人間模様が展開されています。
特にギャンブル中毒者同士が恋に落ちるなんて、なんとも現代らしい皮肉な話です。
今回は、そんなパチンコ店で出会った男女の奇妙な恋愛模様を新作落語にしてみました。
ギャンブルと恋愛、どちらも中毒性があるという共通点を活かした、現代的で皮肉な人情噺をお楽しみください。
まくら
パチンコ店というのは、夢と現実が交錯する不思議な空間です。
そこには勝利への期待と、負けることの絶望が同居しています。
そんな極端な感情が渦巻く場所だからこそ、時として人間の本性が現れることがあります。
今日は、そんなパチンコ店で起こった恋愛事件を覗いてみましょう。
あらすじ
平成 10 年、東京郊外のパチンコ店「大当り王国」。
毎日通い詰めるサラリーマンの山田太郎(仮)と、同じく常連の OL 佐藤花子(仮)。
二人はいつも隣り合った台で打っているうちに、次第に親しくなっていく。
午後 2 時、山田が「海物語」の台に座ると、隣の台に花子がやってくる。二人はもう 1 ヶ月もこの配置で打ち続けている。
【毎日の習慣】
山田が台に千円札を入れながら、隣の花子にちらりと視線を向ける。
山田「今日も来ましたね」
花子「はい、お疲れ様です」
二人は挨拶をしながらも、視線は台の液晶画面に釘付けになっている。
山田「昨日は惜しかったですね。あと一回転でリーチだったのに」
花子「見てたんですか?私のこと」
山田は慌てて弁解する。
山田「いや、たまたま目に入っただけで…」
玉の音が響く中、二人の会話が続く。
【共通の趣味】
数日後、二人は休憩室で缶コーヒーを飲みながら話している。
花子「山田さんって、毎日来てますよね」
山田「花子さんもでしょう?」
花子「仕事帰りに寄ってしまうんです。ストレス発散で」
山田「分かります。僕も同じです。家に帰ってもやることないし」
二人は苦笑いを浮かべながら、お互いの境遇に共感している。
花子「でも、勝てないんですよね…」
山田「僕も今月はもう 5 万負けてます」
【お金の話】
山田「花子さんは今月どのくらい?」
花子「聞かないでください…7 万です」
二人は顔を見合わせて、ため息をつく。
山田「合わせて 12 万ですか…」
花子「新車の頭金になりますね」
山田「海外旅行にも行けますね」
しかし、二人ともパチンコをやめる気配は全くない。
花子「でも、やめられないんですよね」
山田「大当たりした時の快感が忘れられなくて…」
【恋の始まり】
ある日、山田が大当たりを引いた時、思わず隣の花子に報告する。
山田「やりました!確変です!」
花子「おめでとうございます!良かったですね!」
花子が本当に嬉しそうに拍手してくれる姿を見て、山田は胸がときめく。
山田「(内心)こんなに喜んでくれる人、初めてだ…」
翌日も山田が当たると、花子がまた一緒に喜んでくれる。
花子「昨日に続いて今日も!すごいですね!」
山田「花子さんも当たりますよ、きっと」
【デートの提案】
数日後、二人とも負けが続いている時、山田が勇気を出して提案する。
山田「あの…今度一緒に他の店に行ってみませんか?」
花子「他の店?」
山田「遠征です。違う店なら流れが変わるかもしれません」
花子は目を輝かせる。
花子「いいですね!どこに行きましょう?」
山田「隣町の『夢ランド』はどうでしょう?」
二人の初デートはパチンコ店である。
【遠征デート】
翌週の日曜日、二人は隣町のパチンコ店に向かう。電車の中でも話題はパチンコのことばかり。
山田「あの店は甘釘って噂ですよ」
花子「本当ですか?楽しみです」
店に着くと、二人は隣り合った台に座る。いつもと違う環境で、少し緊張している。
花子「新しい台ですね」
山田「設定も良さそうです」
しかし、結果は散々。二人とも 1 万円ずつ負ける。
【慰め合い】
帰りの電車で、二人は肩を落としている。
花子「だめでしたね…」
山田「すみません、僕が誘ったばっかりに…」
花子「いえ、私も行きたかったんです」
山田「でも、一緒に負けると、なんだか悔しさも半分になりますね」
花子「本当ですね。一人で負けるより寂しくないです」
二人は微笑み合う。
【プロポーズ?】
数ヶ月後、二人の関係は深まっていた。ある日、山田が大当たりした時、興奮して花子に言う。
山田「花子さん!僕と一緒になりませんか?」
花子「え?プロポーズですか?」
山田は慌てる。
山田「いや、その…一緒にパチンコを打ちませんかって意味で…」
花子「紛らわしいじゃないですか」
しかし、花子も満更ではない様子。
【結婚の条件】
花子「でも、もし結婚するなら条件があります」
山田「条件?」
花子「パチンコは週 3 回まで」
山田「週 3 回?毎日じゃダメですか?」
花子「ダメです。家計が破綻します」
山田「分かりました…でも、大当たりした時は追加で打っていいですか?」
花子「それじゃあ意味ないじゃないですか」
【最後の大勝負】
山田「じゃあ、今日で最後にしましょう」
花子「最後?」
山田「今日勝ったら結婚資金、負けたら諦めます」
二人は手に汗握りながらレバーを引く。そして…
山田「大当たり!」
花子「私も大当たり!」
二人は抱き合って喜ぶ。
山田「これで結婚できますね!」
花子「でも、この調子だとパチンコもやめられませんね」
山田「それもそうだ…結婚してもパチンコ店でデートか!」
まとめ
パチンコ店で出会った男女の奇妙な恋愛模様、いかがでしたでしょうか。
山田太郎さんと佐藤花子さんの共通点は、パチンコ中毒ということだけでした。
でも、その共通点があったからこそ、お互いを理解し合えたのかもしれませんね。
最後の「結婚してもパチンコ店でデート」というオチには、現代らしい皮肉が効いています。
ギャンブル依存症という社会問題を、笑いに変えて描いた現代的な人情噺になったかと思います。
二人の会話と心情の変化を、パチンコの音や動作と共に描写してみました。
自己採点は 84 点。現代社会の問題を落語らしく料理できたかなと思います。


