スポンサーリンク

【古典落語】大男の女郎買い あらすじ・オチ・解説 | 巨大な関取が吉原で花魁の腹の上に乗る体格差コメディの傑作

スポンサーリンク
話芸の殿堂-古典落語-大男の女郎買い
スポンサーリンク
スポンサーリンク

大男の女郎買い

3行でわかるあらすじ

商家の旦那が巨大な関取を連れて吉原の大見世にあがり、大男の扱いに困る見世を楽しむ。
関取は水甕で酒を飲み、複数の部屋をまたいで寝て、花魁を腹の上に乗せる。
花魁が「大男に大なんとかはない」と言うと関取が「それは毛だ」と答えるオチ。

10行でわかるあらすじとオチ

日本橋石町の商家の旦那が、大男で大酒飲みの関取を連れて吉原のなじみの大見世にあがる。
旦那は大男の扱いに困った見世が右往左往するのを眺めて楽しもうという魂胆である。
関取は大きすぎて表から入れず、表から二階へ這い込み、まるで奈良の大仏が夜這いに来たような按配。
芸者や幇間が来て酒盛りが始まるが、関取は並の杯では呑み込んでしまうため水甕で酒を飲む。
水甕で冷酒をグイグイ飲んだ関取は眠くなり、座敷の襖をはずして布団を並べて寝かせる。
熊野浦へ上がった鯨のように横たわる関取に布団を掛け、まるで布団の虫干しのよう。
関取の相方になった花魁が部屋に入ると、関取は雷のようないびきと富士山の噴火のような鼻息。
花魁が関取に「お腹に乗っけてみなましな」と言い、関取は指で花魁をつまんで腹の上に乗せる。
花魁は「江戸中が見える」とはしゃぐが、腹が坂になってへその穴にぼとんと落っこちる。
花魁が「大男に大なんとかはない」と言うと、関取が「馬鹿あ言え、それは毛だ」というオチ。

解説

「大男の女郎買い」は、体格差を活かした物理的コメディが秀逸な廓噺です。
商家の旦那が巨大な関取を連れて吉原に行き、見世の困惑を楽しむという設定から始まり、関取の規格外の大きさが次々と問題を引き起こします。
水甕で酒を飲む場面や、複数の部屋をまたいで寝る場面など、大男ならではの描写が笑いを誘います。

特に花魁との場面では、関取の腹の上に乗せられた花魁が「江戸中が見える」と言ったり、へその穴に落ちたりする展開が、体格差の極端さを強調しています。

最後の「大男に大なんとかはない」というのは「大男に大物なし」という諺をもじった表現で、花魁が関取の男性器の小ささを揶揄したものですが、関取が「それは毛だ」と答えるオチは、さらに小さなものを指していることを示唆する、落語特有の下ネタを含んだ言葉遊びです。
江戸時代の吉原という舞台設定と、関取という職業の特性を活かした、物理的制約とコメディが巧妙に組み合わされた作品です。

あらすじ

日本橋石町の商家の旦那が、大男で大酒飲みの関取を連れて吉原のなじみの大見世にあがった。
大男の扱いに困った見世が右往左往するのを眺めて楽しもうとする魂胆だ。

関取は大き過ぎて表から入れず、表から二階へ這い込んだ。
まるで奈良の大仏さんが夜這いに来たようなあんばいだ。

芸者、幇間が来て、酒、肴が並ぶ。
旦那 「関取は並の杯では呑み込んでしまう。大きいものはないか」、「水甕ではどうでございます。大きいもので三荷は入ります」
旦那 「それくらいなら間にあうだろう。酒は冷でないといけないよ」、関取は並んだ菰かぶりを、大きなひしゃくで水甕に汲ませて、「ごっつあんです」と、がばがばと飲んで行く。
まるで酒呑童子の酒盛りだ。

水瓶で冷酒をグイグイと飲んだ関取は、さすがに眠くなってコクリコクリ。
旦那 「酒の席で居眠りしているのはうまくないから、どこか隅の方へ転がしておきな」、「・・・どうせ石町さんは困らせようと思って来たもんだから、こっちも大見世の見識を見せて、ちっとも困っていないことを見せよう」と、座敷の襖をはずして、布団をずらーと並べて、長持ちを毛せんでくるんで枕にして関取を寝かせた。

熊野浦へ上がった鯨のように長々と横たわっている関取に布団を掛けて行く。
まるで布団の虫干しのようだ。
大きな荷物がかたづいてお座敷は盛り上がり、お引けとなった。

関取の相方になった花魁は気が重いが、そこは商売、天下の吉原のプロだ。
上草履をトントンと軽くは上がらないが、バッタリバッタリと響かせて関取の部屋に入った。

花魁 「おやすみなはいましたか」と、障子を開けて驚いた。
関取はグウグウどころか、ガラガラと雷が落ちたようないびきをかき、富士山が噴火したような鼻息を天井向かって噴き上げている。
このままでは天井は鼻息の熱で焼け落ちてしまう勢いだ。

花魁の気配に気がついたのか、関取が寝返りをうつと家がぐらぐら、元禄の大地震、関東大震災よりも大きな揺れだ。
こんなことに怖気づく花魁ではない。「ちょいと、ちょいと関取、関取・・・」

関取 「なんでえ」
花魁 「おまはんのお腹に乗っけてみなましな」、関取は指で花魁の体をつまんで、ひょいとお腹の上に乗せた。
花魁 「まあ、おそろしく高いこと。
江戸中が見えるよ。あたいの家があすこに見えるよ」と、嘘っぽくはしゃいでいたが、「・・・おやおや、だんだん坂になってきた」、腹上からの展望を楽しんでいた花魁は腹の上をすべって穴ぐらへぼとんと落っこちた。

花魁はもがいて這い上がろうとすると、「こらぁ、へその穴なぜくすぐるんだ」、こりゃたまらんと関取、また指で花魁をひょいとつまんで腹の上に出したのはよかったが、坂の途中に置いてしまってまた花魁はコロコロと転がり、スピードがついて薪雑棒のような物にぶつかって止まった。

花魁 「まあ、"大男に大なんとかはない"って本当だねえ。関取おまはんのは体に似合わない小粒だねえ」

関取 「馬鹿あ言え、それは毛だ」

落語用語解説

  • 関取:江戸時代の力士。相撲は興行として人気があり、巨大な体格の力士は庶民の憧れの的だった。この噺では規格外の大きさを持つ関取が登場する。
  • 大見世(おおみせ):吉原遊廓の中でも格式の高い大きな店。商家の旦那が馴染みにしている店で、関取のような規格外の客にも対応できる余裕がある。
  • 水甕(みずがめ):水を貯める大きな甕。通常は飲み物に使うものではないが、関取が酒を飲むのに使う器として登場し、その規格外の大きさを強調する。
  • 三荷(さんが):約54リットル。一荷は約18リットルで、三荷は相当な量。関取がこの量の酒を飲むことで、その巨大さが際立つ。
  • 酒呑童子:日本の伝説上の鬼で、大酒飲みとして知られる。関取の大酒を酒呑童子に例えることで、その飲みっぷりの凄まじさを表現している。
  • 大男に大物なし:体が大きい男は案外小心者だったり、能力が伴わなかったりするという諺。この噺では下ネタとして使われる。
  • へその穴:花魁が関取の腹の上で滑ってへその穴に落ちる場面は、体格差の極端さを象徴する笑いのポイント。

よくある質問

Q1: 「大男の女郎買い」はいつ頃から演じられている落語ですか?

江戸落語として古くから演じられている演目で、江戸時代の吉原遊廓と相撲興行という二つの庶民文化を背景にした噺です。江戸時代には相撲が大変人気があり、力士は庶民の憧れの的でした。その力士と吉原の花魁という組み合わせは、当時の聴衆にとって非常に面白い設定だったと考えられます。

Q2: 旦那はなぜわざわざ関取を連れて吉原に行ったのですか?

旦那の目的は「大男の扱いに困った見世が右往左往するのを眺めて楽しもうとする魂胆」です。馴染みの大見世がどう対応するかを試すという、いたずら心からの行動です。しかし見世側も「大見世の見識を見せて、ちっとも困っていないことを見せよう」と奮闘し、襖を外して布団を並べるなど工夫して対応します。この旦那と見世の駆け引きも笑いのポイントです。

Q3: オチの「それは毛だ」はどういう意味ですか?

花魁が「大男に大なんとかはない」と言って関取の男性器の小ささを揶揄したところ、関取が「馬鹿あ言え、それは毛だ」と答えます。これは花魁がぶつかった「薪雑棒のような物」は男性器ではなく、さらに小さな「毛」だったという意味で、落語特有の下ネタを含んだ言葉遊びです。体が大きいのに男性器は小さいという「大男に大物なし」を極端に表現したオチになっています。

Q4: 花魁が「江戸中が見える」と言うのはなぜですか?

関取の腹の上に乗せられた花魁が、まるで高い山に登ったかのように「江戸中が見える」と言います。これは関取の体の大きさを誇張して表現する笑いの技法です。実際には室内にいるのに、腹の上が高すぎて江戸中が見渡せるという極端な表現が、この噺の体格差コメディの真骨頂です。

Q5: この噺は現代でも演じられていますか?

現代でも演じられていますが、下ネタを含むため演者や場所を選ぶ演目です。体格差を活かした物理的コメディは時代を超えて面白く、関取の規格外の大きさを表現する場面(水甕で酒を飲む、複数の部屋をまたいで寝る、花魁を指でつまむなど)は視覚的にも想像しやすく、現代の観客にも笑いを提供できる内容です。

名演者による口演

古今亭志ん生

志ん生の「大男の女郎買い」は、関取の規格外の大きさを誇張して表現する語り口が秀逸です。志ん生は水甕で酒を飲む場面や、花魁がへその穴に落ちる場面を、リアリティを持ちながらも極端に描き出します。特にオチの「それは毛だ」という台詞を、絶妙な間と表情で演じ、下ネタを品よく笑いに昇華させる技術が光ります。

桂文楽

八代目文楽の「大男の女郎買い」は、几帳面な構成と緻密な描写が特徴です。文楽は関取の体格を数字や比喩を使って丁寧に説明し、聴衆が具体的にイメージできるように演出します。特に花魁が関取の腹の上を滑ってへその穴に落ちる場面の描写は、文楽の緻密な演出の真骨頂です。

柳家小三治

小三治の「大男の女郎買い」は、体格差の物理的コメディを現代的な感覚で演じる点が特徴です。小三治は旦那と見世の駆け引きや、花魁のプロ意識を丁寧に描き出し、単なる下ネタではなく人間ドラマとしても楽しめる演出を心がけます。オチも品を保ちながら、しっかりと笑いを取る技術が見事です。

関連する落語演目

吉原廓を舞台にした滑稽噺

https://wagei.deci.jp/wordpress/komatou/
https://wagei.deci.jp/wordpress/shibahama/
https://wagei.deci.jp/wordpress/nagayanohanami/

体格や体質の特性を活かした噺

https://wagei.deci.jp/wordpress/kumitate/
https://wagei.deci.jp/wordpress/daibutsumochi/
https://wagei.deci.jp/wordpress/kawarime/

酒呑みを題材にした噺

https://wagei.deci.jp/wordpress/komeageikaki/
https://wagei.deci.jp/wordpress/sakenokasu/
https://wagei.deci.jp/wordpress/kawarime/

この噺の魅力と現代への示唆

「大男の女郎買い」の最大の魅力は、体格差を活かした物理的コメディの面白さです。関取の規格外の大きさが引き起こす様々な問題(表から入れない、杯が小さすぎる、布団が足りない、花魁を指でつまむなど)は、想像力を刺激する視覚的な笑いを提供します。

この噺は、江戸時代の二大娯楽である相撲と吉原遊廓を組み合わせた作品で、当時の庶民文化を反映しています。相撲が庶民の娯楽として人気があり、力士が憧れの存在だったことがよくわかります。また、吉原の大見世が規格外の客にも対応しようと奮闘する様子は、江戸時代の商売人の心意気を表現しています。

現代社会においても、この噺が持つメッセージは興味深いものがあります。旦那と見世の駆け引き(困らせようとする客と、見識を見せようとする店側)は、現代のサービス業にも通じる普遍的なテーマです。また、花魁が気が重いながらもプロとして対応する姿は、職業人としての矜持を表現しています。

オチの「大男に大物なし」という諺を使った下ネタは、落語特有の言葉遊びの面白さを示しています。体が大きいからといって全てが大きいわけではないという、人間の多様性を笑いに昇華した秀逸な作品です。

関連記事

タイトルとURLをコピーしました