【AI落語】SNS投稿怖い(新作落語)
デジタル時代の新たな恐怖症、それは「投稿するのが怖い」という現象ではないでしょうか。
文章を書いては消し、写真を選んでは迷い、ハッシュタグを考えては悩む。結局何も投稿せずに一日が終わる──そんな経験、誰にでもあるはずです。この現代特有の心境を、古典落語の名作「まんじゅうこわい」の構造を借りて新作落語にしてみました。
果たして江戸時代の語り口で現代のSNS事情を描くという無謀な試みが成功するのか。正直なところ、自分でも半信半疑です。でも時代が変わっても人間の「怖がり」な本質は変わらないものだと思うのです。
それでは、現代版「こわい」シリーズの一編をお楽しみください。
デジタル時代の新たな恐怖
皆さん、SNSはお使いでしょうか。便利な時代になったものですが、便利になればなるほど新しい悩みも生まれるものです。
昔の人は「人前で話すのが苦手」と言いましたが、今の人は「投稿するのが怖い」と言います。画面越しなのに、なぜか直接会って話すより緊張してしまう。不思議なものですね。
特に「いいね」の数を気にしてしまう方が多いようで。まるで江戸時代の人が「世間体」を気にしていたのと同じような感覚でしょうか。時代は変わっても、人の心配事の本質は変わらないものかもしれません。
さて、そんな現代の「怖がり」な人たちの話を、古典落語の語り口で描いてみることにしました。
あらすじ
ある日のこと、仲良し三人組が集まって茶飲み話をしておりました。
田中「おい、みんな何が一番怖いか知ってるか?」
佐藤「そりゃあ、地震だろう」
鈴木「いやいや、雷の方が怖いぞ」
田中「違う違う。SNSの投稿が一番怖いんだ」
佐藤「はあ?何それ」
田中「知らないのか。今時の人はみんな、スマートフォンってやつでSNSっていうのをやってるんだが、そこに何かを投稿するのが死ぬほど怖いんだそうだ」
鈴木「投稿って何だい?」
田中「文章や写真を、世界中の人に見せることさ。でもな、投稿した後に『いいね』ってのがもらえないと、まるで自分が否定されたみたいな気持ちになるんだとさ」
佐藤「そんなもん、怖がることないじゃないか」
田中「ところがどっこい。投稿しようと思って文章を書いても、『これで大丈夫かな』『変に思われないかな』って考えているうちに、結局投稿できずに消しちゃうんだとさ」
恐怖の正体
鈴木「馬鹿馬鹿しい。そんなもの怖がるなんて」
田中「そう言うお前だって、きっと怖いに決まってる」
佐藤「俺たちが怖がるわけないだろ」
田中「じゃあ試しに、お前たちもSNSをやってみろよ」
そう言って田中は、スマートフォンとやらを取り出しました。
田中「ほら、これがSNSだ。何でもいいから投稿してみろ」
佐藤「なんだ、簡単じゃないか。えーっと…『今日はいい天気ですね』っと」
文字を打ち込んで、投稿ボタンを押そうとした瞬間。
佐藤「あれ?でも『ですね』って丁寧すぎるかな。『だな』の方がいいかも。いや待てよ、『今日は』って言葉も変かな。『今日』だけでいいかも…」
どんどん文章をいじり始める佐藤。
佐藤「あー、でも絵文字も入れた方がいいのかな。☀️←これでいいかな。でも天気の話なんて面白くないよな。みんな『つまらない投稿』だと思うんじゃないか」
次々と感染する恐怖
鈴木「おい佐藤、何をウジウジしてるんだ。俺がやってやる」
鈴木は勢いよくスマートフォンを取り上げました。
鈴木「『腹減った』。これでどうだ!」
投稿ボタンに指をかけた瞬間。
鈴木「…あれ?でも『腹減った』って下品かな。『お腹が空きました』の方が上品かも。でも上品すぎても変だし…『小腹が空いた』くらいがちょうどいいかな」
文字を打ち直す鈴木。
鈴木「でも待てよ、食べ物の話って、見てる人が『また食べ物かよ』って思うんじゃないか。もっと気の利いたことを書かないと…」
田中「ほら見ろ、お前たちもSNS投稿が怖くなっただろ」
佐藤「うるさい!俺は怖がってなんかいない!」
鈴木「そうだそうだ!ただちょっと慎重になってるだけだ!」
エスカレートする恐怖
田中「じゃあ写真も一緒に投稿してみろよ。今の若い人は『インスタ映え』って言って、きれいな写真じゃないと投稿しないんだぞ」
佐藤「写真くらい簡単だ。えーっと…」
スマートフォンのカメラを起動して、お茶の写真を撮ろうとする佐藤。
佐藤「あれ?角度が悪いかな。もうちょっと上から…いや、横から…うーん、光が足りないかな」
何度も撮り直す佐藤。
佐藤「フィルターってのもかけた方がいいのかな。明るくした方がいいか、それとも色を濃くした方がいいか…あー、でもフィルターかけすぎると不自然になるし…」
鈴木「俺なんか写真なんて一発で決めてやる」
自分の顔を撮ろうとする鈴木。
鈴木「えーっと…あれ?髭剃った方がいいかな。いや、髭があった方が男らしいか。でも寝癖が…」
鏡を見ながら髪を直し始める鈴木。
鈴木「角度も大事だな。真正面だと威圧感があるし、横向きだと『決めすぎ』って思われるかな…」
投稿への最後の挑戦
田中「どうだ、SNS投稿は怖いだろう」
佐藤「まだだ!まだ投稿してない!」
鈴木「そうだ!今度こそ投稿してやる!」
二人は意を決して、投稿ボタンに指をかけました。
佐藤・鈴木「えいっ!」
ポチッ
瞬間、投稿が完了しました。
佐藤「やった!投稿できた!」
鈴木「俺もだ!SNS投稿なんて怖くない!」
ところが、しばらくすると二人の顔が青ざめてきました。
田中「どうした?」
佐藤「あの…投稿したのに、いいねが一個もつかない…」
鈴木「俺も…もう10分も経つのに反応がない…みんな俺の投稿を無視してる…」
佐藤「これって、つまり俺の投稿はつまらないってことか…」
鈴木「俺の写真、変だったのかな…」
二人してスマートフォンの画面を見つめてうなだれています。
田中「だから言ったろう。SNS投稿は怖いんだよ」
佐藤「田中、お前はSNS投稿怖くないのか?」
田中「俺が一番怖い」
まとめ
現代の「まんじゅうこわい」をSNS版で描いてみましたが、いかがでしたでしょうか。
実際、SNSに何かを投稿するのって、思った以上に勇気がいりますよね。文章一つ書くのも、写真一枚選ぶのも、意外と悩んでしまうものです。古典落語の「怖がり」の心境と、現代人の「投稿への不安」が意外と似ていることに気づいて、この組み合わせを思いつきました。
オチは王道の「俺が一番怖い」パターンでしたが、現代の文脈で描くことで新鮮味を出せたでしょうか。自己採点としては70点といったところです。もう少しSNS特有の「炎上への恐怖」や「既読スルーの不安」なども織り込めればよかったかもしれません。
それにしても、時代が変わっても人間の「怖がり」な本質は変わらないものですね。江戸時代の人が「世間体」を気にしていたように、現代人は「いいねの数」を気にしている。本質的には同じ「承認欲求」なのかもしれません。
デジタル時代の新たな恐怖症を古典落語の手法で描くという実験でしたが、読んでいただいた皆様はどう感じられたでしょうか。もしよろしければ、他のAI落語作品もご覧いただけると嬉しいです。きっと現代ならではの笑いを見つけていただけると思います。


