飲み屋大家其の二
前回、店子に借金をする羽目になった大家の権兵衛が、また新しいアイデアを思いつきました。
今度は家賃と酒代を相殺するという、さらに複雑なシステム。
でも、酒が入ると計算も曖昧になってしまいそうです。
家賃を酒代で相殺する新システム
家賃の取り立てを酒の力で解決しようという発想。
でも、酒が入ると、何もかも曖昧になってしまいます。
あらすじ
前回の失敗に懲りた大家の権兵衛が、新しいアイデアを思いついた。
権兵衛:「今度こそうまくいく方法を考えた」
女房:「また何か始めるんですか」
権兵衛:「家賃飲み会だ」
女房:「家賃飲み会?」
権兵衛:「店子たちと一緒に飲んで、家賃を酒代で相殺する」
女房:「相殺?」
権兵衛:「そうだ、酒代を家賃から引くんだ」
女房:「それで家賃は取れるんですか」
権兵衛:「酒代より家賃の方が高いから、差額をもらう」
—
権兵衛は店子たちを飲み屋に集めた。
権兵衛:「みんな、今日は家賃飲み会だ」
熊:「家賃飲み会?」
権兵衛:「そうだ、飲んだ分は家賃から引いてやる」
八:「それは太っ腹だ」
権兵衛:「ただし、家賃の方が高いから、差額は払ってもらう」
寅:「つまり、家賃から酒代を引いた分?」
権兵衛:「そうだ」
—
権兵衛:「じゃあ、乾杯」
一同:「乾杯」
権兵衛:「熊五郎の家賃は五百文だ」
熊:「はい」
権兵衛:「今、一合飲んだから、百文引いて四百文だ」
熊:「四百文?」
権兵衛:「そうだ」
熊:「じゃあ、もう一合飲んだら?」
権兵衛:「三百文だ」
熊:「どんどん安くなるな」
—
八:「俺の家賃は?」
権兵衛:「八兵衛は六百文だ」
八:「六百文?」
権兵衛:「今、二合飲んだから、二百文引いて四百文だ」
八:「熊さんと同じだな」
権兵衛:「偶然だ」
寅:「じゃあ、俺も二合飲む」
権兵衛:「寅公の家賃は四百文だから、二百文引いて二百文だ」
寅:「一番安いぞ」
—
権兵衛:「みんな、どんどん飲んでくれ」
熊:「じゃあ、もう一合」
八:「俺も」
寅:「俺も」
権兵衛:「熊五郎三百文、八兵衛三百文、寅公百文だ」
寅:「俺、もう一合飲んだら?」
権兵衛:「ゼロだ」
寅:「やった、家賃なし」
—
寅:「もう一合飲んだら?」
権兵衛:「えーと、マイナス百文だ」
寅:「マイナス?」
権兵衛:「俺がお前に百文払う」
寅:「それは嬉しい」
権兵衛:「でも、変だな」
八:「何が変だ」
権兵衛:「俺が金を払うって、おかしいだろ」
熊:「でも、大家さんが決めたシステムだ」
—
権兵衛:「そうだった。じゃあ、俺も飲む」
一同:「大家さんも?」
権兵衛:「そうだ。俺が飲んだ分は、みんなの家賃に足す」
八:「足す?」
権兵衛:「俺が一合飲んだら、みんなの家賃が百文ずつ上がる」
寅:「それは困る」
熊:「大家さん、飲まないで」
権兵衛:「でも、飲みたい」
—
結局、全員で酔っ払ってしまった。
権兵衛:「えーと、家賃の計算は」
熊:「計算?」
権兵衛:「何文だっけ」
八:「忘れた」
寅:「俺も忘れた」
権兵衛:「じゃあ、計算は明日にしよう」
一同:「そうしよう」
権兵衛:「でも、明日も忘れてそうだな」
—
翌日、みんな二日酔いで計算どころではなかった。
権兵衛:「頭が痛い」
熊:「俺も」
八:「昨日何をしたっけ」
寅:「家賃飲み会?」
権兵衛:「そうだった。で、計算は」
一同:「覚えてない」
権兵衛:「じゃあ、家賃の話はやめよう」
一同:「賛成」
—
結局、家賃飲み会は毎月の恒例になった。
権兵衛:「今月も家賃飲み会だ」
一同:「乾杯」
権兵衛:「家賃の計算は」
一同:「忘れよう」
権兵衛:「そうだな」
こうして、長屋では家賃の話は一切しなくなった。
権兵衛:「これが一番平和だ」
熊:「大家さん、今日も飲もう」
権兵衛:「おう、家賃のことは忘れて飲もう」
一同:「乾杯」
まとめ
家賃を酒代で相殺しようとしたが、計算が複雑すぎて皆で忘れることに。
でも、それで平和になったから結果オーライ。
時には忘れることも、円満解決の一つの方法かもしれませんね。


