熱燗の恨み
飲み屋での客同士の喧嘩は、些細なことから始まることが多いものです。
今回は、熱燗の温度にこだわる客同士の喧嘩をお届けします。
お酒が入ると、普段は気にならないことでも大事になってしまうものですね。
熱燗の温度で始まる争い
飲み屋で熱燗の温度にこだわる客同士が喧嘩を始めるお話です。
あらすじ
町の飲み屋で、二人の客が隣り合わせで飲んでいた。
客A「親父、熱燗一本」
親父「へぇ、熱燗ですね」
客B「俺も熱燗」
親父「はいはい」
親父が熱燗を持ってきた。
客A「うん、いい温度だ」
客B「え?これが熱燗?」
客A「どうした?」
客B「ぬるいじゃねぇか」
客A「ぬるい?これが丁度いいんだよ」
客B「丁度いい?冗談じゃない」
客A「冗談じゃないって?」
客B「熱燗ってのは、もっと熱くなきゃいけねぇんだ」
客A「熱く?火傷するくらいか?」
客B「火傷するくらいがいいんだ」
客A「そんなに熱くちゃ、酒の味がわからねぇよ」
客B「味?熱燗に味なんて関係ねぇ」
客A「関係ねぇって?」
客B「熱燗は熱さが命だ」
客A「熱さが命?そんなバカな」
客B「バカとは何だ」
客A「バカはバカだ」
客B「なんだと」
二人は立ち上がった。
親父「まあまあ、お二人とも」
客A「親父、こいつに熱燗の何たるかを教えてやってくれ」
親父「熱燗の何たるか?」
客A「そうだ」
客B「親父、熱燗ってのは熱いもんだろ?」
親父「まあ、熱燗ですからね」
客A「だから、これくらいが丁度いいんだ」
客B「丁度いい?こんなぬるい酒のどこが熱燗だ」
客A「ぬるいって言うな」
客B「ぬるいものはぬるい」
客A「じゃあ、お前の好みの温度で飲めばいいじゃねぇか」
客B「俺の好み?」
客A「そうだ」
客B「俺の好みは関係ねぇ」
客A「関係ねぇって?」
客B「熱燗には正しい温度があるんだ」
客A「正しい温度?」
客B「そうだ」
客A「誰が決めたんだ?」
客B「昔から決まってるんだ」
客A「昔から?」
客B「そうだ」
客A「そんなもん、人それぞれだろ」
客B「人それぞれ?」
客A「そうだ」
客B「熱燗に人それぞれはねぇ」
客A「あるよ」
客B「ねぇよ」
客A「あるって言ってるだろ」
客B「ねぇって言ってるだろ」
親父「お二人とも、もうやめにしましょう」
客A「親父、こいつが熱燗の温度にケチをつけるんだ」
客B「ケチじゃねぇ、正論だ」
客A「正論?」
客B「そうだ」
客A「お前の言うことが正論なら、俺のは何だ?」
客B「暴論だ」
客A「暴論だと?」
客B「そうだ」
客A「上等だ」
客B「上等だ」
二人は今にも掴みかかりそうになった。
親父「待った待った」
客A「何だ?」
親父「お二人とも、何で喧嘩してるんですか?」
客A「熱燗の温度だ」
親父「熱燗の温度?」
客B「そうだ」
親父「でも、お二人とも同じ熱燗を飲んでるじゃないですか」
客A「同じ?」
親父「同じ徳利から注いだんですから」
客B「同じ徳利?」
親父「はい」
客A「じゃあ、温度も同じか」
親父「当然です」
客B「当然?」
親父「はい」
客A「そうか、同じ温度か」
客B「同じ温度だな」
客A「なら、何で喧嘩してたんだ?」
客B「そうだな、何で喧嘩してたんだろ」
親父「お二人とも、あつ(熱)かん(燗)しすぎて、あつ(厚)かん(勘)になっちゃったんですよ」
まとめ
いかがでしたでしょうか。
飲み屋での客同士の喧嘩を、熱燗の温度という些細なことから始まる争いとして表現してみました。
オチの「熱燗」と「厚勘(勘違い)」をかけた言葉遊びです。
お酒が入ると些細なことで喧嘩になってしまう人間の性質が面白く描けたでしょうか。
今回は70点くらいでしょうか。


