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睨み返し 落語|あらすじ・オチ「自分のやつを睨みます」意味を完全解説【大晦日の借金取り撃退】

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話芸の殿堂-古典落語-睨み返し
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睨み返し 落語|あらすじ・オチ「自分のやつを睨みます」意味を完全解説

睨み返し(にらみがえし) は、大晦日に借金取りに囲まれた熊五郎が「言い訳屋」を雇う古典落語。無言で睨み返すだけで借金取りを撃退するが、「家で自分のやつを睨みます」というオチで言い訳屋自身も借金苦だったという皮肉が秀逸です。

項目内容
演目名睨み返し(にらみがえし)
ジャンル古典落語・滑稽噺・年末噺
主人公長屋の熊五郎
舞台大晦日の江戸の長屋
オチ「家で自分のやつを睨みます」
見どころ無言の睨みだけで借金取り撃退

3行でわかるあらすじ

大晦日に借金取りに囲まれた熊五郎が「借金の言い訳」をしてくれる男を雇う。
この男は何も言わず、借金取りをひたすら睨み返すだけで次々と撃退する。
時間が来て帰ろうとすると「家で自分のやつを睨みます」というオチで終わる。

10行でわかるあらすじとオチ

「江戸っ子は宵越しの銭は持たない」と威勢のいい熊五郎だが、大晦日になって借金取りに囲まれる。
薪屋を相手に凄んでなんとか追い返すが、まだまだ借金取りは続く。
すると表で「ええ、借金の言い訳しましょう」という声がして、熊さんは大喜びで呼び寄せる。
言い訳屋は一時間二円の先払いで、どんな手強い借金取りでも追い返すと自信満々。
熊さんはなけなしの銭をかき集めて言い訳屋を雇い、かみさんと押し入れで見物する。
米屋、魚屋、高利貸しの代理人などが次々とやってくるが、言い訳屋は無言で睨み返すだけ。
どの借金取りも気味が悪くなって、「また参ります」「さいなら」「いずれまた、失敬」とすごすご帰っていく。
一時間が経つと言い訳屋が時計を見て「これでおいとまさせてもらいます」と帰ろうとする。
熊さんが引き止めると、「いや、そうしちゃいられません。家へ帰って自分のやつを睨みます」とオチをつける。
この言葉で、言い訳屋自身も借金苦で同じ手段を使っていたことが判明する。

解説

「睨み返し」は、1777年(安永6年)に出版された笑話本『春袋』の一編「借金乞」が原話で、元は上方落語でしたが、4代目桂文吾から三代目柳家小さんに伝えられて江戸落語になりました。

この噺の最大の特徴は、無言の演技が中心になっていることです。言い訳屋は一切言葉を発せず、ただ睨み返すだけで借金取りを撃退します。このため、演者の表情や仕草が非常に重要な演目で、CDやラジオなどの音声のみのメディアでは伝わりにくい作品とされています。

オチの「家で自分のやつを睨みます」は、言い訳屋自身も家では借金取りを睨み返して逃げる立場にあることを示しており、皆が皆同じような苦労をしているという江戸時代の庶民の現実をユーモラスに描いたものです。

大晦日を舞台にしたこの噺は、年末の寄席でよく演じられる定番演目です。江戸時代、商売は掛けで行われ、その支払いは大晦日に1年分のツケで行うのが普通でした。このため大晦日は借金取りが最も活発になる日であり、「大晦日、箱提灯は恐くない」という言い回しがあるように、侍よりも借金取りの方が怖かったという時代背景を反映した作品です。

あらすじ

「江戸っ子は宵越しの銭は持たない」と威勢はいいが、「元日や今年もあるぞ大晦日」で、もう大晦日が来てしまった。「大晦日、箱提灯は恐くない」で、この日だけは侍よりも、弓張り提灯を持った掛取りの方が怖かった。

長屋の熊五郎は、あちこちに貯まった借金の金策もできずに、かみさんから責め立てられている。
そこへ薪屋が本日三度目の御入来だ。
勘定を払ってもらうまでは一歩も引かないと、ずかずかと上がり込んで来る。
熊さんは負けずに薪ざっぽうを取り上げ、心張棒をかって払うまでは帰えせねぇと凄んだ。
払うまでは半年、一年かかる。
その間飯は食わせないから死んだら葬式ぐらいは出してやると脅すと薪屋はギブアップだ。
調子に乗った熊さんは受け取りを書け、十円札で払ったからつりをよこせと言いたい放題。
薪屋は泣く泣く帰って行った。
やっと一人追っ払ったが、まだまだ借金取りは続く。

すると表で、「ええ、借金の言い訳しましょう」と言う声がする。
言い訳して断ったくれればありがたいと、呼び寄せる。
言い訳屋は、どんなに手強く、しぶとい借金取りでも追い返すと自信満々だ。
一時間二円で先払いだという。
熊さんはなけ無しの銭をかき集めて、言い訳屋を雇った。
かみさんと押し入れに入り、どんな言い訳で借金取りを撃退するのか見物だ。

まずは米屋が入って来た。
見知らぬ変な男が煙管をくわえて睨(にら)んでいる。
何を言っても無言で睨み返されて気味が悪くなった米屋は、「また参ります」とすごすごと退散した。

次ぎの魚屋は戸を開けて言い訳屋の怖い顔に睨み返されただけで、「さいなら」と帰って行ってしまった。
今度のは強面(こわもて)の那須正勝という高利貸しの代理人で手強さそうだ。
でも言い訳屋は相変わらず無言で何を言われても黙って睨み返すばかり。
さすがの那須氏も、「いずれまた、失敬」と引き返して行った。

言い訳屋が時計を見るとすでに十分のタイムオーバーだ。「これでおいとまさせてもらいます」と帰りかけるのを引き止め、

熊さん 「まだまだ来るから、三十分ばかり座っていてくれ、金は何とかするから」

言い訳屋 「いや、そうしちゃいられません。家へ帰って自分のやつを睨みます」


この噺は、無言の睨みだけで借金取りを撃退するという斬新な設定と、言い訳屋自身も借金苦だったという皮肉なオチが絶妙です。

落語用語解説

睨み返し(にらみがえし)

相手の睨みに対して睨み返すこと。この噺では、借金取りを無言で睨み返すだけで撃退する手法を指します。言葉ではなく眼力だけで相手を圧倒する江戸っ子の心意気を表しています。

大晦日(おおみそか)

12月31日のこと。江戸時代、商売は掛け払いで行われ、1年分のツケを大晦日に清算する習慣がありました。このため借金取りが最も活発になる日で、この噺の重要な舞台設定です。

掛取り(かけとり)

掛け売りした代金を集金に来る人。大晦日には各商店から掛取りが一斉に訪れるため、借金のある家では恐怖の日でした。

言い訳屋(いいわけや)

この噺に登場する職業で、借金取りに言い訳をして追い返す仕事。実際には存在しない架空の職業ですが、落語らしい発想です。

江戸っ子は宵越しの銭は持たない

江戸っ子の気風を表す言葉。稼いだ金はその日のうちに使い切り、貯蓄しない潔さを表します。しかし実際には借金に苦しむ人も多く、この噺はその現実を描いています。

大晦日、箱提灯は恐くない

大晦日には侍の箱提灯よりも、借金取りの弓張り提灯の方が怖いという意味の言い回し。江戸時代の庶民の実感を表した言葉です。

心張棒(しんばりぼう)

戸や障子を内側から突っ張って開かないようにする棒。熊さんが薪ざっぽうを心張棒代わりにして、薪屋を閉じ込めようとする場面で使われます。

薪ざっぽう(まきざっぽう)

薪を束ねる細い竹の棒。熊さんがこれを武器代わりに薪屋を脅す道具として使います。

那須正勝(なすまさかつ)

高利貸しの代理人として登場する人物名。実在の人物ではなく、落語の創作です。強面の借金取りとして描かれます。

先払い(さきばらい)

サービスを受ける前に料金を支払うこと。言い訳屋は一時間二円の先払いを要求し、熊さんはなけなしの銭をかき集めて支払います。

押し入れ(おしいれ)

収納スペース。熊さんとかみさんが押し入れに隠れて、言い訳屋の手腕を見物する場面で使われます。

自分のやつ

自分の家にいる借金取りのこと。オチの「家で自分のやつを睨みます」は、言い訳屋自身も借金取りに追われていることを示します。

よくある質問 FAQ

なぜ言い訳屋は無言で睨むだけだったのですか?

無言の威圧が最も効果的だったからです。言葉で言い訳をすると議論になりますが、ただ睨み返すだけでは相手も何も言えず、気味悪くなって帰らざるを得ません。これは心理戦の巧妙な手法です。

なぜ借金取りは睨まれただけで帰ったのですか?

無言で睨み返されることの不気味さと、何か恐ろしいことが起きるかもしれないという恐怖からです。江戸時代には暴力沙汰も珍しくなく、見知らぬ男の無言の威圧は本当に怖かったでしょう。

なぜ大晦日が借金取りにとって重要だったのですか?

江戸時代の商習慣では、1年分の掛け売りを大晦日に清算する習慣がありました。この日を逃すと翌年まで待たなければならないため、借金取りは必死で集金に来たのです。

このオチはどこが面白いのですか?

借金取りを撃退する専門家だと思っていた言い訳屋が、実は自分も借金に追われて同じ手段を使っている人間だったという皮肉です。皆が皆同じような苦労をしているという江戸庶民の現実が、笑いとともに描かれています。

なぜこの噺は音声だけでは伝わりにくいのですか?

言い訳屋の演技が無言で睨み返すだけなので、表情や仕草が重要だからです。CDやラジオでは視覚情報が伝わらないため、この噺の面白さが十分に伝わりにくいとされています。

この噺の教訓は何ですか?

借金は誰にとっても苦しいものだという普遍的な真実です。立場の違いはあっても、皆が同じような苦労をしている。この噺は、そうした人間の共通性を笑いとともに描いています。

名演者による口演

この噺は無言の演技が中心で、演者の表情と仕草が重要です。視覚的な要素が強い演目として、多くの名演者が工夫を凝らして演じてきました。

  • 古今亭志ん朝 – 言い訳屋の無言の威圧を表情豊かに演じ、借金取りとの心理戦を巧みに表現した名演
  • 三遊亭円生 – 大晦日の緊張感を丁寧に描き、言い訳屋の不気味さを格調高く演出した名演
  • 柳家小三治 – 間の取り方が絶妙で、無言の場面での緊張感とオチの爽快感を見事に対比
  • 立川談志 – 借金苦という社会問題を辛辣に描き、江戸庶民の苦労を鋭く表現した独特の解釈
  • 桂米朝 – 上方落語版の原型を丁寧に演じ、関西弁の味わいで庶民の苦労を温かく描写

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この噺の魅力と現代への示唆

「睨み返し」は、無言の威圧だけで借金取りを撃退するという斬新な設定が魅力の作品です。言い訳屋は一切言葉を発せず、ただ睨み返すだけで次々と借金取りを追い払います。この手法は、言葉での言い訳よりも無言の威圧の方が効果的という心理学的な真実を突いています。

江戸時代の大晦日は、1年分の掛け売りを清算する日で、借金取りが最も活発になりました。「大晦日、箱提灯は恐くない」という言い回しが示すように、侍よりも借金取りの方が怖かったという時代背景が、この噺に リアリティを与えています。

そして何より秀逸なのは、オチの「家で自分のやつを睨みます」です。借金取りを撃退する専門家だと思っていた言い訳屋が、実は自分も借金に追われて同じ手段を使っている人間だった。この皮肉な展開は、皆が皆同じような苦労をしているという江戸庶民の現実を、笑いとともに描いています。

現代社会でも、年末には様々な支払いや清算があり、金銭的な苦労は誰にでもあります。立場や職業は違っても、皆が同じような悩みを抱えている。この噺は、そうした人間の共通性を笑いに昇華させる落語の真髄を示す名作です。

江戸時代の庶民の知恵と苦労が詰まった、視覚的要素と言葉遊びが同居する傑作です。

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