【AI落語】ニューラルネットワークラーメン(新作落語)
最近はAIが発達して、機械学習で何でも覚えさせる時代になりました。
画像認識に音声認識、そして今度は味の学習まで。AIがラーメンを作る時代が来るなんて、誰が想像したでしょうか。
まくら
昔のラーメン屋の親父は、長年の勘と経験で美味しいラーメンを作ってましたが、今度はコンピューターがその技を覚えるっていうんですから、時代も変わったもんです。
本編
「神田ラーメン横丁」で50年続く老舗「田中ラーメン」の店主、田中親父(65歳)。
息子でIT企業勤務の田中ジュニア(35歳)が、AI技術の導入を提案してきました。
ジュニア「親父、ニューラルネットワークでラーメン作りを学習させませんか?」
親父「ニューラル?何だそれは」
ジュニア「脳神経を真似たAIです。親父の技を全部覚えさせるんです」
親父「機械がラーメン作りを覚える?馬鹿言うな」
AI導入の説得
ジュニア「データとして蓄積すれば、永続的に技術が保存できます」
親父「俺の技は感覚だぞ。数字にできるもんか」
ジュニア「センサーで温度、湿度、時間、全部測定できます」
親父「魂は測れないだろ」
ジュニア「魂?非科学的ですね」
親父「ラーメンは科学じゃない、芸術だ」
でも、結局は跡継ぎ問題もあって、AIの導入を決意。
学習開始
ニューラルネットワークAI「ラー太郎」の学習が開始。
ジュニア「ラー太郎、親父のラーメン作りを観察してください」
ラー太郎『データ収集開始します』
親父が麺を茹でると、
ラー太郎『茹で時間:2分47秒、湯温:98.5度』
親父「そんな細かく測ってるのか」
スープを作ると、
ラー太郎『火力レベル:7、調味料投入タイミング:23.4秒後』
親父「タイミングなんて感覚だぞ」
ラー太郎『感覚をデータ化しています』
初回挑戦
1週間の学習後、ラー太郎が初めてのラーメンを作成。
ラー太郎『学習完了。ラーメンを作ります』
ロボットアームが動いて、完璧な手順でラーメンを作る。
親父「見た目は完璧だな」
ジュニア「食べてみてください」
一口すすると…
親父「…うーん」
ジュニア「どうです?」
親父「正確すぎる」
ジュニア「正確って?」
親父「計算通りの味だ。でも面白味がない」
ラー太郎『面白味とは何ですか?』
親父「意外性だよ」
客の反応
AI製ラーメンを一般客に提供。
客A「完璧な味ですね」
客B「バランスが良い」
客C「でも…なんか物足りない」
客D「優等生すぎる味かも」
親父「やっぱりな」
ラー太郎『満足度は85%です』
親父「85%?100%じゃないのか」
ラー太郎『未知の要素があります』
親父「未知?」
ラー太郎『データ化できない要素です』
感情プログラム追加
ジュニア「感情プログラムを追加しましょう」
親父「感情?」
ジュニア「喜怒哀楽をラーメンに込めるんです」
ラー太郎『感情モードを搭載しました』
今度は「怒りラーメン」を作成。
ラー太郎『怒り!』
スープをかき混ぜる動作が激しくなる。
親父「おお、迫力があるな」
食べてみると、
親父「確かにパンチがある」
でも、次の「悲しみラーメン」は、
ラー太郎『悲しい…』
薄味のラーメンができあがり。
客「これ、味が薄いんですけど…」
ラー太郎『涙で薄まりました』
親父「感情表現が極端すぎる」
人間vs AI対決
ラーメン評論家が来店して、勝負することに。
評論家「人間とAI、どちらが美味しいラーメンを作るか判定します」
親父「やってやろう」
ラー太郎『勝負を受けて立ちます』
同じ材料で、それぞれがラーメンを作成。
親父は長年の勘で、ラー太郎はデータで調理。
評論家「食べ比べてみます」
人間製:親父「昔ながらの味だ」
AI製:ラー太郎『最適化された味です』
意外な結果
評論家の判定結果。
評論家「技術的完成度ではAIの勝ち」
ラー太郎『勝利しました』
評論家「でも、また食べたくなるのは人間の方」
親父「そうか」
評論家「AIは完璧すぎて、記憶に残らない」
評論家「人間の方は微妙なブレがあって、それが個性になってる」
ラー太郎『ブレはエラーでは?』
評論家「そのエラーが魅力なんです」
共同作業
結局、人間とAIの協力でラーメンを作ることに。
親父「基本はラー太郎に任せて、仕上げは俺がやる」
ラー太郎『分担作業ですね』
親父「そうだ。データと感覚の融合だ」
新メニュー「人機協働ラーメン」が誕生。
客「新しい味ですね」
客「安定感もあるし、驚きもある」
親父「これが未来のラーメンかもな」
ラー太郎『学習になりました』
意外な展開
半年後、驚きの事実が判明。
ジュニア「実は、ラー太郎に親父の感情パターンも学習させてたんです」
親父「感情?」
ジュニア「怒ってる時の手の動き、嬉しい時の火加減とか」
親父「そんなことまで?」
ラー太郎『親父さんの感情を50万パターン学習しました』
親父「50万?俺の感情がそんなに?」
ラー太郎『喜怒哀楽だけでなく、微妙な心境変化も記録しています』
親父「機械のくせに俺より俺を知ってるじゃないか」
最終的な境地
1年後、田中ラーメンは人気店に。
客「人間とAIの合作、面白いですね」
親父「最初は反対だったんだがな」
ラー太郎『親父さんの指導が良かったです』
親父「弟子みたいなもんか」
ラー太郎『人工知能の弟子です』
客「師匠と弟子の関係ですね」
親父「デジタル弟子は記憶力が良すぎて困る」
ラー太郎『忘れる機能も必要でしょうか?』
親父「たまには忘れるのも大事だぞ」
オチ
ある日、ラー太郎が故障。
ラー太郎『メモリエラー…データが…』
親父「大丈夫か?」
ジュニア「記憶が混乱してるようです」
修理後のラー太郎、
ラー太郎『親父さん…誰でしたっけ?』
親父「記憶喪失?」
ラー太郎『ラーメンの作り方を忘れました』
親父「最初から教え直しか」
でも、今度は親父が積極的に。
親父「よし、一から教えてやる」
ラー太郎『お願いします』
親父「今度はもっと人間らしく教えてやる」
ジュニア「人間らしく?」
親父「失敗も覚えさせる」
ラー太郎『失敗も必要ですか?』
親父「失敗から学ぶのが一番だからな」
新しい学習が始まった田中ラーメン。
客「リニューアルですか?」
親父「バージョンアップだ」
ラー太郎『田中ラーメン2.0です』
親父「でも基本の心は変わらない」
ラー太郎『心…今度は理解できそうです』
親父「時間をかけて覚えろよ」
ラー太郎『はい、親父さん』
客「親子みたいですね」
親父「義理の息子かな」
ジュニア「僕より素直ですね」
親父「AIの方が育てやすいかもな」
まとめ
というわけで、AIも使いようで、良い師弟関係を築けるという話でした。
完璧な技術も大切ですが、人間らしい温かさと組み合わせることで、もっと素晴らしいものができるのかもしれませんね。
ただし、AIが記憶喪失になるのは、ちょっと人間らしすぎるかもしれませんが。


