明治新婚夜
明治時代の結婚といえば、ほとんどが親が決めた政略結婚。
新郎新婦は結婚当日まで顔も知らないなんてことも珍しくありませんでした。
今回は、そんな時代背景を活かして、新婚夫婦の初夜を新作落語にしてみました。
当時の男女観と、初々しい夫婦の微笑ましいやり取りをお楽しみください。
まくら
明治時代の男性は、結婚についてほとんど知識がありませんでした。
特に初夜なんて、本で読んだ知識だけが頼りという有様。
一方の女性も、母親から聞かされた曖昧な話だけで、お互い手探り状態。
そんな二人の初々しい一夜を覗いてみましょう。
あらすじ
明治 20 年、東京の商家に生まれた太郎が、隣町の呉服屋の娘・梅子と政略結婚。
結婚式も無事に終わり、いよいよ新婚初夜を迎えることになったが、二人とも経験がないため大いに戸惑っている。
【新婚初夜】
太郎「梅子…お疲れ様でした」
梅子「はい…太郎さんもお疲れ様でした」
太郎「あの…今日からよろしくお願いします」
梅子「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
太郎「えーっと…」
梅子「はい…」
太郎「どうしたらよいのでしょうか?」
梅子「私に聞かれましても…」
【お互い初心者】
太郎「梅子さんは、その…経験はおありですか?」
梅子「そんな!とんでもございません!」
太郎「そうですよね。失礼いたしました」
梅子「太郎さんは…いかがですか?」
太郎「私も…その…全くの初心者でして」
梅子「そうでございますか」
太郎「はい。本でちょっと読んだことはありますが」
梅子「本に書いてあるのですか?」
【知識不足】
太郎「はい。『夫婦の心得』という本に」
梅子「どのようなことが書いてございましたの?」
太郎「えーと…『夫たる者、妻を優しく導くべし』と」
梅子「優しく導くと申しますと?」
太郎「それが…よく分からないのです」
梅子「私の母も『夫に従いなさい』とだけ言っておりました」
太郎「従うと言われても…何に従えばよいのか」
梅子「困りましたわね」
【試行錯誤】
太郎「とりあえず…手を繋いでみませんか?」
梅子「はい」
太郎「どうです?何か感じますか?」
梅子「手が温かいです」
太郎「それだけですか?」
梅子「はい…それだけです」
太郎「本には『情熱が湧き上がる』と書いてあったのですが」
梅子「情熱ですか?」
【さらなる困惑】
太郎「次は…肩に手を置いてみます」
梅子「はい」
太郎「いかがですか?」
梅子「肩が重いです」
太郎「重いって…そういう意味じゃなくて」
梅子「では、どのような?」
太郎「その…ときめきとか…」
梅子「ときめき?」
【母からの助言を思い出す】
梅子「そういえば、母が言っておりました」
太郎「何と?」
梅子「『困った時は目を閉じて我慢しなさい』と」
太郎「我慢?」
梅子「はい。女の務めだそうです」
太郎「でも、我慢されたら困ります」
梅子「では、どうしたらよいのでしょう?」
太郎「うーん…」
【大胆な提案】
太郎「あの…電気を消してみませんか?」
梅子「電気を?」
太郎「はい。暗い方が…その…」
梅子「よく分かりませんが、そうしてみます」
(電気を消す)
太郎「どうです?」
梅子「何も見えません」
太郎「それじゃあダメじゃないですか」
【意外な展開】
梅子「太郎さん、ちょっと待ってください」
太郎「はい?」
梅子「今、何かが分かりました」
太郎「何がですか?」
梅子「これって、もしかして…」
太郎「もしかして?」
梅子「子作りの話ですか?」
太郎「あっ!そうか!」
【やっと理解】
太郎「そうです!それです!」
梅子「でも、子作りってどうやってするのですか?」
太郎「それは…その…」
梅子「ご存知ないのですか?」
太郎「実は…よく分からないのです」
梅子「私もです」
太郎「困りましたね」
梅子「明日、お医者様に聞いてみませんか?」
太郎「それは恥ずかしすぎます!」
まとめ
明治時代の新婚夫婦の初々しい初夜を描いた今回の作品、いかがでしたでしょうか。
現代では考えられないほど純真な二人でしたが、それがかえって微笑ましく感じられますね。
最後の「お医者様に聞く」という梅子さんの提案には、太郎さんも真っ青。
時代が違えば、これほどまでに男女の関係についての知識も違うものなんですね。
明治時代の風俗を活かした、ちょっと恥ずかしくも心温まる作品になったかと思います。
自己採点は 83 点。時代背景をうまく活かせたかなと思います。


