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【古典落語】くしゃみ講釈 あらすじ・オチ・解説 | 失恋男の復讐作戦と唐辛子くしゃみテロ大作戦

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話芸の殿堂-古典落語-くしゃみ講釈
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くしゃみ講釈

3行でわかるあらすじ

講釈師後藤一山のせいで女性に振られた男が、胡椒をくすべてくしゃみをさせる復讐を計画する。
胡椒を買いに行くが物忘れで「のぞきからくり」を語り出し、八百屋の前に人だかりができる騒動になる。
結局唐辛子をくすべて一山をくしゃみさせ、「故障があるか」と聞かれて「胡椒がないからトンガラシくすべた」と答える。

10行でわかるあらすじとオチ

横町に講釈小屋ができて東京から来た後藤一山が評判になっている。
一山のせいで小間物屋のおみっちゃんに振られた男が復讐を企む。
友達が胡椒を火鉢でくすべてくしゃみをさせる作戦を提案する。
男は物忘れが激しいため、友達が「のぞきからくり」の小姓で胡椒を覚えろと教える。
八百屋で胡椒を思い出そうと「のぞきからくり」を語り出し、見物人が集まって騒動になる。
やっと胡椒にたどり着くが売り切れで、代わりに唐辛子を買う。
講釈小屋で唐辛子をくすべると一山は激しくくしゃみをして講釈を中断する。
一山は客に謝って招待券を渡して帰ってもらうが、男は帰らない。
一山が「あんたがたは何ぞわたしに故障でもおありか」と聞く。
男が「胡椒がないからトンガラシくすべた」と答える言葉遊びのオチ。

解説

「くしゃみ講釈」は江戸落語の中でも特に言葉遊びと物忘れの滑稽さを組み合わせた名作です。この噺の背景には、江戸時代後期に盛んだった講釈文化があり、講釈師は庶民の娯楽として重要な存在でした。

この噺の技巧的な見どころは、二重構造の笑いにあります。まず男の物忘れの激しさと「のぞきからくり」を語り出す場面で一つ目の笑いを作り、最後の「胡椒(故障)」の言葉遊びで決定的なオチをつける構成は見事です。

特に八百屋での「のぞきからくり」の場面は、男が胡椒を思い出そうとして延々と語り続け、見物人が集まって商売の邪魔になるという展開が現実的でありながら滑稽です。これは江戸庶民の娯楽好きな性質を反映した描写でもあります。

最後のオチは典型的な江戸落語の地口(だじゃれ)落ちで、「故障」と「胡椒」の同音異義語を使った言葉遊びです。一山が真面目に「故障があるか」と聞いているのに対し、男が文字通り「胡椒がない」と答える構造は、聞き手の予想を裏切る巧妙な仕掛けになっています。現代でも物忘れと復讐心という普遍的なテーマで楽しまれている古典落語の傑作です。

あらすじ

横町の「化もん屋敷」と呼んでいた所に講釈小屋が出来た。
講釈師は東京から来た後藤一山で上手いと評判だ。

後藤一山のせいで小間物屋のおみっちゃんに振られた男が恨み骨髄、一山に仕返しをしたいという。
友達はそれなら一山が講釈をしている前へ座り、火鉢に胡椒(こしょう)の粉をくすべて、くしゃみをさせ講釈を出来なくさせて、ボロ糞になじって帰ろうという悪知恵を貸す。

八百屋へ胡椒を買いに行く男だが覚えが悪く、物忘れが早い。
友達は「こしょう」を覚えるのに「のぞきからくりの八百屋お七」の相手の吉祥寺の「小姓」の吉三(きちざ)を思い出せばいいと言う。

横町の八百屋へ来た男、もう忘れている。
仕方なく「のぞきからくり」を語り出したが、なかなか「こしょう」が出て来ない。
大声で語る八百屋の前は面白がって見物人がぞくぞく集まり、ついには黒山の人だかりで、八百屋は商売上がったりとなった。

やっと「こしょう」にたどり着いた男、「胡椒を二銭おくれ」とほっとしたが、「売り切れてない」でがっくり。
八百屋に他にくしゃみの出る物はないかと聞く。
八百屋はそんならと、えぐいくしゃみが出る唐辛子(とんがらし)を勧めた。

やっとトンガラシを買って、待ちくたびれた友達の所へ戻った男、二人で講釈小屋へ乗り込む。
講釈師の見台の前にかぶりつき陣取り、準備万端だ。

出て来た講釈師の後藤一山、今日の出し物の「難波戦記」を鷹揚に語り始めた。「頃は慶長も相改まり、明くれば元和元年五月七日の儀に候や。大坂城中、 千畳敷おん御上段の間には内大臣秀頼公、おん左側には御母公淀君・・・・・・」、さすが評判通りの語り口に男は聞き惚れている。

友達に今日は講釈を聞きに来たのではないと言われ我に返り、復讐戦の開始だ。
火鉢に唐辛子をくすべ、団扇(うちわ)でパタパタと一山めがけて仰ぎ出した。

すぐに効果てき面、一山はくしゃみの連発だ。
容赦しない男はこれでもかと仰ぎ続ける。
さすがの一山先生もくしゃみには勝てず、語りづづけるのは不可能と判断、客に謝り、明日の晩もう一度語るからと丸札(招待券)を渡して帰ってもらうことにする。

客は皆、気の毒にとおとなしく帰って行ったが、黙っていないのが前に陣取った胡椒組の二人、

「お前のくしゃみを聞きに来たのじゃないぞ」と毒づいて帰らない。

一山先生 「あんたがたは何ぞわたしに故障でもおありか?」

男 「胡椒がないからトンガラシくすべた」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 講釈(こうしゃく) – 歴史や軍記物語を面白おかしく語る演芸。講釈師は扇子を叩きながら張り扇で調子を取り、軍記物や歴史物語を読み上げました。
  • 講釈師(こうしゃくし) – 講釈を専門に語る芸人。落語家とは別の芸能で、張り扇と見台を使い、歴史物や軍記物を語りました。
  • 見台(けんだい) – 講釈師が台本を置く小さな台。高座で使用し、これを叩いて調子を取りながら語ります。
  • 張り扇(はりおうぎ) – 講釈師が見台を叩くために使う扇子。骨が太く丈夫に作られており、叩くと良い音が出ます。
  • 難波戦記(なにわせんき) – 大坂夏の陣を描いた軍記物。豊臣秀頼と徳川家康の戦いを扱い、講釈の定番演目でした。
  • のぞきからくり – 江戸時代の見世物の一種。箱の中の絵を覗き穴から見ながら、語り手が物語を説明する大衆娯楽でした。
  • 八百屋お七 – 江戸時代の実在の人物で、恋人に会いたい一心で放火した女性。歌舞伎や講談の題材として有名です。
  • 吉祥寺の小姓(こしょう) – お七の恋人・吉三のこと。寺小姓という身分で、お七との悲恋物語で知られます。
  • くすべる – 火鉢などで物を燻して煙を出すこと。胡椒や唐辛子を火にかけて煙を出す行為を指します。
  • 丸札(まるふだ) – 招待券のこと。講釈や芝居の無料入場券で、今でいうフリーパスに相当します。

よくある質問(FAQ)

Q: 講釈と落語の違いは何ですか?
A: 講釈は歴史や軍記物を語る演芸で、見台と張り扇を使い、調子を取りながら語ります。落語は庶民の日常を題材にした笑い話で、座布団の上で扇子と手ぬぐいだけで演じます。江戸時代は別々の芸能として発展しました。

Q: なぜ男は講釈師に恨みを持ったのですか?
A: 講釈師の後藤一山が人気者になったせいで、小間物屋のおみっちゃんが一山に夢中になり、男を振ってしまったからです。恋敵への嫉妬と失恋の恨みが復讐の動機となっています。

Q: 「のぞきからくり」を語り出す場面は何が面白いのですか?
A: 物忘れの激しい男が「胡椒」を思い出すために「のぞきからくり」を語り始めますが、肝心の「こしょう(小姓)」がなかなか出てこず、延々と語り続けることです。八百屋の前に見物人が集まって商売の邪魔になる展開は、江戸庶民の娯楽好きな性質をよく表しています。

Q: 「故障」と「胡椒」のオチの仕組みは?
A: 講釈師が「何か故障(不満・トラブル)がありますか」と真面目に聞いているのに対し、男は「胡椒(調味料)がない」と文字通りの意味で答えています。同音異義語を使った典型的な江戸落語の地口オチで、聞き手の予想を裏切る巧妙な言葉遊びです。

Q: この噺は江戸落語ですか?上方落語ですか?
A: 江戸落語の演目です。講釈文化は江戸で特に盛んで、この噺も江戸の庶民文化を背景にしています。物忘れと復讐という普遍的なテーマで、現代でも人気があります。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の大名人。この噺では物忘れの激しい男の間抜けさと、「のぞきからくり」を語る場面の臨場感が絶品でした。
  • 古今亭志ん朝(三代目) – 端正な語り口で知られる名人。講釈師一山の格調高い語りと、男の滑稽さを見事に対比させて演じました。
  • 柳家小三治(十代目) – 人間国宝。この噺でも丁寧な人物描写で、男の恨みと物忘れの性格を繊細に表現します。
  • 春風亭一朝(三代目) – 軽妙な語り口で、「のぞきからくり」の場面を特に面白く演じることで知られています。

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この噺の魅力と現代への示唆

「くしゃみ講釈」は、物忘れと復讐という人間の弱さを笑いに変えた古典落語の傑作です。失恋の恨みを晴らそうとする男の気持ちは時代を超えて共感できますが、その方法が唐辛子をくすべてくしゃみをさせるという子供じみたものである点が微笑ましいです。

この噺の最大の魅力は、二重構造の笑いにあります。まず「のぞきからくり」を延々と語り出す場面で笑わせ、最後に「故障」と「胡椒」の言葉遊びで決定的なオチをつける構成は見事です。八百屋の前に黒山の人だかりができる場面は、江戸庶民の娯楽好きな性質をよく表しており、当時の庶民文化の一端を垣間見ることができます。

「のぞきからくり」という江戸時代の見世物を題材にしている点も興味深いです。現代ではほとんど見られなくなった娯楽ですが、落語の中で生き続けています。これは落語が単なる笑い話ではなく、江戸文化の記録としての価値も持っていることを示しています。

また、物忘れの激しい男というキャラクター設定は、現代でも通用する普遍的な笑いのポイントです。何かを覚えようとして別のことに夢中になり、本来の目的を忘れてしまう経験は、誰もが持っているでしょう。スマートフォンで何かを調べようとして、他のアプリに気を取られて忘れてしまう現代人の姿とも重なります。

最後の「胡椒がないからトンガラシくすべた」という言葉遊びは、シンプルながら秀逸です。真面目に「故障」を聞いている講釈師と、文字通り「胡椒」について答える男のすれ違いが生む笑いは、落語の醍醐味といえるでしょう。

実際の高座では、「のぞきからくり」を語る場面での演者の表現力と、くしゃみをする講釈師の演技が見どころです。ぜひ生の落語会や動画配信で、複数の落語家の演じる「くしゃみ講釈」を聴き比べて、その違いを楽しんでください。


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