口喧嘩うっかり
性懲りもなく新作落語を作ってしまいました。
口喧嘩とうっかりという組み合わせ、我ながら安直です。
でも、こういうベタな話も時には必要…ですよね?
喧嘩自慢とうっかり者の対決
あらすじ
長屋で有名な口喧嘩の達人、源さんと、うっかり者で有名な八兵衛が鉢合わせた。
源:「おい八兵衛、てめえ昨日俺の悪口言ってたそうじゃねえか」
八:「えっ、そんなこと言ったっけ」
源:「とぼけるな!熊公から聞いたぞ」
八:「ああ、思い出した。確かに源さんの話をしたよ」
源:「やっぱりそうか。さあ、どんな悪口を言ったか白状しろ」
—
八:「えーっと、確か『源さんは口が達者で…』」
源:「口が達者で、なんだ?」
八:「『頭の回転が速くて、誰も敵わない』って言ったんだ」
源:「…それ、褒めてるじゃねえか」
八:「あれ?悪口じゃなかったっけ」
源:「違うだろ!もっとこう、『口ばっかりで』とか『偉そうに』とか」
八:「ああ、そうだった!『源さんは偉そうに…』」
源:「そうそう、それだ」
八:「『偉そうに見えて、実は面倒見がいい』って言ったんだ」
—
源:「だから褒めるなって!俺は喧嘩しに来たんだ」
八:「じゃあ、今から悪口言うよ。源さんは…源さんは…」
源:「なんだ、言ってみろ」
八:「源さんは、怒った顔も男前だ!」
源:「それも褒め言葉だろうが!」
八:「あれ?じゃあ、源さんの着物は…」
源:「俺の着物がどうした」
八:「いつも綺麗に洗濯されてて、几帳面な性格が表れてる!」
—
源:「もういい!俺が手本を見せてやる。いいか、悪口ってのはこう言うんだ」
八:「はい、お願いします」
源:「八兵衛、てめえは本当にうっかり者で、昨日も味噌と砂糖を間違えて…」
八:「あっ、それ俺も言おうと思ってた!」
源:「何を」
八:「俺は本当にうっかり者で、いつも皆に迷惑かけて…」
源:「おい、自分の悪口言ってどうする」
—
八:「俺なんか、生きてる価値もない人間で…」
源:「おいおい、そこまで言うな」
八:「箸にも棒にもかからない、どうしようもない奴で…」
源:「八兵衛、お前そんな人間じゃねえよ」
八:「本当ですか?」
源:「ああ、お前は…その…憎めない奴だよ」
八:「源さん、ありがとう!やっぱり源さんは優しいなあ」
源:「だから褒めるなって言ってるだろ!」
結局、喧嘩にならずに終わってしまった。
まとめ
悪口を言おうとして褒めてしまう、というベタな展開でした。
最後は自分の悪口を言い始めて、相手に慰められるという、なんとも締まらないオチです。
でも、こんな平和な喧嘩なら、毎日でもいいですよね。
…いや、それじゃ喧嘩じゃないか。


