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【古典落語】仔猫 あらすじ・オチ・解説 | 猫食い女の恐怖と血染めの秘密

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話芸の殿堂-古典落語-仔猫
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仔猫

3行でわかるあらすじ

田舎の女お鍋が船場の問屋に奉公に来て、見た目は悪いが働き者として店の皆に気に入られる。
夜中に怪しい行動をしているのを見咎められ、荷物を調べると血染めの猫の毛皮が複数枚発見される。
お鍋は7歳の時から猫を食べる癖があることを告白し、番頭が「猫被ってたんやなぁ」とダジャレで落とす。

10行でわかるあらすじとオチ

船場の大きな問屋に口入屋の紹介で、お鍋という田舎のぶさいくな女が奉公に来る。
お鍋は見た目はひどいが誰にでも親切で、力仕事も男に負けない働き者で店の者に気に入られる。
ある日、若い衆がお鍋の夜中の怪しい行動について話し合い、薄気味悪い形相で出歩いていると噂する。
番頭が夜中に覗くと、鏡を見るお鍋の髪はザンバラ、口は耳元まで裂け血がべっとり付いている恐ろしい姿だった。
主人と番頭は証拠を掴むため、お鍋が芝居見物に出かけた隙に荷物を調べることにする。
押し入れの行李を開けると、血に染まった猫の毛皮が何枚も出てきて皆が驚愕する。
番頭は口実をつけてお鍋を暇にしようとするが、お鍋は部屋を調べられたことを感づく。
血染めの猫の皮を見られたと知ったお鍋は芝居がかって、7歳の時に飼い猫の血を舐めたのが始まりと告白する。
それ以来猫の生き血の味を覚え、人様の可愛がる猫を捕って食らうのが病いになったと打ち明ける。
番頭は安堵し「猫捕るだけの話かいな」と笑い、最後に「猫被ってたんやなぁ」とダジャレで落とす。

解説

「仔猫」は上方落語の代表的な演目の一つで、見た目と中身のギャップを描いた店噺です。昼間は朗らかで働き者のお鍋が、実は恐ろしい秘密を抱えているという二面性が巧みに描かれています。

この噺の見どころは、前半の恐怖感漂う展開から一転して、最後のダジャレオチへの転換です。「猫被る」という慣用句(本性を隠して大人しく振る舞う)と、実際に猫を捕って食べていたという状況を掛け合わせた言葉遊びが秀逸です。

番頭の「猫被ってたんやなぁ」というオチは、聞き手の緊張を一気に和らげる効果があり、恐怖から笑いへの転換を見事に演出しています。また、お鍋の芝居がかった告白シーンも、上方落語特有の演技力が要求される見せ場となっています。

あらすじ

船場の大きな問屋に口入屋の紹介でお鍋という田舎のぶさいくな女が奉公に来る。
お鍋は見た目はひどい顔でも誰にでも親切で、細かい所にも気がつき、力仕事も男に負けない働き者で、店の者にすっかり気に入られるようになる。

ある日、店の若い衆がお鍋の話で盛り上がっていると、誰かがお鍋には怪しい所があると言い出す。
夜になると、薄気味悪い形相でどこかへ出て行き、朝になったらちゃんと戻っているというのだ。
番頭も夜中にお鍋の部屋の灯りがついているので心配して障子の隙間から覗いたら、鏡を見ていたお鍋の髪はザンバラ、口は耳元まで裂け血がべっとり、目は吊り上り、恨めしそうに「ヒィヒィヒィ」と気味悪く笑っていたと言う。

主人もこの事にはうすうす気が付いていたので、番頭を呼びお鍋に暇を取らせる相談をする。
とにかく何か証拠を押さえようと、お鍋にご寮人(ごりょう)さんの芝居見物のお伴をさせた隙に、お鍋の荷物を調べる。
すると押し入れの行李の中から、血に染まった猫の毛皮が何枚も出てくる。

主人から命じられた番頭は、いろいろと口実をつけてお鍋を暇を取らせ田舎に帰らせようとするが、お鍋は留守中に部屋の中を調べられたと感づき、「わしの留守中、何か見はせなんだか」と詰め寄る。

血染めの猫の皮を見られたと知ったお鍋は(芝居がかって)、「・・・・・七つの時に飼い猫が足を噛まれて帰ったを、舐めてやったが始まりで、猫の生き血の味を覚え、それからというものは、人様の可愛がる猫と見れば、捕って喰らうがわしの病い・・・・」と打ち明け、「わし、ここを追い出されてもどっこも行くところありゃせんのじゃ。
番頭さん、今日限り止めます。手足縛って寝まするで、番頭さん、どうぞここに置いとぉくれ」と訴えた。

番頭 「何じゃお前、猫捕るだけの話かいな。わしゃ喉笛をガブッとかぶりつかれるかと思てたんやがな、ハハハ、ハハハ・・・・、 因果なもんやなぁ、昼間あんなに朗らかなあんたが・・・・、猫被ってたんやなぁ」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 船場(せんば) – 大阪市中央区の地域名。江戸時代から商業の中心地として栄え、多くの問屋や商家が軒を連ねていました。「船場の旦那」といえば、大阪の豪商を指す言葉でした。
  • 口入屋(くちいれや) – 江戸時代の職業紹介業。奉公人と雇い主を仲介する役割を担っており、現代の人材紹介会社に相当します。
  • 奉公(ほうこう) – 商家や武家に住み込みで働くこと。江戸時代には多くの若者が田舎から都市部の商家に奉公に出ました。
  • 番頭(ばんとう) – 商家の支配人。店の運営を任される重要な役職で、主人に次ぐ地位にありました。店員の採用や解雇の権限も持っていました。
  • 若い衆(わかいしゅう) – 商家で働く若い男性従業員のこと。丁稚から番頭への出世の途中段階にあたります。
  • ご寮人(ごりょう)さん – 商家の主人の妻のこと。大阪では「ごりょんさん」と呼ばれました。
  • 行李(こうり) – 竹や柳で編んだ蓋付きの収納箱。衣類や日用品を入れるために使われました。奉公人は行李に荷物をまとめて持ち歩きました。
  • 暇を取る(ひまをとる) – 奉公人が雇い主から解雇されること、または自ら辞めること。「暇を出す」は雇い主側から解雇することを指します。
  • 猫を被る(ねこをかぶる) – 本性を隠して大人しく従順に振る舞うこと。この噺では、文字通り「猫の毛皮」と「猫を被る」という慣用句を掛けた地口オチになっています。

よくある質問(FAQ)

Q: この噺のお鍋は本当に猫を食べていたのですか?
A: 噺の中ではそのように描かれています。ただし、これは誇張された設定で、実際の江戸時代に猫を食べる習慣が一般的だったわけではありません。お鍋の異常性を強調するための演出です。

Q: なぜ番頭は「喉笛をガブッとかぶりつかれる」と思ったのですか?
A: 夜中の恐ろしい形相や血染めの毛皮を見て、番頭はお鍋が人を襲う化け物か妖怪ではないかと恐れていたからです。しかし実際は猫を捕っていただけだったので、安堵して笑い飛ばしたのです。

Q: 最後のオチ「猫被ってたんやなぁ」の意味は?
A: 「猫を被る」という慣用句(本性を隠して大人しく振る舞う)と、お鍋が実際に猫を捕って食べていた(猫の毛皮を被っていた)という状況を掛け合わせた言葉遊びです。昼間は朗らかな働き者だったお鍋が、実は恐ろしい秘密を隠していたという二重の意味になっています。

Q: この噺は怖い話ですか?
A: 前半は怪談のような恐怖感がありますが、最後はダジャレオチで笑いに転換する構成です。上方落語特有の「恐怖から笑いへ」の転換が見事な演目で、怪談噺というより滑稽噺に分類されます。

Q: この噺は江戸落語にもありますか?
A: いいえ、「仔猫」は上方落語独自の演目です。船場という大阪の地名や、上方言葉での会話が特徴的で、江戸落語には同様の演目はありません。

Q: お鍋はなぜ暇を取らされなかったのですか?
A: 番頭が「猫を捕るだけの話」と安心したからです。また、お鍋が「今日限り止めます」と約束したこと、働き者で店に貢献していたことから、主人も番頭も情けをかけて引き続き雇うことにしたと考えられます。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 桂米朝(三代目) – 人間国宝。上方落語の復興に尽力し、この噺でも恐怖感と滑稽さのバランスを見事に表現しました。お鍋の二面性の描き分けが秀逸です。
  • 桂枝雀(二代目) – 身体を使った演技で知られる名手。お鍋の夜中の恐ろしい形相と、昼間の朗らかさのギャップを大げさに演じる爆笑演技が印象的です。
  • 桂南光(三代目) – 「べかこ」の愛称で親しまれる名手。軽妙な語り口で、恐怖シーンも笑いに変える技術が光ります。
  • 桂ざこば(二代目) – 豪快な芸風で知られ、お鍋の告白シーンを芝居がかって演じる迫力ある演出が評価されています。
  • 桂吉朝 – 枝雀の弟子。師匠の芸を受け継ぎながら、独自の解釈を加えた演出で人気を博しました。

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この噺の魅力と現代への示唆

「仔猫」の最大の魅力は、恐怖から笑いへの見事な転換にあります。前半は怪談のような雰囲気で観客を緊張させ、後半で「猫を捕っていただけ」という安堵と「猫被ってたんやなぁ」というダジャレで一気に笑いに変える構成は、上方落語の技巧の見本と言えるでしょう。

現代社会でも、「猫を被る」という言葉は日常的に使われます。この噺は、その慣用句を文字通りの意味と掛け合わせることで、言葉の面白さを再発見させてくれます。お鍋は確かに本性を隠していましたが、それは人を害するためではなく、単に猫を捕る癖を隠していただけでした。この「予想外の真相」が笑いを生む仕掛けになっています。

また、見た目と中身のギャップというテーマも重要です。お鍋は「見た目はひどい顔」だが「働き者で親切」という第一のギャップがあり、さらに「朗らかな昼の姿」と「恐ろしい夜の姿」という第二のギャップがあります。人は見かけによらないという教訓を、極端に誇張して描いているのです。

番頭の「喉笛をガブッとかぶりつかれるかと思てた」という台詞も面白いポイントです。血染めの毛皮を見て、人を襲う化け物だと思い込んでいた番頭の恐怖心が、実際は猫だったという落差が笑いを生んでいます。これは人間の思い込みと早とちりを笑う落語ならではの視点です。

お鍋の告白シーンは、上方落語特有の「芝居がかった」演技が要求される見せ場です。実際の高座では、演者がどこまで恐ろしく、どこまで滑稽に演じるかで、この噺の印象が大きく変わります。桂枝雀師匠のような身体を使った大げさな演技から、桂米朝師匠のような格調高い演技まで、演者によって様々な解釈があります。

この噺は、恐怖、笑い、言葉遊び、人間観察のすべてが詰まった、上方落語の魅力を凝縮した作品です。ぜひ生の落語会や動画配信で、複数の落語家の演じる「仔猫」を聴き比べて、その違いを楽しんでください。


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