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【古典落語】小烏丸 あらすじ・オチ・解説 | 名刀VS竹光の衝撃オチ

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話芸の殿堂-古典落語-小烏丸
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小烏丸

3行でわかるあらすじ

質屋の主人・伊勢屋幸右衛門が後妻のお梶と鉄医の定安の不倫に気づかないでいる。
娘のおてるが鉈の頭・勝五郎と相談して、定安を追い出す計略を立てる。
おてるが色仕掛けで定安を駄落ちさせ、金と名刀・小烏丸を渡すが、定安が刀を抜くとカラスではなく雀が集まり竹光だったことがバレる。

10行でわかるあらすじとオチ

日本橋石町の質屋・伊勢屋幸右衛門は「仏の幸右衛門」と呼ばれる人格者で、娘のおてると二人で暮らしている。
そこに女中のお梶が後妻に納まるが、鉄医の定安と不倫をしている。
幸右衛門だけが二人の仲を知らず、銖の頭・勝五郎が水を向けようとする。
おてるが勝五郎に「このままでは家が乗っ取られる」と相談し、定安を追い出す策略を練る。
おてるが色仕掛けで定安を誘い「一緒に逃げて」と駄落ちさせる。
定安は店の金百両と名刀・小烏丸を持ち出し、おてると駄籠で王子へ向かう。
飛鳥山近くでおてるが金と刀を渡して定安を追い払おうとするが、定安が抵抗する。
勝五郎が現れ、定安が小烏丸を抜くとカラスではなく雀が集まってくる。
月光にかざして見ると小烏丸は竹光(假物)で、本物ならカラスが集まるはずが雀が来たという考え落ちで終わる。

解説

「小烏丸」は古典落語の代表的な演目の一つで、「孝行娘」とも呼ばれ、上方では「竹光」と題して演じられます。
6代目・桂文治や桂歌丸などの名人によって演じられてきました。
オチは「考え落ち」と呼ばれるタイプで、一瞬考えた後に面白さがわかってニヤリとさせられる種類の落ちです。
小烏丸は平安時代の名刀として知られ、伝承では桐武天皇のもとに八咫烏(やたがらす)と呼ばれる大きなカラスが伊勢神宮から遣わされた際、そのカラスが飛び立つときに羽の中から出てきたことから名付けられ、天皇家の守護刀として伝えられてきました。

この落語では、名前に「烏(からす)」が入っているため、本物ならカラスが集まるはずなのに、雀が集まったことで假物(竹光)だと分かるという仕掛けになっています。
芸事噺の分類にも属し、同じく小烏丸が登場する演目の「矢橋船」でも同じ落ちが使われています。
物語の中では娘の孝行心と機転、そして鉄医の欲望と愚かさが対比的に描かれ、最後の意外なオチで観客を笑わせる構成になっています。

あらすじ

日本橋石町の質屋の伊勢屋幸右衛門、人呼んで仏の幸右衛門。
女房に先立たれ、後添えももらわずに家族は娘のおてるだけ。

そこに目をつけたのが女中のお梶。
何やかやと幸右衛門の世話を焼き、後妻に納まってしまった。
そうなると今までとは打って変わって、家事も幸右衛門の世話もせず、昼間から二階で鍼医の定安と酒を飲んでいる有様だ。

回りの者はお梶と定安の仲を知っているが、幸右衛門に告げる者もなく、幸右衛門も知ってか知らずか二人は好き勝手に振舞っている。

見兼ねた鳶の頭(かしら)の勝五郎が幸右衛門のところに探りを入れに来る。
川柳の本で、「町内で知らぬは亭主ばかりなり」、「居候亭主の留守にし候」などを読ませて気づかせようとするが、暖簾に腕押しなのか、馬耳東風のように幸右衛門は何の反応も示さない。

勝五郎はお茶を勧められたが飲む気もせず、台所でぶつぶつ言いながら水を飲んでいると、隣の小部屋からおてるが呼ぶ。
おてるは離れの座敷をお梶に明け渡してここに移って、幸右衛門の着物の繕いなどをしているのだ。

おてるは勝五郎に、「このままではこの家はお梶と定安に乗っ取られてしまうでしょう。そうなれば私はともかく人のいい父が可哀想で・・・まずは定安だけでもこの家から追い払いたいと思うのですが・・・」と打ち明ける。
むろん勝五郎も全く同感で、二人は定安を追い出す算段を相談する。

勝五郎が帰った後に、酒に酔った定安が水を飲みに下りて来た。
おてるは色仕掛けで定安に迫る。
おてる 「もうこんな家にはいたくはありません。どうか私を連れて逃げてください」、色ボケ欲ボケのお梶にすっかり飽きていて、前からおてるに下心がある定安には願ったり叶ったり、棚から牡丹餅だ。

定安 「お嬢さんと一緒ならどこまでも・・・」ともう鼻の下を伸ばしている。

おてる 「それじゃ今夜の八つの鐘を合図に私を迎えに来ておくれ」

定安 「どこに逃げるにしても金が要ります。店の金百両と、蔵にある名刀の小烏丸を持って来ておくんなさい」ということで話は決まった。

さてその晩、手筈通りに八つ刻に定安が来て、おてるを駕籠に乗せ、王子の定安の知り合いの家に向かった。
飛鳥山近くまで来ると駕籠屋がぐずぐずと酒手をせびり出した。
旗本の三男と触れ込みの定安は短刀で駕籠屋を追っ払った。

すると駕籠から出て来たおてるが懐から百両の包と小烏丸を出して、
おてる 「さあ、これをあげるからどこへでも行っておしまい」

定安 「何を今さら、さんざとなぶった後に、女郎にでも売り飛ばしてやるから覚悟しろ」と、おてるを引っ張って行こうとする。
そこに飛び入ったのが勝五郎。

定安 「邪魔するねえ!」と、腰に差した名刀、その昔、戸隠の山中で平維茂が鬼を斬ったという小烏丸に手をかけた。
抜けば刀の回りをカラスが群がって来るという。
定安がサァーッと抜き放つと、何と群がって来たのは、チュンチュンチュンチュン、大勢の雀。

定安 「な、な、何と雀が群がるとは・・・」、月光にかざして見ればそれもそのはず竹光だった。


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 小烏丸(こがらすまる) – 平安時代から伝わる名刀。伝承では桓武天皇の時代に八咫烏(やたがらす)が伊勢神宮から運んできたとされ、烏の羽の中から出てきたことから名付けられました。天皇家の守護刀として伝えられてきた実在の名刀です。
  • 竹光(たけみつ) – 竹で作った模造刀。本物の刀に見せかけた偽物で、芝居の小道具などに使われました。この噺では「小烏丸」だと偽って定安に渡されます。
  • 質屋(しちや) – 物品を担保に金銭を貸し付ける商売。江戸時代には庶民の重要な金融機関でした。信用が第一の商売で、「仏の幸右衛門」のような人格者が経営することが理想とされました。
  • 鳶の頭(とびのかしら) – 鳶職人の親方。江戸の町火消しとしても活躍し、町内の顔役として信頼される存在でした。この噺の勝五郎も町内の世話役として登場します。
  • 鍼医(はりい) – 鍼治療を行う医者。江戸時代には按摩や鍼灸が一般的な治療法で、鍼医は各家を往診して回りました。定安はこの立場を利用して不倫をしています。
  • 八つ時(やつどき) – 江戸時代の時刻で、現在の午後2時頃または午前2時頃を指します。この噺では夜の八つ時(午前2時頃)で、人目につかない時間帯を選んでいます。
  • 駄落ち(だおち) – 駆け落ちのこと。家族の許しを得ずに恋人と逃げることを指します。江戸時代には家の財産を持ち出して逃げる重罪でした。
  • 八咫烏(やたがらす) – 日本神話に登場する三本足の大きなカラス。神武天皇の東征を導いたとされ、神の使いとして崇められています。

よくある質問(FAQ)

Q: 小烏丸は本当に存在する名刀ですか?
A: はい、小烏丸は実在する名刀です。平安時代から伝わる日本刀の一つで、現在も皇室に伝わっているとされます。この噺では、その由来(烏が運んできた)を利用して、本物なら烏が集まるはずという設定にしています。

Q: なぜ竹光だと雀が集まるのですか?
A: これはオチの仕掛けです。「小烏丸」という名前には「烏(カラス)」が入っているため、本物なら烏が集まるはずですが、実は竹光(偽物)だったため、竹に集まる雀が来たという言葉遊びになっています。

Q: おてるはなぜ定安を駄落ちさせたのですか?
A: 父親の幸右衛門は後妻のお梶と定安の不倫に気づいていません。このままでは家が乗っ取られると心配したおてるが、定安を家から追い出すために色仕掛けで誘い出し、偽の小烏丸を渡して追い払う計略を立てたのです。

Q: この噺のオチは「考え落ち」とはどういう意味ですか?
A: 「考え落ち」とは、オチを聞いた瞬間にすぐ笑えるのではなく、一瞬考えた後に「なるほど!」と理解して笑えるタイプのオチです。烏→本物、雀→竹(偽物)という対比を理解した瞬間に面白さがわかる仕掛けになっています。

Q: この噺は上方落語ですか、江戸落語ですか?
A: 江戸落語の演目です。上方では「竹光」という題名で演じられることもあります。同じく小烏丸が登場する「矢橋船」という演目でも類似のオチが使われています。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 六代目桂文治 – 明治から昭和にかけて活躍した名人。この噺を十八番の一つとし、おてるの孝行心と機転を丁寧に描く演出で知られました。
  • 桂歌丸 – 笑点でも知られる名人。人情噺として、父を思う娘の心情と定安の愚かさを対比させた演出が印象的でした。
  • 古今亭志ん朝(三代目) – 美声と品格ある語り口で、登場人物の心理を細やかに表現しました。特に最後の考え落ちの間が絶妙でした。
  • 柳家小三治(十代目) – 人間国宝。繊細な心理描写で、おてると勝五郎の計略、定安の欲望を巧みに演じ分けました。

関連する落語演目

同じく「名刀・刀」が登場する古典落語

同じく「不倫・浮気」がテーマの古典落語

同じく「娘の孝行心」を描いた古典落語

この噺の魅力と現代への示唆

「小烏丸」は、孝行娘の機転と悪人への制裁を描いた痛快な人情噺です。

この噺の核心は、おてるという若い娘の聡明さと勇気にあります。父親が後妻とその愛人の不倫に気づかず、このままでは家が乗っ取られてしまうという危機的状況で、おてるは自ら行動を起こします。鳶の頭・勝五郎に相談し、色仕掛けで定安を誘い出し、偽の小烏丸を渡して追い払うという計略は、見事なまでに計算されています。

現代でも、家族を守るために子供が行動を起こさなければならない状況は存在します。親の再婚相手や恋人による財産目当ての接近、認知症の親を狙った詐欺など、形は違えど本質的には同じ問題です。おてるのように、冷静に状況を判断し、信頼できる第三者(勝五郎)に相談して対策を立てるという姿勢は、現代にも通じる知恵といえます。

また、この噺は「見かけに騙されるな」という教訓も含んでいます。定安は「旗本の三男」と称していますが、実際には欲深い鍼医に過ぎません。小烏丸という名刀も、実は竹光という偽物でした。外見や肩書きに騙されず、本質を見抜くことの大切さを、この噺は教えてくれます。

特に興味深いのは、幸右衛門の「仏」というあだ名です。これは人格者であることを示していますが、同時に人が良すぎて騙されやすい性格も表しています。現代でも、優しさや信頼が裏目に出て、悪意のある人間に利用されるケースは少なくありません。信頼することと警戒心を持つことのバランスが重要だという、普遍的なメッセージが込められています。

オチの「考え落ち」も秀逸です。烏→本物、雀→竹(偽物)という対比は、言葉遊びの妙味を味わえます。「小烏丸」という名刀の由来(八咫烏が運んできた)を知っていれば、オチの面白さが倍増します。これは落語が持つ教養的な側面を示しており、江戸の庶民が持っていた知識や機知の豊かさを感じさせます。

実際の高座では、おてるの色仕掛けの場面、定安の欲に目がくらむ様子、最後に竹光だと気づく瞬間の演技が見どころです。特に「チュンチュンチュン」と雀の鳴き声が聞こえてくる場面は、演者の力量が試される名場面です。ぜひ生の落語会や動画配信でお楽しみください。

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