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【古典落語】黄金餅 あらすじ・オチ・解説 | 守銭奴坊主の最期と隣人の一獲千金物語

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話芸の殿堂-古典落語-黄金餅
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黄金餅

3行でわかるあらすじ

守銭奴の坊主・西念が病気で餅を欲しがり、餅の中に金貨を詰め込んで飲み込む。
餅が詰まって死んでしまい、隣人の金兵衛が遺体を焼いて中の金を取り出す。
その金を元手に金兵衛は目黒で餅屋を開業し、大繁盛して成功を収める。

10行でわかるあらすじとオチ

下谷山崎町の裏長屋に住む坊主の西念は、托鉢で金を集めて貯め込む守銭奴。
病気で寝込んでいる西念を隣の金山寺味噌売りの金兵衛が見舞いに来る。
西念があんころ餅を食べたいと言うので、金兵衛が買ってきてやる。
西念は人前で食べられないと言うので、金兵衛は壁の穴から様子を覗く。
西念は餅の餡を出し、中に胴巻きから取り出した一分金や二分銀を詰め込む。
金入りの餅を飲み込むが、のどに詰まって苦しがり始めて死んでしまう。
大家に相談すると、西念の遺言で金兵衛の寺に葬ってくれと頼まれていた。
長屋の連中と死体を運び、いい加減な坊主に経をあげてもらい焼き場へ。
金兵衛は遺体の腹の部分を生焼けにしてもらい、後で鯵切り包丁で裂いて金を取り出す。
その金を元手に目黒で餅屋を開いた金兵衛は大繁盛し、これが「黄金餅」の由来となった。

解説

「黄金餅」は江戸落語の中でも特に異色な作品で、死体損壊という現代では犯罪行為にあたる内容を扱っています。しかし江戸時代の庶民にとって、守銭奴への風刺と「悪銭身に付かず」の教訓を込めた人情噺として受け入れられていました。

西念の金への執着は病的なレベルで、最期まで金を手放せずに命を落とすという皮肉な結末を迎えます。一方で金兵衛は、偶然手に入れた金で正当な商売を始めて成功するという対照的な描写がなされています。この構造により、正直な労働の価値と金銭欲の危険性を同時に描いています。

落語としての技法面では、西念の死から金兵衛の成功まで一気に語り切る構成が秀逸で、聞き手に強烈な印象を残します。現代の感覚では受け入れがたい部分もありますが、江戸庶民の価値観と人間観察の鋭さを知る上で貴重な演目といえるでしょう。

あらすじ

 下谷山崎町の裏長屋に住む坊主の西念は、頭陀袋をさげて市中を回り金をもらい貯めこんでいる。
西念が患って寝込んでいる所へ、隣の部屋に住む金山寺味噌売りの金兵衛が見舞いに来る。
ケチな西念は医者にもかからず、薬も飲んでいないという。

西念があんころ餅が食べたいというので金兵衛が買ってきてやる。
西念は人が見ている前では食べられないというので、金兵衛は自分の部屋に戻り壁の穴から覗くと、西念は餅の餡(あん)を出し、餅の中に胴巻きの中から取り出した一分金、二分銀を詰め込み飲み込んでいる。

そのうちに餅が胸につかえ苦しがり始めた。
金兵衛はあわてて助けようとしたが死んでしまう。
大家に知らせに行くと、大家は西念から、「金さんの寺へ葬ってくれ」と頼まれている言う。
長屋の連中と死体の入った樽を担ぎ、麻布絶江釜無村木蓮寺へ向う。

夜中に木蓮寺に着き、くさやの干物で冷や酒を飲んでいる坊主にいいかげんな経をあげてもらう。
天保銭六枚で焼き場の切手(許可証)をもらい、金兵衛ひとりで死体をかつぎ、桐ヶ谷の焼き場へ持っていく。

仏の遺言だから腹の所だけは生焼けにしといてくれと頼み、新橋で夜明けまで時間をつぶした金兵衛は焼き場に戻り、焼いた死体を鯵切り包丁で裂き、金を懐にして立ち去ってしまう。

この金を元手に、金兵衛は目黒に餅屋を出してたいそう繁盛したという、黄金餅の由来の一席。


さらに詳しく知りたい方へ

落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 守銭奴(しゅせんど) – 金銭を異常に惜しみ、貯め込むことばかり考える人。西念はその典型として描かれています。
  • 托鉢(たくはつ) – 僧侶が鉢を持って各家を回り、食べ物や金銭の施しを受けること。西念はこれを利用して金を貯め込んでいました。
  • 頭陀袋(ずだぶくろ) – 僧侶が托鉢の際に肩から掛ける袋。施しを受けた物を入れます。
  • 下谷山崎町(したやまやざきちょう) – 現在の東京都台東区下谷付近。江戸時代の下町の一角で、庶民が住む長屋が多くありました。
  • 金山寺味噌(きんざんじみそ) – 野菜や香辛料を加えた甘口の味噌。金兵衛はこれを売って生計を立てていました。
  • 一分金(いちぶきん) – 江戸時代の金貨。一両の四分の一の価値。現代の貨幣価値で約2.5〜3.5万円程度。
  • 二分銀(にぶぎん) – 江戸時代の銀貨。一両の二分の一の価値。現代の貨幣価値で約5〜7万円程度。
  • 胴巻き(どうまき) – 腹に巻きつけて金銭を隠し持つための布製の袋。江戸時代、盗難防止のために使われました。
  • あんころ餅 – 餡で包んだ餅。江戸時代から庶民に親しまれた菓子です。
  • 焼き場(やきば) – 火葬場のこと。桐ヶ谷は現在の品川区にあった火葬場です。
  • 天保銭(てんぽうせん) – 天保年間に鋳造された銅銭。一文銭の一種で、価値は低い通貨でした。
  • 鯵切り包丁(あじきりぼうちょう) – 魚をさばくための小型の出刃包丁。金兵衛がこれで遺体を裂いたという設定です。

よくある質問(FAQ)

Q: この噺は実話に基づいているのですか?
A: いいえ、創作です。ただし江戸時代には守銭奴の坊主や、遺体から金品を盗むという話は実際にあったため、そうした世相を反映した作品と言えます。

Q: 遺体損壊は当時も犯罪ではなかったのですか?
A: 江戸時代も死体損壊は犯罪でした。しかし落語は道徳を説く教訓話としての側面もあり、「金への執着の末路」を描くためにこの設定が使われました。現代では上演される機会が限られている演目です。

Q: なぜ西念は餅に金を入れて飲み込んだのですか?
A: 金兵衛に見られないため、そして死んでも金を手放したくないという執着のためです。金を体内に入れることで、死後も自分の物にしておこうという病的な守銭奴ぶりが表現されています。

Q: この噺は江戸落語ですか、上方落語ですか?
A: 江戸落語の演目です。下谷、目黒、桐ヶ谷など、江戸の地名が多数登場します。江戸の長屋を舞台にした人情噺の一つです。

Q: 現代でも演じられていますか?
A: 内容の性質上、現代では上演機会が非常に限られています。死体損壊という倫理的に問題のある行為を扱っているため、寄席ではほとんど演じられず、一部の落語会で稀に上演される程度です。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の大名人。この異色の演目を、西念の守銭奴ぶりと金兵衛の逞しさを対比させながら巧みに演じました。
  • 三遊亭圓生(六代目) – 人間国宝。格調高い芸風ながら、この噺でも人間の業を深く描き出し、聞き手に強い印象を残しました。
  • 柳家小三治 – 現代の名人。この噺の持つ江戸庶民の価値観を丁寧に表現し、単なるブラックユーモアではなく人間ドラマとして演じます。

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この噺の魅力と現代への示唆

「黄金餅」は落語の中でも特に異色な作品ですが、その異色さゆえに江戸庶民の価値観を鮮明に映し出しています。現代の倫理観では受け入れがたい内容ですが、当時の人々にとっては「金への執着の末路」を描いた教訓話として機能していました。

西念という人物は、僧侶でありながら托鉢で集めた金を貯め込み、病気になっても医者にかからず、最期まで金を手放さない――その執着は病的であり、同時に哀れでもあります。餅に金を詰め込んで飲み込むという行為は、「死んでも金を手放したくない」という狂気じみた執念を象徴しています。

一方、金兵衛は隣人として西念を見舞い、餅を買ってきてやるという親切心を持った人物として描かれています。偶然手に入れた金を元手に餅屋を開いて成功するという結末は、「正直な労働こそが富を生む」という教訓を含んでいます。ただし、その金の出所を考えると、単純な勧善懲悪とは言えない複雑さがあります。

この噺が現代に投げかける問いは重いものがあります。「不正に得た金で始めた商売は成功してよいのか」「守銭奴の末路は自業自得なのか」「貧しさゆえの執着をどう評価すべきか」――これらの問いに明確な答えはありません。

現代社会でも、金銭への執着が人生を狂わせる例は後を絶ちません。詐欺事件、横領事件、あるいは過労死に至るまでの過度な労働――形は違えど、金のために人間性を失う悲劇は今も続いています。

「黄金餅」は、落語としては稀に見る衝撃的な内容ですが、だからこそ「金とは何か」「人間の価値とは何か」という根源的な問いを投げかけ続けているのです。この噺を通じて、私たちは自分自身の金銭観を見つめ直す機会を得ることができるでしょう。


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