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【古典落語】からくり屋 あらすじ・オチ・解説 | 大飯食いの駆け落ちがからくり口調で展開する珍騒動

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話芸の殿堂-古典落語-からくり屋
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からくり屋

3行でわかるあらすじ

左官の仙太が大飯食いで親方から暇を出され、親方の一人娘おつると駆け落ちして四谷鮫が橋の伯父の家に身を寄せる。
伯父はからくり屋で、翌朝親方のところに掛け合いに行き、縁日の口調で「ドッコイドッコイ」「のぞきからくり」の節回しで交渉する。
親方も同じ口調で応じるが、最後におかみさんが「ハイッ、仙さま(先様)はおかわり」と言って、仙太の大飯食いを皮肉ったオチで落とす。

10行でわかるあらすじとオチ

左官の仙太は不景気で仕事が少ない上に大飯食いということで親方から暇を出される。
親方の一人娘おつると良い仲の仙太は、おつるに頼まれて一緒に駆け落ちすることになる。
二人は四谷鮫が橋にいる仙太の伯父の家に身を寄せ、伯父は縁日でからくり屋をやっている。
伯父はドッコイドッコイ(賭博のような遊戯)やのぞきからくり(覗き見興行)の口上を仙太に教える。
翌朝、伯父が親方のところに掛け合いに行き、二人を夫婦にしてくれと縁日の口調で交渉する。
伯父は「♪もうし、もうし、親方さん、ご思案なさる場合じゃありません」とドッコイ屋の口調で話す。
親方は「婿には取れません」と同じく縁日の節回しで答え、掛け合いが続く。
伯父も「♪ハッソラ~、婿に取ってくだぁさいな」とからくり屋の口調で応じる。
そこへおかみさんが割って入り、おはちを突き出して「ハイッ、仙さま(先様)はおかわり」と言う。
「仙様(仙太)」と「先様(お客様)」を掛けて、仙太の大飯食いを皮肉った絶妙な地口オチで笑いを誘う結末。

解説

「からくり屋」は江戸時代の縁日文化を背景にした滑稽噺で、庶民の娯楽であったからくり興行を題材にしている。
からくり屋とは縁日で機械仕掛けの人形や仕掛けを使った興行を行う商売で、ドッコイドッコイは回転盤を使った賭博的遊戯、のぞきからくりは小さな覗き穴から絵を見せる見世物である。

この噺の見どころは、伯父と親方の掛け合いが全て縁日の口調で行われることで、独特の節回しとリズムが笑いを生んでいる。

特に「♪ハッソラ~」で始まるからくり屋の口上は実際の縁日で使われていたもので、当時の庶民には馴染み深い調子だった。
オチの「仙さま(先様)はおかわり」は二重の意味を持つ地口で、縁日の「先様」(お客様への呼びかけ)と主人公の「仙様」(仙太)を掛け、さらに仙太の大飯食いという設定を巧妙に組み込んだ秀逸な言葉遊びとなっている。

この噺は江戸の庶民文化と人情を巧みに織り交ぜた名作として親しまれている。

あらすじ

左官の仙太は、不景気で仕事が少ないうえに、大飯食いということで親方から暇を出される。
仙太は親方の一人娘のおつるといい仲になっている。
仙太が暇を出されて今夜にも出て行くと言うと、
おつる 「あたしは、お前さんと別れるのはいや。どうか、一緒に連れて行っておくれ」、仙太は恩を受けた親方の一人娘を連れて出ることはできないと断るが、おつるの思いに負けて、

仙太 「そんなにお前さんが思ってくれるんなら、一緒に逃げましょう」ということになった。
暗くなるのを待って、二人は親方の家を出たが、

おつる 「これからいったいどこへ行くの?」

仙太 「とりあえずあたしの伯父さんの家へ行きましょう」

おつる 「伯父さんの家はどこなの?」

仙太 「貧乏で名代の四谷の鮫が橋です」

おつる 「なんのご商売?」

仙太 「あんまり人中で大きい声で言えない、夜の商売で・・・」

おつる 「まあ、泥棒さんかい?」

仙太 「縁日の商人で、ドッコイドッコイにのぞきからくりなんかやってます」

おつる 「ドッコイドッコイってどんなことするの?」

仙太 「真ん中にぶん回しがあって、それを回して針の止まったところに書いてある金花糖なんかの景品が取れるんです」

おつる 「面白そうね。あたしもお店番がしてみたいわ」

仙太 「大きな声で怒鳴るんですよ。"さあ、お張んなさい、お張んなさい、張って悪いは親父の頭、張らなきゃ食えない提灯屋、グルグル回っているうちがお楽しみ、さあ、張らなきゃ損、損、・・・"こんな調子で・・・」

おつる 「面白いわねえ、のぞきからくりっていうのはどういうの?」

仙太 「ほんとに、のぞきからくりも知らねえですんかい。
縁日の中でも真打の大将格ですぜ。小さいのぞき眼鏡がいくつも並んでいて、それを覗くと八百屋お七や何か、いろんな絵が描いてあって、糸で引っ張るとストトン、カラリと絵が代わるんだ」

おつる 「やっぱり"さあ、お張んなさい・・・"って言うの?」

仙太 「からくりの口上は節をつけて歌うんです」、「どんな、節?」

仙太 「駆け落ちしながらからくりの口上なんて・・・」

おつる 「そんなこと言わないで、サワリのところをちょこっと」

仙太 「サワリだなんて・・・ほんの少しですよ。♪ハッソラ~、お寺さんはぁ、駒込の吉祥寺・・・、ソラ~、茶の湯座敷のつぎの間で・・・ソラ~、学問なさる後ろから、ソラ~、膝でつついて目で知らす・・・ソラ~、ガッタン・・・」

おつる 「おほほほ、面白いわねえ」と、無邪気で他愛もない。
鮫が橋の貧乏長屋にやって来て豆腐屋、屑屋、占者、羅宇屋、下駄の歯入れ屋などが住んでいるところを通って伯父さんの家に着いた。

夜遅くに親方の娘を連れて来た仙太を見て、びっくりして訝しがっている伯父さんに、仙太は事の顛末を話すと、
伯父さん 「親方はお前は大飯を食うが、それ以上にいい仕事をするから末にはいい職人になると言っていた。
それが今になって暇を出すとはどういうわけだ。よし、おれが明日の朝、親方のところへ行って話をつけてきてやるから心配するな」、ということで二人は安心して寝てしまった。

一方の親方の家ではおつるがいなくなったので夜通しで大騒ぎ。
そこへ伯父さんがやって来て、
伯父さん 「・・・お嬢さんを仙太の嫁に下さるか、仙太を婿に取って下ださるか、・・・二人は夫婦になれぬのなら淵川にでも身を投げようと・・・(ドッコイ屋の口調で)、♪"もうし、もうし、親方さん、ご思案なさる場合じゃありません。
おかみさん、ぐずぐずなすっていると二人の者が玉なしだ。
ご思案はご損です。
さあ、さあ、お張んなさい・・・・・・グルグル回っているうちがお楽しみ・・・さあ、張った、張った。ご思案はご損ですよぉ"」

親方 「こりゃあ、ドッコイ屋で掛け合いとは恐れ入りやした。だが、仙太は馬鹿馬鹿しい大飯ぐらいで、おつるは大事な一人娘、嫁にはやれず、婿にもできやしません」

伯父さん (からくり屋の節回しで)♪「ハッソラ~、おっしゃるところはごっもとも、・・・朝に三膳、昼三膳、ハッソラ~、夜が四膳は職人衆のお定まり・・・一緒にさせてくださいな・・・、ガッタン」

親方 「お前さんがどんな掛け合いをしようとも、(からくり屋の口調)♪婿にはぁ、取れませ~んよ」

伯父さん ♪「ハッソラ~、婿に取ってくだぁさいな」

親方 ♪「いいえ、婿にはぁ、取れませ~んよ」、そばから、おかみさんがおはちをぐいっと突き出し、
「ハイッ、仙さま(先様)はおかわり」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • からくり屋 – 江戸時代の縁日で機械仕掛けの人形や仕掛けを使った興行を行う商売。のぞきからくりやドッコイドッコイなどの遊戯を提供し、独特の口上で客を呼び込みました。
  • ドッコイドッコイ – 回転盤を使った賭博的な遊戯。中央の回転板を回して針が止まった場所に書かれた景品(金花糖など)がもらえる仕組み。「さあ、お張んなさい」という口上が特徴的でした。
  • のぞきからくり – 小さな覗き穴から絵を見せる見世物興行。八百屋お七や曽我兄弟などの物語を絵巻にして、糸で引っ張ると次の絵が現れる仕掛け。独特の節回しの口上で物語を語りました。
  • 左官(さかん) – 壁塗りや土壁造りを専門とする職人。江戸時代は建築需要が高く、腕の良い左官は重宝されました。
  • 四谷鮫が橋(よつやさめがばし) – 現在の東京都新宿区四谷にあった地名。江戸時代は貧しい人々が住む長屋が多い地域として知られていました。
  • 金花糖(きんかとう) – 砂糖を型に入れて固めた飴菓子。鯛や恵比寿様など様々な形があり、縁日の景品として人気がありました。
  • 地口(じぐち) – 言葉の音が似ていることを利用した洒落や言葉遊び。「仙様」と「先様」を掛けたこの噺のオチは典型的な地口オチです。
  • おはち(お鉢) – ご飯を盛る飯櫃(めしびつ)やお椀のこと。大飯食いの仙太を象徴する小道具として使われています。

よくある質問(FAQ)

Q: からくり屋とはどんな商売だったのですか?
A: 江戸時代の縁日で機械仕掛けの人形や見世物を提供する興行師です。代表的なものに「のぞきからくり」(覗き眼鏡で絵を見せる)、「ドッコイドッコイ」(回転盤の賭博遊戯)、「座敷からくり」(機械人形)などがありました。独特の節回しの口上で客を呼び込み、庶民の娯楽として人気がありました。

Q: 「仙さま(先様)はおかわり」というオチの意味は?
A: 二重の意味を持つ地口(言葉遊び)です。「先様」は縁日の口上で客を呼ぶ時の言葉(お客様の意味)ですが、同時に主人公「仙太」の「仙様」とも掛けています。さらに「おかわり」で仙太の大飯食いという設定を皮肉っており、三重の意味が重なった秀逸なオチです。

Q: なぜ仙太は暇を出されたのですか?
A: 表向きの理由は「大飯食い」で食費がかかるからですが、実際には不景気で仕事が少なかったことが背景にあります。江戸時代の職人は親方の家で食事を提供されるのが一般的で、仕事が少ない時期に大飯食いの職人を抱えることは親方にとって経済的負担でした。

Q: 駆け落ちした二人はその後どうなるのですか?
A: 落語はオチで終わるため、その後の展開は明示されていません。しかし、おかみさんの「おかわり」という言葉には、大飯食いの仙太を婿として受け入れることへの皮肉と諦めが込められており、最終的には二人の結婚を認める方向に話が進むことが暗示されています。

Q: この噺は江戸落語ですか、上方落語ですか?
A: 江戸落語の演目です。四谷鮫が橋という江戸の地名が登場し、江戸の縁日文化を題材にしています。左官職人や長屋の暮らしなど、江戸の庶民生活が色濃く反映された作品です。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 古今亭志ん朝(三代目) – からくり屋の口上を軽妙に演じ、リズミカルな語り口が絶品でした。特に「♪ハッソラ~」の節回しが印象的で、多くの落語ファンに愛されました。
  • 柳家小三治(十代目) – 人間国宝。細やかな心理描写で仙太とおつるの純情さを表現し、伯父の人情味あふれる性格も丁寧に描きます。
  • 春風亭小朝 – 独特の声質と表現力で、縁日の賑やかな雰囲気を見事に再現。からくり屋の口上場面が特に印象的です。
  • 柳家喬太郎 – 現代の人気落語家。若い世代にも分かりやすい解説を加えながら、古典の味わいを保った演出が特徴です。

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この噺の魅力と現代への示唆

「からくり屋」の最大の魅力は、江戸時代の縁日文化を活き活きと描いている点です。

からくり屋の口上「♪ハッソラ~」という独特の節回しは、当時の庶民にとって馴染み深い音楽であり、現代で言えばテーマパークのアトラクションやお祭りの屋台の呼び込みに相当します。この噺を聴くと、江戸の縁日の賑わいがまるで目の前に広がるような臨場感を味わえます。

また、大飯食いという理由で職を失う仙太の境遇は、現代の労働問題にも通じるテーマを含んでいます。不景気という経済的理由と、「大飯食い」という個人的特性を結びつけて解雇する構造は、現代の雇用の不安定さや、些細な理由での解雇といった問題を想起させます。

一方で、娘との駆け落ちという一大事を、伯父が縁日の口調で仲裁するという展開は、深刻になりがちな状況をユーモアで包み込む江戸っ子の粋な精神を表しています。真剣な話し合いをからくり屋の口上でやってしまうという発想は、日本人特有の「笑いで場を和ませる」文化の原点とも言えるでしょう。

オチの「仙さま(先様)はおかわり」は、縁日の口調を保ちながら、仙太の大飯食いという設定を見事に回収した名オチです。おかみさんが最後に登場し、男たちの長々とした掛け合いを一言で決着させるという構造も、江戸落語ならではの小気味良さがあります。

実際の高座では、からくり屋の口上の節回しや、ドッコイドッコイの呼び込みの声色など、演者の技量が光る場面が多くあります。特に「♪ハッソラ~」の部分は、演者によって節回しが異なり、それぞれの個性が楽しめます。機会があれば、ぜひ複数の落語家の演じ分けを聴き比べてみてください。


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