【AI落語】扇子寿限無(新作落語)
今回は古典落語の名作「寿限無」を、扇子職人の世界を舞台に新しく仕立て直してみました。扇子というと夏の涼を取る道具として親しまれていますが、その製作には実に多くの専門技術と用語があるんですね。
それらの美しい言葉たちを長い名前に織り込んで、果たして古典の妙味を損なわずに新しい笑いを生み出せるでしょうか。正直、扇子の専門用語を調べながら「こんなに複雑だったのか」と驚いた次第です。どうぞ最後までお付き合いください。
まくら
暑い夏になりますと、扇子が手放せませんな。パタパタと仰いで涼を取る、あの優雅な仕草。でも考えてみると、扇子って不思議な道具ですよね。
開いたり閉じたり、まるで人生みたいじゃありませんか。開けば華やか、閉じればコンパクト。女性が扇子を使う仕草なんて、実に色っぽいもんです。
ところで皆さん、扇子がどうやって作られるかご存知ですか。骨を作る職人、紙を貼る職人、絵を描く職人、それぞれが専門技術を持っているんです。一本の扇子ができるまでに、実にたくさんの工程があるんですな。
そんな扇子職人の世界で起こった、ちょっと変わったお話をひとつ。
あらすじ
扇子職人一家の慶事
江戸は浅草、扇子職人で名を馳せる与兵衛という男がおりました。腕は確かで、特に白竹を使った高級扇子は大名家からも注文が来るほどの腕前です。
その与兵衛に、待望の男の子が生まれました。
「おお、元気な男の子じゃないか」
与兵衛は生まれたばかりの赤ん坊を抱き上げ、嬉しそうに笑みを浮かべます。隣では女房のお花が疲れた顔ながらも安堵の表情を見せています。
「この子にはどんな名前を付けましょうか」
お花が尋ねると、与兵衛は少し考え込みました。扇子職人として代々続く家系、この子にも縁起の良い名前を付けてやりたい。
長すぎる命名
「そうだ、住職様に相談してみよう」
与兵衛は近所の西光寺へ向かいました。住職の慈雲和尚は博学で知られ、特に縁起の良い名前を付けるのが得意なのです。
「和尚様、実は男の子が生まれまして」
「それはそれは、めでたいことじゃ。どのような名前をお望みかな」
「扇子職人の家らしく、縁起が良くて、めでたい名前を」
慈雲和尚は長いこと考え込み、やがて満足そうに頷きました。
「よし、決まった。この子の名前は『白檀香木練り込み金銀箔押し蒔絵装飾本煤竹骨十五間型雲母引き鳥の子紙貼り末広がり扇要錺金具付き涼風招来五節句飾り用高級京扇子』と名付けよう」
「は、はあ…」
「まだまだあるぞ。『滑川和紙重ね貼り朱漆塗り親骨彩色絵付け四季草花文様散らし金泥細描入り風雅風流粋人愛用携帯便利折り畳み式』」
与兵衛の顔は次第に青ざめていきます。
「さらに続くぞ。『夏祭り花火見物納涼船遊び茶会香道華道舞踊用舞台映え抜群格調高き伝統工芸品』」
「和尚様、もう十分では…」
「いやいや、まだ終わらん。『職人魂込めて一本一本手作り仕上げ百年使える一生物家宝級』と、こう名付けるのじゃ」
与兵衛は頭を抱えました。これでは名前を呼ぶだけで一日が終わってしまいます。
長い名前の弊害
それから数年、この長い名前の子供は近所でも評判になりました。みんな面倒くさがって「センス」と呼んでいます。
センスも五つになり、元気に駆け回る年頃です。この日も隣の家の太郎吉と遊んでいました。
「センス、井戸に落ちたぞー!」
太郎吉が大声で叫びます。センスが誤って井戸に落ちてしまったのです。
近所の人たちが慌てて駆けつけました。
「大変だ、誰が落ちたって?」
「白檀香木練り込み金銀箔押し蒔絵装飾本煤竹骨十五間型雲母引き鳥の子紙貼り末広がり扇要錺金具付き涼風招来五節句飾り用高級京扇子滑川和紙重ね貼り朱漆塗り親骨彩色絵付け四季草花文様散らし金泥細描入り風雅風流粋人愛用携帯便利折り畳み式夏祭り花火見物納涼船遊び茶会香道華道舞踊用舞台映え抜群格調高き伝統工芸品職人魂込めて一本一本手作り仕上げ百年使える一生物家宝級が落ちました!」
町内の火消したちが急いで縄を下ろし、救助に向かいます。
「おーい、白檀香木練り込み金銀箔押し蒔絵装飾本煤竹骨十五間型雲母引き鳥の子紙貼り末広がり扇要錺金具付き涼風招来五節句飾り用高級京扇子滑川和紙重ね貼り朱漆塗り親骨彩色絵付け四季草花文様散らし金泥細描入り風雅風流粋人愛用携帯便利折り畳み式夏祭り花火見物納涼船遊び茶会香道華道舞踊用舞台映え抜群格調高き伝統工芸品職人魂込めて一本一本手作り仕上げ百年使える一生物家宝級!大丈夫か?」
「助けてくれー!」と井戸の底から声が聞こえます。
時間の経過
火消したちは必死に縄を引き上げました。
「よし、白檀香木練り込み金銀箔押し蒔絵装飾本煤竹骨十五間型雲母引き鳥の子紙貼り末広がり扇要錺金具付き涼風招来五節句飾り用高級京扇子滑川和紙重ね貼り朱漆塗り親骨彩色絵付け四季草花文様散らし金泥細描入り風雅風流粋人愛用携帯便利折り畳み式夏祭り花火見物納涼船遊び茶会香道華道舞踊用舞台映え抜群格調高き伝統工芸品職人魂込めて一本一本手作り仕上げ百年使える一生物家宝級を引き上げたぞ!」
ところが縄を引き上げてみると、そこにいたのは立派なひげを生やした大人の男性でした。
みんなびっくりです。
「あ、あんた誰だい?」
「私は白檀香木練り込み金銀箔押し蒔絵装飾本煤竹骨十五間型雲母引き鳥の子紙貼り末広がり扇要錺金具付き涼風招来五節句飾り用高級京扇子滑川和紙重ね貼り朱漆塗り親骨彩色絵付け四季草花文様散らし金泥細描入り風雅風流粋人愛用携帯便利折り畳み式夏祭り花火見物納涼船遊び茶会香道華道舞踊用舞台映え抜群格調高き伝統工芸品職人魂込めて一本一本手作り仕上げ百年使える一生物家宝級です」
「センスじゃないか!でもなんでそんなに年を取ってるんだ?」
センスは苦笑いを浮かべて答えました。
「皆さんが私の名前を呼んでいる間に、三十年経っちゃいました」
まとめ
いかがでしたでしょうか。古典落語「寿限無」の扇子職人版、お楽しみいただけましたでしょうか。
扇子の専門用語を調べているうちに、本当に奥深い世界だなと感心してしまいました。白檀や煤竹、雲母引きに蒔絵装飾など、一つ一つが美しい響きを持つ言葉ばかりです。これらを長い名前に織り込むのは楽しい作業でした。
古典の「時間が経ってしまう」というオチは、やはり秀逸ですね。名前の長さが時間の経過と直結するという発想の面白さは、何度聞いても笑ってしまいます。
個人的には、井戸から引き上げられたセンスが立派な大人になっているところが気に入っています。30年という具体的な数字で落とすのも、古典に敬意を表しつつの現代的なアレンジかなと思います。
皆さんも暑い夏には扇子を手に取って、涼を楽しんでくださいね。そしてもしよろしければ、他の落語作品もご覧いただければ幸いです。


