寿限無 落語|あらすじ・オチ「こぶが引っこんじゃった」意味を完全解説
寿限無(じゅげむ) は、古典落語の中で最も有名な前座噺。長生きを願う父親が縁起の良い名前を全部つけて超長い名前になり、「こぶが引っこんじゃった」という時間経過を表す秀逸なオチで締める言葉遊びの傑作です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 演目名 | 寿限無(じゅげむ) |
| ジャンル | 古典落語・前座噺 |
| 主人公 | 熊さん(子供に名前をつけたい父親) |
| 舞台 | 長屋・お寺 |
| オチ | 「こぶが引っこんじゃった」 |
| 見どころ | 超長い名前、言葉遊び、早口 |

じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ
かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ
くうねるところに すむところ やぶらこうじの ぶらこうじ
パイポパイポ パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
ちょうきゅうめいの ちょうすけ
3行でわかるあらすじ
熊さんが子供に長生きの名前をつけたいと和尚に相談し、縁起の良い名前を全部つけて超長い名前になった。
子供が成長して友達が迎えに来ても、名前を呼び終わる前に先に学校へ行ってしまう。
喧嘩でこぶができたと言いつけに来た子が、名前が長すぎて話している間にこぶが引っこんでしまった。
10行でわかるあらすじとオチ
熊さん夫婦に男の子が生まれたがお七夜になっても名前がつかず、和尚に長生きする名前をつけてもらいに行く。
和尚が「寿限無」を提案すると熊さんが気に入り、さらに「五劫のすりきれ」「海砂利水魚」も教える。
続いて「水行末、雲来末、風来末」「食う寝るところに住むところ」「やぶらこうじのぶらこうじ」も追加。
「パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナ」も加わる。
最後に「長久命の長助」まで全部つけて、とてつもなく長い名前が完成してしまう。
子供は健康に育って小学生になるが、友達の金坊が迎えに来ても名前を呼び終わる前に先に行ってしまう。
父親譲りの腕白坊主で喧嘩好きの寿限無は、今日も亀坊の頭をぶって大きなこぶを作ってしまう。
亀坊が泣きながら言いつけに来て「寿限無寿限無…長助ちゃん」がぶったと長い名前で訴える。
熊さんが「どれ、見せてみな。どこだこぶは?こぶなんかねえじゃあねえか」と言うと、亀坊が答える。
「あんまり名前が長いから、こぶが引っこんじゃった」というのがオチ。
解説
「寿限無」は1884年以前から存在する古典落語の代表的な前座噺で、落語界では修行中の前座が最初に覚える演目の一つです。発声練習や滑舌訓練にもなるため、技術向上の教材としても重要な位置を占めています。シンプルな構造でありながら、長い名前を何度も早口言葉のようにたたみかける部分では、落語家の技術が如実に現れる演目です。
この落語の魅力は、単なる滑稽噺を超えた言葉遊びの妙にあります。寿限無の名前に含まれる各要素は、「寿限無」(寿命に限りがない)、「五劫のすりきれ」(天人が岩を撫でてすり減らす気の遠くなる時間)、「海砂利水魚」(海の砂利と魚は取り尽くせない)など、すべて仏教的概念や縁起の良い言葉から成り立っています。これらの意味を知ることで、親の子への愛情がより深く理解できる構造になっています。
見どころは話の緩急のつけ方と早口言葉の部分での技術です。前半の和尚との会話では丁寧に各名前の意味を説明し、後半では同じ長い名前を繰り返すことで時間の経過を表現する巧妙な仕掛けがあります。また、時代や流行に応じて噺家が内容をアレンジできる柔軟性も持ち、古典でありながら常に新鮮さを保てる演目として愛され続けています。
あらすじ
お七夜になっても生まれた男の子の名前がついていない熊さん夫婦。
熊さんはおかみさんの勧めでお寺の和尚に名前をつけてもらいに行く。
熊さんは和尚に長生きする名前をつけてくれと頼む。
和尚は鶴吉、亀吉などを提案するが、熊さんは乗り気になれない。
和尚 「経文の中にはめでたい文字がいくらでもある。”寿限無”はどうかな。寿限り無しで、死ぬ時がないということだ」
熊さん 「こりゃあいいや、ほかにはありませんか?」
和尚 「”五劫(ごこう)のすりきれ”はどうじゃ。
一劫というのは、三千年に一度、天人が天下って、下界の岩を衣で撫でるのだが、その岩を撫で尽くしてすり切れて無くなってしまうのを一劫という。それが五劫と言うから、何万年、何億年か数え尽くせない」
熊さん 「こりゃあ、ますますいいや。まだありますか?」
和尚 「”海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)”などはどうじゃ。海の砂利も水に棲む魚も、取り尽くすことが出来ないということでめでたいな」
熊さん 「へぇー、なるほど。もうありませんか?」
和尚 「”水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)”なんてのもある。水の行く末、雲の行く末、風の行く末、いずれも果てしがなくてめでたいな」
熊さん 「ますます嬉しいねえ。まだありますか」
和尚 「”食う寝るところに住むところ”、人間、衣食住のうち、1つが欠けても生きてはいけない」
熊さん 「もうありませんか?」
和尚 「”やぶらこうじのぶらこうじ”というのもある。藪柑子(やぶこうじ)という木があって、まことに丈夫で、春は若葉を生じ、夏は花咲き、秋は実を結び、冬は赤き色を添えて霜をしのぐめでたい木じゃ」
熊さん 「もっとありますか」
和尚 「”パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナ”というのがあるな。昔、唐土にパイポという国があって、シューリンガンという王様とグーリンダイという王后の間に生まれた、ポンポコピーとポンポコナーという二人のお姫様が大そう長生きをした」
熊さん 「もうないでしょ」
和尚 「まだまだある。天長地久という文字で読んでも書いてもめでたい結構な字で、それをとって”長久命(ちょうきゅうめい)”、それに長く助けるという意味で”長助”なんていうのもいいな」
熊さん 「へえ、ありがとうございます。一番初めの寿限無から最後の長助まで紙に書いてくださいな」、
和尚の書いてくれた紙を熊さんは読み上げる。「ええー、”寿限無寿限無、五劫のすり切れ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助”、うーん、こう並べてみるとみんなつけてえ名前ばかりですねえ」
長屋に帰った熊さんはおかみさんを説き伏せて、恐ろしく長たらしい名前をつけてしまった。
さて、この名前が性(しょう)に合ったのか、仏法の功徳なのか”寿限無寿限無・・・・・・長久命の長助”ちゃんは病気一つすることもなく、すくすくと育って小学生になった。
毎朝、友達の金坊が迎えに来る。「”寿限無寿限無・・・・・・長助ちゃん”、学校へ行こうよ」
かみさん 「金ちゃんいつもありがとう。”寿限無寿限無・・・・長助”や金ちゃんがお迎えに来たよ。早くしないと遅刻するよ」、金ちゃんはかみさんが呼んでいる間に「遅刻しちゃうから先に行くよ」といつも先に行ってしまう。
“寿限無寿限無・・・・・・長助”は父親譲りの腕白坊主で喧嘩が大好き。
今日もぶたれた亀坊が頭に大きなこぶをつくって泣きながら言いつけに来た。「あーん、あーん、おばさんとこの”寿限無寿限無・・・・・・長助ちゃん”があたいの頭をぶって、こんな大きなこぶこしらえたよ・・・あーん、あーん」
かみさん 「あらあら、またかい。
すまなかったねえ亀ちゃん。お前さん、うちの”寿限無寿限無・・・・・・長助”が亀ちゃんの頭をぶってこぶこしらへたんだとさ」
熊さん 「じゃあなにか、うちの”寿限無寿限無・・・・・・長助”にぶたれてこぶができちまったのか。
どれ、見せてみな。どこだこぶは?こぶなんかねえじゃあねえか」
亀坊 「あんまり名前が長いから、こぶが引っこんじゃった」
落語用語解説
- 寿限無(じゅげむ) – 寿命に限りがないという意味。長寿を願う縁起の良い言葉。
- 五劫のすりきれ – 天人が岩を撫でて消えるまでの気の遠くなる時間(一劫の五倍)。
- 海砂利水魚 – 海の砂利と魚は取り尽くせないという意味で永遠を表す。
- 藪柑子(やぶこうじ) – 赤い実をつける常緑の低木。四季を通じて美しく、めでたい木とされる。
- 前座噺 – 落語家が修行中に最初に覚える基本的な演目。寿限無はその代表。
よくある質問(FAQ)
Q: 「こぶが引っこんじゃった」というオチの意味は?
A: 名前が長すぎて、言い終わるまでに時間がかかりすぎて、その間にこぶが治ってしまったという時間の経過を表す落語らしいオチです。
Q: 寿限無の名前にはどんな意味がありますか?
A: すべて長寿や永遠を願う縁起の良い言葉で構成されています。「寿限無」は寿命無限、「五劫のすりきれ」は気の遠くなる時間、「パイポ」は長生きした姫の名前など、親の子への深い愛情が込められています。
Q: なぜ寿限無は落語家が最初に覚える演目なのですか?
A: 長い名前を早口で何度も繰り返すため、発声練習や滑舌訓練になるからです。また、シンプルな構造で覚えやすく、技術の基礎を学ぶのに最適な演目です。
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