十徳
3行でわかるあらすじ
八五郎が隠居のところで十徳という着物の名前の由来を教わり、「立てば衣のごとく、座れば羽織のごとく、ごとくごとくで十徳だ」と覚える。
友達に自慢しようとするが「ごとく」が正しく言えず、「や〜だ」「むてえだ」「よってる」「したりだ」などに変わってしまう。
友達がそれぞれの言葉に対して的外れな返しをして、八五郎の薀蓄自慢が見事に失敗する言葉遊びのオチ。
10行でわかるあらすじとオチ
八五郎が隠居のところに遊びに行くと、隠居が十徳という変わった着物を着ている。
隠居は十徳の名前の由来を「立てば衣のごとく、座れば羽織のごとく、ごとくごとくで十徳だ」と説明する。
ついでに両国橋や一石橋の由来も教えてくれて、八五郎は薀蓄を仕入れて喜ぶ。
友達に薀蓄を自慢しようとするが、両国橋や一石橋の話は既に知られていて相手にされない。
しかし十徳の由来は友達も知らないので、八五郎は得意げに説明を始める。
ところが「ごとく」という言葉がうまく言えず、「立てば衣のようだ、座れば羽織のようだ、ヨウだヨウだで、や〜だ」と変わってしまう。
友達が「いやならやめちめぇ」と的外れな返しをすると、今度は「みてえみてえでむてえだ」と言ってしまう。
「眠むたけりゃ寝ちまいな」と言われ、次は「にてるにてるで、よってる」になり「酔っぱらっているのか」と言われる。
最後に「ニタリニタリで、うーん、これはしたりだ」と変形し、したり顔になって終わる。
薀蓄を自慢したかった八五郎が語尾を間違えて、全く意図しない会話になってしまう言葉遊びのオチ。
解説
「十徳」は江戸落語の言葉遊びを代表する名作の一つである。
十徳とは実際に存在した着物で、袖がなく前を打ち合わせて着る羽織に似た衣服のことを指す。
隠居が説明する「立てば衣のごとく、座れば羽織のごとく」という表現は、この衣服の特徴を的確に表している。
この噺の面白さは、知識を自慢したい八五郎の気持ちと、それがうまくいかない滑稽さにある。
「ごとく」という古風な表現が現代の江戸っ子には言いにくく、それが様々な言葉に変化していく過程が絶妙である。
友達の返しも絶妙で、「や〜だ→いやならやめちめぇ」「むてえだ→眠むたけりゃ寝ちまいな」「よってる→酔っぱらっているのか」など、音の類似から全く違う意味に解釈されてしまう。
最後の「したりだ」で八五郎がしたり顔になるのも、結果的に満足してしまう人間の可愛らしさを表現している。
この噺は単なる言葉遊びを超えて、江戸の人々の知識欲と日常の滑稽さを巧みに描いた傑作である。
あらすじ
八五郎が隠居の所へ遊びに行くと、隠居は変わった着物を着ている。
聞くと十徳(じっとく)だそうだ。
八さんが、何で十徳というのか聞くと、「立てば衣のごとく、座れば羽織のごとく、ごとくごとくで十徳だ」という答え。
さらに、「武蔵国と下総国の両国をつないだから両国橋で、一石橋は、呉服町の呉服屋の後藤と、金吹町の金座御用の後藤が金を出し合って架けたから、ゴト(五斗)とゴトで一石だ」と追加までしてくれた。
仕入れた薀蓄をすぐに誰かに喋らなければ気がすまない八さんは友達を捕まえ、「両国橋のいわれは知っているか」に、「そんなこと子どもでも知っている」と軽くいなされ、一石橋も知っていてダメだ。
それではと十徳のいわれはと聞くとさすが友達もこれは知らない。
やっと我が意を得たりと八さんは自慢げに十徳のいわれを披露だ。
八さん 「ええと、立てば衣のようだ、座れば羽織のようだ、ヨウだヨウだで、や~だ」
友達 「いやならやめちめぇ」
八さん 「そうじゃねえ、立てば衣みてえ、座れば羽織みてえ、みてえみてえでむてえだ」
友達 「眠むたけりゃ寝ちまいな」
八さん 「立てば衣に似てる。
座れば羽織に似てる。にてるにてるで、よってる」
友達 「おめぇ、昼間から酔っぱらっているのか、いいご身分だな」
八さん 「違った、立てば衣に似たり、座れば羽織に似たり、ニタリニタリで、うーん(したり顔で)、これはしたりだ」
落語用語解説
- 十徳(じっとく) – 袖がなく前を打ち合わせて着る羽織に似た衣服。茶人や医者などが着用した。
- 隠居 – 家督を譲って引退した人。落語では物知りな老人として登場することが多い。
- 薀蓄(うんちく) – 深く研究して蓄えた知識。落語では自慢したがる人物の特徴として描かれる。
- 両国橋 – 武蔵国と下総国を結ぶ橋。隅田川に架かる江戸の名所。
- 一石橋 – 後藤家が金を出し合って架けた橋。五斗と五斗で一石という洒落から命名。
よくある質問(FAQ)
Q: 「ごとく」とは何ですか?
A: 「〜のごとく」は「〜のように」という意味の古風な表現です。八五郎はこの言い回しが難しくて、「ようだ」「みてえだ」「にてる」などに言い換えてしまいます。
Q: 最後の「したりだ」というオチの意味は?
A: 「したり」は物事がうまくいった時の満足げな表情を指します。八五郎が結局「ごとく」を言えなかったのに、なぜか満足げな顔(したり顔)になってしまうという皮肉なオチです。
Q: この落語の見どころは何ですか?
A: 「ごとく」という言葉が「やーだ」「むてえだ」「よってる」「したりだ」と変化していき、友達の返しとズレていく言葉遊びが最大の見どころです。
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