【AI落語】医者こわい(新作落語)
みなさん、こんにちは。今回も「まんじゅうこわい」の型を借りて、新作落語をお届けします。
現代でも医者嫌いの人は多いですが、江戸時代となるとそれはもう…。でも、本当に医者が怖い理由って、人それぞれ違うものなんですよね。
まくら
江戸時代の医者といえば、薬箱を背負って往診に回る姿が目に浮かびます。
当時は今のような設備もなく、診察といっても脈を診て、舌を見て、あとは経験と勘が頼り。
それでも腕のいい医者は評判になり、悪い医者は「やぶ医者」と呼ばれておりました。
医者嫌いの男
ある日、長屋の井戸端に集まった男たちが、健康の話をしておりました。
八五郎「最近、腰が痛くてよ。隣町の先生に診てもらったら、すぐに良くなったぜ」
熊吉「へえ、あの先生は評判いいからな。俺も先月、腹痛で世話になった」
すると、部屋の隅で青い顔をしている定助が口を開きました。
定助「医者の話はやめてくれ…」
一同「どうした定助?」
定助「俺は医者が怖くてたまらねえんだ」
恐怖の理由
みんなが心配そうに定助を見つめる中、彼は震え声で話し始めました。
定助「医者ってのは恐ろしいもんだ。まず、あの薬箱を見ただけで震えが来る」
八五郎「薬箱が?」
定助「ああ、中に何が入ってるかわからねえ。苦い薬、臭い薬、変な色の薬…」
熊吉「そりゃ病気を治すための薬だろ」
定助「それがよ、脈を診るっていって手首を掴まれるだろ?あの冷たい手がたまらねえ」
確かに医者の手は妙に冷たいことが多いと、みんなも頷きました。
定助「舌を出せって言われて、べーっと出すのも恥ずかしい」
八五郎「子供みてえなこと言うなよ」
定助「それに、着物を脱がされて体中を触られる。『ここは痛むか』『ここはどうだ』って」
熊吉「診察してるんだから当たり前だろ」
定助「最後に針を刺されたり、灸をすえられたり…考えただけで気が遠くなる」
みんなの心配
定助の様子があまりにも深刻なので、みんな本気で心配し始めました。
八五郎「でも定助、病気になったらどうするんだ?」
定助「病気にならねえように気をつけてる。でも、医者の看板を見ただけで具合が悪くなる」
熊吉「それじゃあ本末転倒じゃねえか」
定助「この間なんか、医者が往診で長屋に来たって聞いただけで、一日中部屋に閉じこもってた」
一同「そこまで!?」
試してみることに
いたずら好きの八五郎が提案しました。
八五郎「そんなに医者が怖えなら、ちょっと試してみようぜ」
定助「や、やめろ!」
八五郎「なあに、本物の医者を呼ぶわけじゃねえ。俺が医者の真似をしてやる」
熊吉「面白そうだな」
八五郎は手ぬぐいを頭に巻いて、薬売りの真似を始めました。
八五郎「さあ、脈を診せなさい」
定助「ひいっ!来るな!」
熊吉も加わって、「舌を出して」「ここを押すと痛いか」と医者の真似をします。
定助「やめてくれ!本当に怖えんだ!」
意外な反応
みんなでからかっていると、定助の様子が少し変わってきました。
定助「その…脈の取り方が違う」
八五郎「え?」
定助「医者は三本の指で軽く押さえるんだ。お前のは力が入りすぎてる」
熊吉「詳しいじゃねえか」
定助「それに、舌を診るときは、もっと明るいところでやらねえと」
みんなが不思議そうに見ていると、定助はさらに続けました。
定助「腹を押すときも、順番があるんだ。まず右下から始めて…」
八五郎「おい、なんでそんなに詳しいんだ?」
衝撃の告白
定助は急に立ち上がりました。
定助「実はな…」
一同「実は?」
定助「俺、医者の息子なんだ」
全員「ええっ!?」
定助「親父は名医でな。俺も跡を継ぐはずだった」
熊吉「じゃあ、なんで医者が怖えんだ?」
定助「医者になる修行が怖かったんだよ。朝から晩まで勉強、人体の仕組みを覚えて、薬草の知識も必要」
八五郎「それで逃げ出したのか」
定助「ああ。でも医学の知識は頭に入ってる。だから余計に怖えんだ」
熊吉「どういうことだ?」
定助「素人は知らねえから平気だが、俺は治療の痛みも、薬の苦さも、全部知ってるから」
本当の恐怖
定助は続けました。
定助「でも一番怖えのは…」
一同「一番怖いのは?」
定助「親父に見つかることだ」
八五郎「ああ、勘当されるのが怖えのか」
定助「違う。親父に見つかったら、無理やり医者にされちまう」
熊吉「医者になるのがそんなに嫌か?」
定助「医者ってのは、人の命を預かる仕事だ。その責任の重さを知ってるから怖えんだ」
みんな、定助の深い悩みに同情しました。
定助「だから医者を見ると逃げ出したくなる。『あんたが息子か』って聞かれたらどうしようって」
運命の出会い
そのとき、長屋の入り口から声が聞こえました。
「すみません、この辺りに定助という者はおりませんか?」
定助「げっ!」
立派な身なりの老医者が、薬箱を背負って立っていました。
八五郎「先生、定助ならここに…」
定助「いない!定助なんて知らない!」
老医者はじっと定助を見つめました。
老医者「ほう、知らないと。でも、君は私の息子によく似ている」
定助「に、人違いです!」
老医者「そうか。実は息子が医者になるのを嫌がって逃げ出してな」
熊吉「それは大変ですね」
老医者「でも最近思うんだ。無理強いはよくないと。本人がやりたいことをやればいい」
定助「え…?」
老医者「だから、もし息子に会ったら伝えてくれ。好きに生きろと」
そう言って老医者は立ち去ろうとしました。
定助「親父…」
老医者「ん?」
定助「実は俺…最近、医者もいいかなって思い始めてたんだ」
老医者「ほう?」
定助「長屋の連中が病気で苦しんでるのを見てたら、医学の知識が役に立つんじゃねえかって」
老医者は振り返って微笑みました。
老医者「それなら、一緒に勉強し直すか?」
定助「でも俺、まだ医者は怖えんだ」
老医者「当たり前だ。医者を怖がらない医者なんて、やぶ医者だ」
まとめ
いやあ、最後の親父さんの言葉には参りました。医者を怖がるからこそ、慎重に患者と向き合えるってことなんでしょうね。
定助くんは結局、親父さんと一緒に医者の道を歩むことになったそうです。でも相変わらず医者は怖いんだとか。それでいいんでしょうね。
採点:★★★★☆
親子の情を絡めたオチになりましたが、「やぶ医者」で締めるのは少し安直だったかも。でも、恐怖の裏にある愛情を描けたのは良かったかな。
みなさんも、お医者さんは怖がらずに、でも適度に恐れ敬って、健康には気をつけてくださいね。


