歯医者の待合室交響曲
またまた落語を一本仕上げました。今回は歯医者の待合室が舞台です。あの独特な緊張感、分かりますよね?キーンという音が聞こえただけで身体がこわばる、あの感じ。まあ、私も歯医者は苦手なので、想像と実体験を交えて作ってみました。今度は江戸言葉で粋に参りましょう。
白衣の館の恐怖
歯医者てえのは、どうしてあんなに怖えもんなんでしょうね。
待合室に入った瞬間から、なんとも言えねえ緊張感が漂ってやがる。
消毒液の匂いと、あのキーンって音。
この音を聞くと、大の大人が急に子供に戻っちまう。
患者たちの心理戦
午後 2 時、「さくら歯科医院」の待合室。
4 人の患者が、それぞれソファに座って雑誌を読んでるフリをしてる。
実は、みんな耳をそばだてて診察室の音に神経を集中させてやがる。
「はい、お疲れさまでした」
看護師さんの声。
誰かの治療が終わったらしい。
みんなの心拍数が上がる。
「次は誰だ?」
呼び出しへの恐怖
看護師「田中さーん」
雑誌を読んでた中年男性がビクッと肩を震わせる。
田中さん「は、はい…」
立ち上がりながら、隣の患者に小声で。
田中さん「あの、もし俺が戻ってこなかったら…」
隣の客「縁起でもねえこと言うんじゃねえよ」
田中さんが診察室に消えていく。
残った 3 人、なんとなく結束感が生まれる。
待合室の連帯感
おばちゃん「あたし、もう 3 回も予約変更しちまった」
若い女性「わたしも…虫歯が痛いのに、怖くて」
おじいさん「昔の歯医者はもっと怖かったもんだ。麻酔なんてなくてな」
若い女性「えー!それはさすがに…」
キーン!
診察室から例の音。
3 人「「「ひっ!」」」
おばちゃん「田中さん、大丈夫かしら」
おじいさん「あの音は削ってる音だな。虫歯がでけえんだろう」
若い女性「やめてください、怖いこと言わないで」
推理合戦開始
おじいさん「音で分かるんだよ。キーンが長いと虫歯が深い。キュイーンだと神経に近い」
おばちゃん「キュルキュルだと何です?」
おじいさん「それは…」
キュルキュル!
3 人「「「うわあああ!」」」
若い女性「今のは何の音!?」
おばちゃん「田中さんが…田中さんが…」
おじいさん「いや、あれは歯石取りの音だ」
ホッと胸をなでおろす 3 人。
恐怖の連鎖
と、診察室からくぐもった声。
「いたたた…」
3 人「「「田中さん!」」」
看護師「あ、すみません。ちょっと麻酔が足りなくて」
ブシュー!
麻酔の音。
若い女性「わたし、帰ろうかな…」
おばちゃん「あたしなんて、入れ歯にしちまおうかと思ってる」
おじいさん「入れ歯は入れ歯で大変だぞ。合わないとガクガクして」
若い女性「それも怖い…」
まさかの展開
30 分後、田中さんが戻ってきた。
おばちゃん「田中さん!大丈夫でした?」
田中さん「あ、もう終わりました。全然痛くなかった」
3 人「えぇ?」
田中さん「最近の歯医者は技術が進んでて、麻酔も上手だし」
若い女性「でも、あの音が…」
田中さん「ああ、あれはクリーニングの音ですよ。虫歯じゃなくて歯石取りだけだった」
おじいさん「なんだ、それなら」
看護師「佐藤さーん」
おばちゃん(佐藤さん)「はーい ♪」
さっきまでの恐怖はどこへやら、軽やかに立ち上がる。
残った 2 人、呆然。
おじいさん「なんだ、俺たちの恐怖はただの妄想だったのか」
若い女性「でも、わたしは本当に虫歯が…」
看護師「山田さーん」
若い女性「はい!(意外と元気よく)」
最後に残ったおじいさん、一人でつぶやく。
おじいさん「ワシは入れ歯の調整だから、全然痛くねえんだがな」
まとめ
人間の恐怖心って、大半が妄想から来るんですよね。実際に体験してみると「なーんだ」ってことが多い。歯医者も同じで、技術の進歩で昔ほど痛くなくなってるのに、イメージだけが一人歩きしてる。私もこれを機に、歯医者に行ってみようかな…いや、やっぱりまだ怖い。今回は 80 点の出来栄えです!


