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【古典落語】権助魚 あらすじ・オチ・解説 | 隅田川サメ疑惑だまし合い大作戦

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話芸の殿堂-古典落語-権助魚
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権助魚

3行でわかるあらすじ

おかみさんが旦那の浮気を疑い、飯炊きの権助に一円渡して尾行を依頼する。
権助は旦那に正体を見破られ二円で買収されて寝返り、隅田川で網打ちをしたという嘘の報告をするよう命じられる。
権助が隅田川で捕れるはずのないサメやニシンを証拠として買って帰り、嘘がバレて「人を喰うやつだ」と落とされる。

10行でわかるあらすじとオチ

商家のおかみさんが旦那の浮気を疑い、飯炊きの権助に一円握らせて尾行を依頼する。
旦那が向島の丸安さんに用事があると出かけると、おかみさんは権助をお供につけさせる。
旦那は権助の正体を見抜き、一円の倍額である二円で買収して自分の味方に寝返らせる。
旦那は権助に、両国橋で丸安さんに会って料理屋で騒いだ後、隅田川で網打ちをしたと報告するよう指示する。
証拠として隅田川で捕った魚を買って帰るよう命じ、魚代として五十銭を追加で渡す。
権助は魚屋で「網捕り魚をくれ」と言い、ニシン、スケソウダラ、目刺し、かまぼこ、サメの切り身を購入する。
帰宅した権助は教え込まれた通りにおかみさんに報告するが、時間的に不可能だと見破られる。
そこで権助は隅田川で捕ったという魚を披露するが、北海の魚ばかりで明らかに嘘とバレる。
おかみさんは「隅田川でサメまで捕れるなんて」と泣きじゃくりながら抗議する。
番頭が「サメを、はっはっは、人を喰うやつだ」と、人を騙すという意味とサメが人を食うという意味を掛けて落とす。

解説

「権助魚」は江戸時代の商家を舞台にした古典落語の代表作で、夫婦間の不信と使用人の立ち回りを描いた滑稽噺です。この噺の見どころは、権助が一円から二円へと「値上がり」していく買収劇と、最後に登場する魚類の地理的矛盾にあります。

隅田川は江戸(現在の東京)を流れる川で、そこで網打ちをして捕れるのは淡水魚や近海の魚に限られます。しかし権助が持参したニシンやスケソウダラは北海道近海の魚、目刺しやかまぼこは加工品、そして極めつけはサメという、どれも隅田川では絶対に捕れない魚ばかりです。

このオチは「地口落ち」と呼ばれる落語の典型的な落とし方で、「人を喰う」という慣用句(人を騙す、ばかにするという意味)と、サメが実際に「人を食う」動物であることを掛けた見事な言葉遊びになっています。権助の愚かさと旦那の浮気、そしておかみさんの疑い深さという三者三様の人間模様を、魚という身近な題材で笑いに昇華させた江戸落語の傑作です。

あらすじ

ある商家のおかみさん、旦那がお妾さんを囲っているようで、飯炊きの権助に一円握らせて、旦那のお供をしてお妾の家を突き止めてくれと頼む。

床屋から帰って来た旦那は、向島の丸安さんに用事があるからすぐ出掛けると言う。
おかみさんは嫌がる旦那に権助をお供につけさせる。
旦那は足手まといの権助を巻こうとしたが、そうはさせじと、おかみさんの忠犬、権助はぴったしくっついて離れない。

旦那はおかみさんの企みと察して、権助が一円もらっていることを白状させ二円で買収する。
ころっと寝返って旦那の忠犬となった権助に旦那、「両国橋の袂でばったり丸安さんに出会い、ちょうどよいと柳橋の料理屋の二階でお話しが済んで、芸者、幇間(たいこもち)を呼んでどんちゃん騒ぎ。
天気がいいので隅田川で舟で網打ちを楽しんだ後に、みなさんで湯河原へ向かいました。明日の昼時分にはお帰になります」と、報告するよう言い含め、さらに、「女房は疑り深いから帰りに魚屋で網捕り魚を買って、隅田川で網打ちで捕った魚です」と、お土産に持って帰るようにと作戦を伝授した。

がめつく、しっかり者の権助は魚屋で買う魚代は、この二円から出すのかと旦那に食い下がる。
仕方なく旦那は魚代としてもう五十銭を渡してお妾さんの家へまっしぐらだ。

一方の権助さんは店への帰りがけに魚屋に寄り、「網捕り魚をくれ」、「ここにあるのはみんな網で捕れた魚だ」で、ニシン、スケソウダラ、目刺し、かまぼこ、サメ(鮫)の切り身を買って店に帰った。

さすが権助さん、旦那に教わった通りのことをすらすらと、おかみさんに報告した。
おかみさんは、旦那と権助が店を出たのが2時で今が2時20分、そんないろんなことが出来るはずないと、すぐに権助が旦那に買収されて寝返ったのを見破った。

それならばと権助さん、隅田川で網打ちで捕ったという魚を披露し始めた。
前に並べられた魚を見たおかみさん、泣きじゃくりながら番頭に、「旦那ばかりか、飯炊きの権助まで馬鹿にしやがって、隅田川で捕れたなんて、ニシンにスケソウダラ、目刺しにかまぼこ、一番しまいにはサメまで買って来やがって」

番頭 「サメを、はっはっは、人を喰うやつだ」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 飯炊き(めしたき) – 商家で炊事を担当する下働きの使用人。権助のように知恵が足りない人物として描かれることが多い職種でした。
  • 向島(むこうじま) – 隅田川東岸の地域で、江戸時代から花街として栄えました。「丸安さん」は架空の人名ですが、実際の向島には料亭や待合が多数ありました。
  • 両国橋(りょうごくばし) – 隅田川に架かる橋で、江戸随一の繁華街でした。橋の近くには料理屋や見世物小屋が立ち並んでいました。
  • 柳橋(やなぎばし) – 隅田川河口近くにあった花街。高級料理屋が軒を連ね、芸者遊びの場所として有名でした。
  • 幇間(ほうかん) – 太鼓持ちとも呼ばれる、宴席を盛り上げる職業的な芸人。
  • 網打ち(あみうち) – 船から網を投げて魚を捕る漁法。娯楽としても楽しまれていました。
  • 湯河原(ゆがわら) – 神奈川県の温泉地。江戸時代から湯治場として知られ、箱根と並ぶ行楽地でした。

よくある質問(FAQ)

Q: なぜ権助はこんなに簡単に寝返ったのですか?
A: 一円から二円への「倍額」という金額の魅力もありますが、権助のような下働きの使用人は、おかみさんよりも実際に給金を支払う旦那の方が立場が上だという認識がありました。また、権助の単純な性格設定も寝返りやすさの理由です。

Q: 隅田川では実際にどんな魚が捕れたのですか?
A: 江戸時代の隅田川では、ハゼ、ボラ、スズキ、ウナギ、シジミなどが捕れました。現在と違い水質も良好で、魚が豊富でした。しかし権助が持参したニシン、スケソウダラ、サメなどは北海道近海の魚で、隅田川では絶対に捕れません。

Q: 一円や二円は現在の価値でいくらですか?
A: 江戸時代末期から明治初期の一円は、現在の価値で約2万円〜3万円程度です。権助がおかみさんから貰った一円は約2〜3万円、旦那から貰った二円は約4〜6万円相当になります。魚代の五十銭は約1万円〜1万5千円程度です。

Q: 「人を喰う」の意味は?
A: 「人を喰う」は江戸の言葉で「人をバカにする」「人を騙す」という意味です。このオチは、権助やおかみさんを騙した旦那を指す「人を喰う」と、サメが実際に「人を食べる」魚であることを掛けた言葉遊びになっています。これを「地口落ち」と呼びます。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の大名人。権助の単純さと旦那の狡猾さを見事に演じ分けました。特に魚屋での「網捕り魚をくれ」のやり取りが絶品でした。
  • 古今亭志ん朝(三代目) – 父・志ん生の芸を継承しつつ、より洗練された語り口で人気を博しました。権助の愚直さの表現が秀逸です。
  • 柳家小三治(十代目) – 人間国宝。この噺でも丁寧な人物描写で、三者三様の思惑を巧みに表現します。
  • 春風亭一朝(三代目) – テンポの良い語り口で、買収劇のおかしさを際立たせています。

関連する落語演目

同じく「騙し合い」がテーマの古典落語

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言葉遊びのオチが秀逸な古典落語

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この噺の魅力と現代への示唆

「権助魚」は、買収と裏切りという普遍的なテーマを軽妙な笑いに転換した江戸落語の傑作です。

現代でも企業や組織内で「寝返り」や「二重スパイ」的な行動は存在しますが、この噺では一円から二円への「値上がり」という単純な金銭的誘惑で簡単に忠誠が変わってしまう人間の弱さを、ユーモラスに描いています。

特に注目すべきは、権助の「がめつさ」です。二円で買収された後、さらに魚代として五十銭をせしめる場面は、愚かなようで実は抜け目ない権助の性格を表しています。単純だが欲深いという、矛盾した人間性が魅力的に描かれています。

また、隅田川で捕れるはずのない魚を証拠として持参する権助の無知は、現代でいえば「調べればすぐバレる嘘」をついてしまう行為に通じます。インターネットで何でも調べられる現代だからこそ、この噺の滑稽さがより際立つとも言えるでしょう。

最後のオチ「人を喰うやつだ」は、単なる言葉遊びではなく、旦那が妻と使用人の両方を手玉に取った狡猾さを見事に表現しています。結局、一番賢かったのは旦那で、一番損をしたのはおかみさん、そして一番滑稽なのは権助という三者の力関係が、魚一つで明らかになる構造が絶妙です。

実際の高座では、権助の愚かさの表現方法や、魚の名前を列挙する際のテンポ、最後の番頭の決め台詞など、演者によって大きく異なります。ぜひ複数の演者の口演を聴き比べて楽しんでください。

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