スポンサーリンク

【古典落語】五光 あらすじ・オチ・解説 | 花札の役に隠された恋の執念と言葉遊びの妙技

スポンサーリンク
話芸の殿堂-古典落語-五光
スポンサーリンク
スポンサーリンク

五光

3行でわかるあらすじ

旅の商人が山道で迷い、荒れ果てた辻堂でぼさぼさ頭の怪しい坊主に出会う。
一軒家で病気の娘を苦しめる坊主の正体は、娘への恋の執念で生きている怨霊だった。
旅人が「娘は死んだ」と嘘をつくと坊主は死に、外を見ると松・坊主・雨で花札の五光になる。

10行でわかるあらすじとオチ

旅の商人が山道に迷い、荒れ果てた辻堂でぼさぼさ頭の怪しい坊主に出会うが、何を聞いても答えない。
人里で一軒家を見つけ、一夜の宿を乞うと、家には瀕死の娘がいて医者にも見放されている。
夜中に娘が「う~ん、う~ん」と苦しみ出すと、部屋の隅に同じ坊主が現れて娘を睨みつけている。
朝になると娘は静かになり、坊主の姿も掻き消えてしまう。
親父に話すと、娘に取りついた魔物は加持祈祷でも離れないと嘆く。
旅人は娘を救う手立てを思いつき、昨日の辻堂まで駆けつける。
案の定、坊主は縁側で前の松の木を睨んで座っている。
旅人が「娘に執念深くつけまとって、とうとう娘は今朝方死んでしまったぞ」と嘘をつく。
坊主は「え!死にましたか」と言うと体がガタガタと崩れ落ちて息絶える。
雨が降り出し雨宿りで辻堂に入ると後光が差し、外を見ると松・坊主・雨で花札の五光、後光が射すのは当たり前。

解説

「五光」は花札の最高役である五光(ごこう)を題材にした言葉遊びのオチが秀逸な古典落語です。本来の花札の五光は「松に鶴・桜に幕・菊に盃・桐に鳳凰・柳に小野道風」の5枚の光札で構成される最も価値の高い役ですが、この落語では「松・坊主・雨」という組み合わせで五光を表現しています。

物語前半は怪談風の展開で、旅人と怪しい坊主、病気の娘という緊張感のある設定から始まります。坊主の正体が娘への恋慕の情で生きている怨霊だったという展開は、観客を物語に引き込む巧妙な構成です。

見どころは何といっても最後のオチです。「松・坊主・雨」で五光という言葉遊びに加えて、「後光が射すのは当り前でございます」という地口で二重に落とす技法が使われています。これは花札の「柳に小野道風」を「坊主」に、柳が雨を連想させることから「雨」に見立てた洒落で、江戸の人々の言葉遊びへの親しみがよく表れています。

怪談から一転して滑稽な結末へと導く構成と、花札という身近な遊びを題材にした親しみやすさが、この演目の魅力となっています。

あらすじ

旅の商人が山道に迷い、日も暮れかかる頃にやっと人里近くに出て、荒れ果てた辻堂を見つけた。
お堂の中には濡れ縁に髪はバサバサ、髭ぼうぼうでボロボロの衣に輪袈裟かけて、手に数珠を持った坊さんが座っている。

近づいて声をかけたが、目をカァーと見開き正面の松の木を睨んでいる。
何を聞いても答えず旅人は無言の行の最中と思いあきらめて、人里への道らしき方向へ進む。
あたりには田畑だったような所もあるが荒れ果てていて全く人影はない。
真っ暗になる寸前に一軒の家が見えてほっとする。
旅人は一夜の宿を乞うが、家の親父は取り込みがあるので他をあたってくれと言う。
旅人は雨露をしのぐだけでもいいからと、なんとか家に入れてもらう。

親父の勧めで囲炉裏の鍋から雑炊を食べていると、隣の座敷に若い別嬪の娘が寝ているのが見える。
医者に「わしらの手に負えん、薬の盛りようもない」と見放され、こうやって死を待っているだけだと言う。

旅人は疲れから横になったが、なかなか寝つけずにいると、「う~ん、う~ん」と娘がうめきだした。
あまりの苦しみように、娘の方を見ると部屋の隅に何か座っている。
よく見るとぼさぼさ頭でひげ面、ボロボロの衣の坊主が娘をじーっと睨みつけている。
旅人はそれが辻堂で会った坊主だと気づく。
うめき続けていた娘も夜明け近くには静かになり、見ると坊主の姿も掻き消えていた。

親父に見たことを話すと、娘になんであんな魔物が取りついたのか分からず、加持祈祷やお祓いなどでも離れず、消えることはないと言う。
旅人は娘をあの坊主から離す手立てを思いつき、昨日の辻堂まで駆けつける。
案の定、坊主は縁側へ座って前の松の木を睨んでる。

旅人 「こら坊主!出家というものは人を助けるのがが役目やろ。
何の恨みがあって、娘に執念深こうつけまとうねん。お前の一念でな、とうとう娘は今朝方死んでしもたぞ」

坊主 「え!死にましたか」、すると体がガタガタガタッと崩れ、縁側から松の方へガラガラガラと倒れ息絶えてしまった。
坊主は娘に惚れて、その一念だけで生きていたのだ。

とたんに激しい雨が降りだした。
雨宿りをしようと旅人が辻堂の扉を開けると、中からサァーとまばゆい後光が差した。
見ると正面の祭壇の上の欄間の桐に鳳凰の立派な彫刻、両側の襖絵が満開の桜で、一面光が満ち満ちてる。
ひょっと外を見ると松に、坊主に、雨で、(五光)

後光が射すのは当り前でございます。


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 五光(ごこう) – 花札の最高役。本来は「松に鶴・桜に幕・菊に盃・桐に鳳凰・柳に小野道風」の5枚の光札を指しますが、この噺では「松・坊主・雨」という独自の解釈がされています。
  • 辻堂(つじどう) – 街道沿いや村の辻(交差点)に建てられた小さなお堂。旅人の休憩所や雨宿りの場所として使われました。
  • 輪袈裟(わげさ) – 僧侶が首にかける簡略な袈裟。修行僧や下級の僧が用いました。
  • 加持祈祷(かじきとう) – 仏教の密教で、病気や災難を祓うために行う祈祷のこと。江戸時代には霊的な治療法として広く信じられていました。
  • 数珠(じゅず) – 仏教の法具で、念仏を唱える際に使用します。この噺の坊主が持っているのは、僧侶であることの印です。
  • 後光(ごこう) – 仏像などの背後に描かれる光の輪。仏の威光を表すもので、「五光」と音が同じことを利用した洒落になっています。
  • 地口(じぐち) – 言葉の音を似せて別の意味を持たせる言葉遊び。江戸庶民の娯楽として親しまれました。

よくある質問(FAQ)

Q: なぜ「松・坊主・雨」が五光になるのですか?
A: 本来の花札の五光には「松に鶴」「柳に小野道風」が含まれます。「柳に小野道風」は小野道風が柳の下で蛙を眺める姿が描かれており、柳は雨を連想させます。この噺では「柳の下の小野道風」を「坊主」に、「柳=雨」という連想で「雨」に見立てた洒落になっています。さらに「五光」と「後光」の音の近似性を利用した二重の言葉遊びです。

Q: 坊主はなぜ娘に取り憑いたのですか?
A: 坊主は娘に恋をして、その執念だけで生きていた怨霊でした。娘が死んだという嘘を聞いて、生きる理由を失い崩れ落ちました。この設定は江戸時代の怪談話の典型的なパターンで、恋の執念の強さを表現しています。

Q: この噺は怪談ですか、それとも滑稽噺ですか?
A: 前半は怪談風の緊張感ある展開ですが、最後は花札の五光という言葉遊びで笑いに転換する構造です。このように怪談から滑稽へと転換する手法は、古典落語の特徴的な技法の一つです。

Q: 花札を知らない人でもこの噺は楽しめますか?
A: 花札を知っている方がオチの面白さは増しますが、演者の説明や物語の流れで十分楽しめます。現代では花札を知らない人も多いため、演者が枕で花札について簡単に説明することもあります。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 桂文楽(八代目) – 「黒門町の師匠」として知られる名人。この噺でも緻密な構成と格調高い語り口で、怪談から言葉遊びへの転換を見事に表現しました。
  • 古今亭志ん朝(三代目) – 美しい語り口で、前半の怪談的雰囲気と後半の軽妙なオチのコントラストを鮮やかに演じました。
  • 柳家小三治(十代目) – 人間国宝。丁寧な人物描写と情景描写で、この噺の持つ不思議な魅力を引き出しています。
  • 桂米朝(三代目) – 上方落語の人間国宝。花札という関西で親しまれた遊びを題材にした噺を、格調高く演じました。

関連する落語演目

同じく「怪談風」の古典落語

言葉遊びが秀逸な古典落語

恋の執念を描いた古典落語

https://wagei.deci.jp/wordpress/botan doro/

旅人が主人公の古典落語

この噺の魅力と現代への示唆

「五光」は、怪談と言葉遊びを巧みに融合させた独特な作品です。前半の緊張感ある展開から、最後は花札という庶民の遊びに結びつける構成は、落語ならではの妙味といえます。

現代人には花札が馴染みのない遊びになってきましたが、それでも「五光」と「後光」の洒落や、「松・坊主・雨」という組み合わせの面白さは普遍的です。言葉遊びは時代を超えて楽しめる要素であり、この噺の魅力は今も色褪せていません。

また、恋の執念で生き続ける坊主という設定は、現代のストーカー問題にも通じる普遍的なテーマです。ただし、この噺では最終的に言葉遊びで笑いに転換することで、重くなりすぎない絶妙なバランスを保っています。

怪談から滑稽へという転換は、人生の緊張と弛緩のリズムにも似ています。シリアスな状況も最後には笑いに変えられるという落語的発想は、現代のストレス社会にも有効な視点かもしれません。

実際の高座では、前半の怪談的雰囲気の演出、坊主の不気味さの表現、最後のオチの決まり方など、演者によって大きく異なります。ぜひ複数の演者の口演を聴き比べて、それぞれの解釈の違いを楽しんでください。

関連記事もお読みください

タイトルとURLをコピーしました