布団屋の恋文
恋ってのは人を盲目にするもんでして、時にはとんでもないことを思いつくもんです。
今回は、そんな恋に浮かれた若者の話を新作落語にしてみました。
まったく、自分でも「こんなバカな話、誰が考えるんだ」と呆れながら書いてます。
まくら
恋文ってのは今も昔も難しいもんで
あらすじ
浅草の布団屋「夢見屋」の若旦那、新助。
腕のいい職人でしたが、最近は仕事が手につきません。
新助「はあ…お糸さん…」
番頭「若旦那、またため息ですか。そんなに隣の小間物屋のお糸さんが気になるなら、告白しちゃいなさいよ」
新助「そう簡単に言うけどさ、俺、口下手だし…」
番頭「じゃあ、恋文でも書いたらどうです?」
新助「恋文か…でも、渡す勇気がねえんだよ」
奇想天外な告白方法
悩んだ末、新助はとんでもないことを思いつきました。
新助「そうだ!布団に恋文を縫い込んで、それとなく気持ちを伝えよう!」
番頭「は?布団に恋文?」
新助「お糸さんの家から、布団の打ち直しの注文が来てるだろ。その布団の中に、恋文を縫い込むんだ」
番頭「そんなことして、気づいてもらえるんですか?」
新助「布団を使ってるうちに、きっと気づくさ。そしたら、俺の真心も伝わるってもんだ」
恋文を縫い込む
夜中、新助は一人で作業場にこもりました。
新助「えーと…『お糸様、突然このような形でお便りすることをお許しください…』」
一針一針、丁寧に文字を縫い込んでいきます。
新助「『貴女の笑顔を見るたび、私の心は…』っと」
明け方までかかって、ようやく恋文入りの布団が完成しました。
新助「よし、これで想いが伝わるはずだ!」
配達の手違い
翌日、新助は番頭に布団の配達を頼みました。
番頭「へい、確かに。小間物屋のお糸さんとこですね」
新助「頼むよ、大事な布団だから」
ところが、番頭は二日酔いで頭がボーッとしていて…
番頭「えーと、小間物屋…小間物屋…ああ、ここか」
間違えて、隣の隣の豆腐屋に配達してしまいました。
騒動の始まり
豆腐屋の主人「おや、注文した覚えはないが…まあ、うちの布団も古いし、ありがたくいただくか」
その夜、豆腐屋の夫婦が布団に入ると…
女房「あなた、なんか布団がゴワゴワしない?」
主人「そういえば、なんか固いな…ん?なんだこれは?」
糸をほどいてみると、中から恋文が!
女房「『お糸様、貴女の笑顔を見るたび…』あなた!これは何よ!」
主人「し、知らん!俺じゃない!」
女房「お糸って、隣の小間物屋の娘でしょ!」
長屋中の大騒動
豆腐屋の夫婦げんかは、たちまち長屋中に知れ渡りました。
八百屋「豆腐屋の親父が、隣の娘に恋文だってよ」
魚屋「ひでえ話だ。かかあがいるのに」
大家「おい、これは一大事だ。小間物屋に知らせなきゃ」
小間物屋では…
お糸の父「なに!?豆腐屋の親父が、うちの娘に!?」
お糸「お父さん、何かの間違いよ」
お糸の父「間違いも何も、許せん!」
真相究明
騒動を聞きつけた新助が、慌てて駆けつけました。
新助「ちょ、ちょっと待ってください!それは俺が…」
豆腐屋「なんだ、布団屋の若旦那」
新助「その恋文は、俺が書いたんです!」
全員「ええ!?」
新助「お糸さんに渡すつもりが、手違いで…」
番頭「す、すみません!二日酔いで間違えました!」
お糸の父「なんだ、若旦那が書いたのか。それなら話は別だ」
お糸「まあ、新助さんが…」
めでたく二人は結ばれることになり、長屋中が祝福しました。
そして、結婚式の日…
大家「いやあ、布団が縁で結ばれるなんて、珍しい話だ」
八百屋「まったくだ。恋文入りの布団なんて、初めて聞いたぜ」
そこへ、青い顔をした番頭が駆け込んできました。
番頭「た、大変です!若旦那!」
新助「どうした?」
番頭「実は、あの恋文入りの布団…」
新助「あの布団がどうした?」
番頭「昨日、質屋に入れちまいました!」
まとめ
恋文入りの布団が質屋行きって、なんとも情けないオチになっちまいました。
でも、結果的に結ばれたんだから、まあ良しとしますか。
自己採点は95点!恋文を布団に縫い込むなんて発想、我ながら変態的で気に入ってます。
って、自画自賛してる場合じゃないか…


