布団花火
今度は布団と花火という組み合わせで新作落語を作ってみました。
寝具と火薬なんて、危なっかしいことこの上ない組み合わせですが、落語の世界なら許されるでしょう。
たぶん。いや、やっぱり危ないかな。
まあ、聞いてみてください。
派手好き職人の静かな商売
あらすじ
元花火職人の玉屋新助が、年を取って布団屋に転職した。
新助:「花火は夏だけだが、布団は一年中売れる」
妻:「やっと堅気の商売ね」
新助:「ああ、もう火薬とはおさらばだ」
妻:「静かな老後が送れそうで安心だわ」
ところが、新助の派手好きは治らなかった。
新助:「普通の布団じゃつまらん。何か工夫をしたい」
妻:「余計なことはしないで」
—
ある日、新助は妙案を思いついた。
新助:「そうだ!朝寝坊しない布団を作ろう」
妻:「どういうこと?」
新助:「布団に仕掛けをして、時間になったら起こすんだ」
妻:「まさか…」
新助:「少しだけ火薬を使って」
妻:「やめて!布団屋で火薬なんて」
新助:「大丈夫、ほんの少しだ」
—
新助は布団の中に小さな花火を仕込んだ。
朝の六つ(午前 6 時)になると、パンと音がする仕組みだ。
客:「これは何だ」
新助:「目覚まし布団です。朝寝坊の心配がありません」
客:「布団が起こしてくれるのか」
新助:「ええ、画期的でしょう」
客:「面白そうだ。一つもらおう」
—
翌朝、町中に轟音が響いた。
ドーン!
隣人:「なんだ!地震か!」
客:「い、いや、布団が爆発した!」
新助の目覚まし布団は、予想以上に大きな音を立てた。
客:「新助!どういうことだ!」
新助:「す、すみません。火薬の量を間違えたようで」
客:「間違えたって、屋根に穴が開いたぞ!」
—
しかし、意外な反応もあった。
寝坊助:「おかげで遅刻しなかった」
商人:「朝市に間に合ったよ」
職人:「確実に起きられるな」
新助:「じゃあ、もう少し火薬を減らして」
客たち:「いや、このくらいでいい」
新助:「えっ?」
客たち:「どうせなら町中に聞こえるくらいがいい」
—
こうして新助の布団は、町の時報代わりになった。
朝六つ:ドーン!
「新助の布団が鳴ったぞ、起きろ!」
昼:ドドーン!
「昼飯の時間だ」
夕方:ドドドーン!
「仕事終いだ」
新助:「これじゃ布団屋じゃなくて、花火時計屋だ」
妻:「結局、火薬と縁は切れなかったのね」
町の人々:「でも便利だから、このままでいいよ」
新助:「複雑な気持ちだが、まあいいか」
新助の店は「爆音布団屋」として、江戸中の評判になった。
客:「すみません、もっと大きな音の布団はありますか」
新助:「それ以上大きくしたら、布団じゃなくて大砲になっちまう」
まとめ
静かな商売を始めたつもりが、結局は爆音商売に。
布団で寝るどころか、布団に起こされ、しまいには町の時計代わり。
でも江戸時代には時計も目覚ましもなかったから、案外需要があったかもしれませんね。


