布団の取り合い
寒い冬の夜に布団の取り合いで夫婦げんかになるってのは、まあよくある話でございまして。
今回も、そんな身近な話題で新作落語を一席作ってみました。
自分でも「またこんなくだらない話を…」と思いながらも、懲りずに書いちまいました。
まくら
寒い夜は布団が恋しくなるもんです
あらすじ
江戸は神田の裏長屋。
師走も押し迫った寒い夜のことでございます。
熊さんとおかみさんが、一枚の布団で寝ておりました。
おかみさん「ちょっと、あんた!また布団引っ張ってるでしょ!」
熊「なに言ってやがる。お前の方こそ、さっきから俺の分まで巻き取ってるじゃねえか」
おかみさん「あたしは寝相がいいんだから、そんなことするわけないでしょ」
熊「寝相がいい?冗談じゃねえ。昨日なんか、俺の顔に足乗っけて寝てたじゃねえか」
おかみさん「そんなの覚えてないわよ!」
攻防戦の始まり
二人は布団の両端を持って、綱引きを始めました。
熊「俺は明日も朝早くから仕事だ。風邪ひいたらどうすんだ」
おかみさん「あたしだって、朝から晩まで家事で大変なのよ。風邪ひいたら誰が面倒見るの?」
熊「そんなこと言ったって、男の方が体がでかいんだから、布団も多く必要なんだよ」
おかみさん「じゃあ、その分稼いできなさいよ!もう一枚買えるくらい!」
熊「ぐっ…それを言われちゃあ…」
エスカレート
だんだんと言い合いがエスカレートしていきます。
おかみさん「そもそも、あんたがもっと稼いでくれば、こんな薄っぺらい布団一枚で寝なくて済むのよ」
熊「薄っぺらいだと?これでも質屋から出したばっかりの上等品だぞ」
おかみさん「質屋から出したって、また入れるんでしょ?」
熊「それは…まあ…」
おかみさん「だいたい、昨日も飲み代で三百文も使ってきたじゃない!」
熊「あれは付き合いってもんがあってだな…」
おかみさん「付き合い付き合いって、毎晩付き合いかい!」
過去の恨みつらみ
話は布団から離れて、過去の恨みつらみに発展していきます。
熊「お前だって、この前隣の井戸端会議で、俺の悪口言ってたじゃねえか」
おかみさん「あれは悪口じゃなくて、事実を言っただけよ」
熊「『うちの人は朝起きるのが遅くて』とか『仕事もそこそこで』とか、聞こえてたぞ」
おかみさん「本当のことじゃない!」
熊「本当でも、人前で言うことねえだろ」
おかみさん「じゃあ、あんたは?この前の寄り合いで『うちのかかあは口うるさくて』って言ってたでしょ」
熊「あ、あれは…」
最後の攻防
とうとう二人は布団を真ん中で引っ張り合い、今にも破れそうな勢いです。
おかみさん「もういい!あたし、実家に帰らせてもらうから!」
熊「おう、帰れ帰れ!俺は一人で広々と寝るからな!」
おかみさん「ふん!せいぜい風邪でもひいて、一人で苦しむがいいわ!」
熊「お前こそ、実家の母ちゃんに小言でも言われてろ!」
二人は「ふん!」と言って、背中を向け合いました。
静寂の後
しばらく静かな時間が流れます。
熊「…寒いな」
おかみさん「…そうね」
熊「…お前、風邪ひくなよ」
おかみさん「…あんたこそ」
そして、いつの間にか二人は背中をくっつけて眠りに落ちていきました。
朝になって、隣の長屋の八っつぁんが熊さんを起こしに来ました。
八「おい、熊!起きろ!仕事の時間だぞ!」
熊「ああ、八か…もう朝か…」
八「なんだ、かかあと仲良く寝てるじゃねえか。昨日の夜中、すげえ声が聞こえたから、また夫婦げんかかと思ったぜ」
熊「ああ、布団の取り合いでな…」
八「布団の取り合い?見ろよ、お前ら二人とも布団から完全にはみ出して、抱き合って寝てるじゃねえか」
まとめ
というわけで、夫婦げんかの落語でした。
結局、寒さには勝てずに抱き合って寝てたってオチですが、まあ夫婦なんてそんなもんですかね。
自己採点は…うーん、95点!(強気)
いやいや、オチが読めちゃうかな…でもまあ、温かい気持ちになれたらそれでいいってことで。


