風呂屋大工其の二
前回「壊し専門大工」になった熊五郎が、今度は本格的に解体業者として活動することに。
でも、元大工の習性というのは、そう簡単には変わらないもの。
解体のつもりが、思わぬ結果になってしまいます。
解体のつもりが建設になってしまう
壊すつもりが、逆に作ってしまう元大工の悲劇。
でも、時には間違いが最高の結果を生むこともあります。
あらすじ
前回の騒動で「壊し専門大工」として有名になった熊五郎のもとに、新しい依頼が来た。
風呂屋:「熊さん、古い風呂を壊してもらいたい」
熊:「承知しました」
風呂屋:「完全に解体して、新しい風呂を作る予定です」
熊:「分かりました」
風呂屋:「でも、丁寧に壊してくださいね」
熊:「丁寧に?」
風呂屋:「はい、材料を再利用したいので」
熊:「なるほど」
—
熊五郎は解体作業を始めた。
熊:「よし、まずは湯船から」
しかし、元大工の習性で、つい修理を始めてしまった。
熊:「この板、少し緩んでるな」
風呂屋:「壊すんですから、緩んでても大丈夫です」
熊:「でも、このまま放っておくと」
風呂屋:「放っておいて結構です」
熊:「そうですか」
—
熊五郎は湯船の板を外そうとしたが、つい釘を打ち始めた。
熊:「この釘、もう少し奥に」
風呂屋:「熊さん、何をしてるんですか」
熊:「あ、つい癖で」
風呂屋:「壊すんですよ」
熊:「そうでした」
しかし、熊五郎の手は止まらない。
熊:「でも、この継ぎ目も直しておかないと」
風呂屋:「直さなくて結構です」
—
気がつくと、熊五郎は湯船を解体するどころか、補強していた。
熊:「よし、これで完璧だ」
風呂屋:「熊さん、これは解体じゃなくて修理では」
熊:「あ、そうか」
風呂屋:「壊すつもりが、直してしまったんですか」
熊:「つい、大工の習性で」
風呂屋:「でも、すごく頑丈になってますね」
熊:「そうでしょう」
—
熊五郎は他の部分も「解体」し始めた。
熊:「次は壁を壊そう」
しかし、また修理を始めてしまった。
熊:「この柱、少し傾いてるな」
風呂屋:「壊すんですから、傾いててもいいです」
熊:「でも、このまま放っておくと危険だ」
風呂屋:「壊すんですから、危険でもいいです」
熊:「そうは言っても」
—
結局、熊五郎は風呂屋全体を補強してしまった。
熊:「解体完了です」
風呂屋:「これが解体?」
熊:「はい」
風呂屋:「でも、前より頑丈になってませんか」
熊:「あ、そうか」
風呂屋:「解体のつもりが、改築になってる」
熊:「すみません、つい」
—
風呂屋:「でも、これはすごいですね」
熊:「すごい?」
風呂屋:「こんなに頑丈な風呂は見たことがない」
熊:「そうでしょうか」
風呂屋:「この風呂なら、百年でも持ちそうです」
熊:「百年?」
風呂屋:「はい、永久に壊れない風呂です」
熊:「永久不壊風呂?」
—
風呂屋:「熊さん、これを売りにしませんか」
熊:「売り?」
風呂屋:「永久不壊風呂として宣伝するんです」
熊:「宣伝?」
風呂屋:「一生使える風呂として」
熊:「一生使える?」
風呂屋:「お客さんも喜びますよ」
熊:「そうでしょうか」
—
結局、熊五郎の「永久不壊風呂」は大評判になった。
客:「この風呂、本当に壊れないんですか」
風呂屋:「はい、熊五郎特製の永久不壊風呂です」
客:「すごいな」
熊:「ありがとうございます」
客:「一生使えるって本当?」
熊:「たぶん」
客:「たぶん?」
熊:「いや、絶対です」
—
熊五郎は「永久不壊風呂」の専門家として有名になった。
熊:「解体のつもりが、建設になってしまった」
風呂屋:「でも、大成功ですよ」
熊:「そうですね」
風呂屋:「今度は他の風呂屋からも依頼が来てます」
熊:「他の風呂屋からも?」
風呂屋:「永久不壊風呂を作ってほしいって」
熊:「でも、解体のつもりで作ってるんですが」
風呂屋:「それでいいんです」
熊:「解体のつもりで建設する大工って、変ですね」
風呂屋:「変でも、結果が良ければいいんです」
まとめ
解体のつもりが、逆に頑丈な風呂を作ってしまう元大工。
でも、それが「永久不壊風呂」として大評判になりました。
間違いも極めれば、それが新しい技術になるという話でした。


