【時事落語】天才は手を抜けへん(新作落語)
導入
みなさん、こんにちは。今回も時事ネタ落語をお届けします。
将棋界の天才・藤井聡太七冠が、スポンサーとの接待将棋で本気の「鬼手」を指してしまい、師匠の杉本昌隆八段に叱られたというニュースがありました。
「接待将棋なんやから、手ぇ抜かんかい!」と怒られる藤井七冠。でも天才にとって、手を抜くって難しいんですよね。
この実話をヒントに、天才の悩みと師匠の苦労をコミカルに描いた時事落語を創作してみました。もちろん、実際の会話内容などは完全に創作ですので、フィクションとしてお楽しみください。
まくら
えー、毎度おなじみのお笑いを一席。
世の中には「手を抜く」っちゅうテクニックがございましてな。
仕事でも「ここは80%の力で」とか「ほどほどに」とか、大人の対応が求められる場面がありますな。
でも、天才っちゅうのは、これができへんのですわ。
「本気」か「本気」しかない。
料理人に「今日は適当に作って」言うても、「適当」が分からへん。
職人に「ちょっと手ぇ抜いて」言うても、「手を抜く場所がない」。
まあ、贅沢な悩みでございますけどな。
あらすじ
接待将棋の日
さて、将棋界のスーパースター、藤井聡太七冠の話でございます。
ある日、スポンサー企業の社長さんとの接待将棋がありましてな。
師匠の忠告
師匠の杉本八段が事前に念を押します。
杉本「聡太、今日は接待やからな。分かってるやろな?」
藤井「はい、分かってます」
杉本「ほんまに分かってんのか?去年も一昨年も、お前、本気出して相手泣かしたやないか」
藤井「今回は大丈夫です。ちゃんと手加減します」
杉本「『ちゃんと』っちゅうのがお前は信用でけへんねん。手加減の手加減をせえ」
藤井「手加減の手加減…?」
杉本「つまり、めっちゃ手ぇ抜けっちゅうことや」
会場到着
会場に到着。スポンサー企業の山本社長がにこやかに出迎えます。
山本社長「藤井さん!今日はよろしくお願いします。いやあ、楽しみにしてたんですよ」
藤井「こちらこそ、よろしくお願いします」
山本社長「私も学生時代は将棋部でしてね。まあ、藤井さんには到底及びませんが」
杉本(小声で)「聡太、覚えとけよ。『到底及びません』言うてはるやろ。これは社交辞令や。本気で勝ちに来たらあかんで」
藤井(小声で)「分かってます」
対局開始、そして…
対局開始。
山本社長「では、私から…」
初手、山本社長が駒を動かします。
藤井七冠、盤面を見つめます。
杉本(心の声)「頼むぞ、聡太…普通に指せよ…」
藤井七冠、駒に手を伸ばします。
パシッ!
山本社長「おお、その手は…」
杉本(心の声)「あ、あかん…あの目や…あれは本気出す時の目や…」
数手進んで、藤井七冠がある駒を持ち上げます。
山本社長「ほう、そこに打ちますか」
パチン!
その瞬間、山本社長の顔色が変わります。
山本社長「!!!」
杉本(小声で)「聡太!今の何や!」
藤井(小声で)「え?普通の手ですけど…」
杉本「普通ちゃうわ!あれ、先週のタイトル戦で使った新手やないか!」
藤井「あ…」
杉本「『あ』やないわ!接待将棋で新手出すな!」
山本社長、額に汗を浮かべながら考え込んでいます。
山本社長「うーん…こう来られると…」
師匠の苦悩
20分経過。
杉本(イライラ)「聡太、なんで相手に20分も考えさせてんねん」
藤井(小声で)「だって、詰んでないですよ」
杉本「詰む手探してんのか、お前!接待やぞ!」
藤井「でも、詰まない手を指すのは…」
杉本「それでええねん!詰まんでええねん!」
山本社長「すみません、ちょっとトイレに…」
緊急特訓
山本社長が席を外します。
杉本「聡太、お前な…」
藤井「すみません…でも、どうやって手を抜いたらいいのか分からなくて…」
杉本「悪手を指せばええやないか」
藤井「悪手…ですか」
杉本「そうや。ちょっと悪い手を混ぜるんや」
藤井「悪手って、例えばどんな手ですか?」
杉本「例えば…飛車を無駄に動かすとか…」
藤井「飛車を無駄に動かす…それって、次の展開でこっちが不利になりますよね」
杉本「それでええねん!不利になってええねん!」
藤井「でも、不利になった後、相手がこう来たら、こっちはこう返して…あ、やっぱり勝てますね」
杉本「勝てる手を探すな!!!」
対局再開
山本社長が戻ってきました。
山本社長「お待たせしました。では、続きを…」
対局再開。
藤井七冠、師匠の言葉を思い出しながら、意識して悪手を指そうとします。
でも、駒を持った瞬間、盤面全体が頭の中で動き出します。
三手先、五手先、十手先…
すべての変化が見えてしまう。
藤井(心の声)「この手を指したら、相手はこう来て…でも、それは罠で…」
杉本「聡太!今、めっちゃ考えてるやろ!」
藤井「考えてません!」
杉本「嘘つけ!お前、今、30手先まで読んだやろ!」
藤井「…20手です」
杉本「変わらんわ!!!」
結果発表
結局、藤井七冠の圧勝。
山本社長「いやあ、さすがですね…完敗です…」(顔面蒼白)
杉本「社長、申し訳ございません…」
藤井「楽しかったです!また対局お願いします!」
杉本「お前が楽しんでどうすんねん!」
帰り道の反省会
帰り道。
杉本「お前な、ほんまに何回言うたら分かんねん」
藤井「すみません…でも、手を抜こうとしたんです」
杉本「どこが手を抜いてんねん!新手まで出しとったやないか!」
藤井「いや、あの新手、実はもっと良い手があったんですけど、それを我慢したんです」
杉本「そういうことちゃうねん!」
藤井「じゃあ、どうすれば…」
杉本「最初から駒落ちで指すとか、時間制限を極端に短くするとか、目隠し将棋にするとか…」
藤井「目隠し将棋でも勝っちゃうと思います…」
杉本「勝つ前提で考えるな!!!」
藤井「あの、師匠…接待将棋って、どうやって負けるんですか?」
杉本「それをわしに聞くか!?」
藤井「師匠なら知ってると思って…」
杉本「わしも接待将棋したことないわ!されたことはあるけど!」
藤井「じゃあ、接待される側の気持ちは分かりますよね?どうしたら気持ちよく勝たせられますか?」
杉本「…気持ちよくない勝ちはないねん。相手が『勝った!』って思わなあかん」
藤井「具体的には?」
杉本「具体的には…うーん…」
藤井「やっぱり師匠も分からないんですね」
杉本「お前がアホみたいに強いから、教えようがないねん!」
藤井「あ、そうだ。次からは手を抜く手を事前にAIに聞いてみます」
杉本「AIに聞いてどうすんねん!」
藤井「手を抜くための最善手を…」
杉本「手を抜くための最善手って、もう意味わからんわ!」
藤井「でも、手を抜くのにも理論があるはずですよね。最も効率的に手を抜く方法が…」
杉本「お前、それ、結局本気やないか!」
藤井「え?」
杉本「手を抜くことにまで本気出してどうすんねん!」
藤井「…難しいですね、接待将棋って」
杉本「お前にとって将棋は全部難しいねん。簡単な将棋がないねん」
究極の気づき
藤井「師匠、気づいたんです」
杉本「何に気づいてん」
藤井「本気で手を抜こうとすると、手を抜けない。逆に適当に手を抜こうとすると、本気になっちゃう」
杉本「…どういうことや」
藤井「つまり、僕は手を抜こうとする限り、永遠に手を抜けないんです」
杉本「お前…自分で自分を詰ませとるやないか」
藤井「そうなんです。接待将棋、詰みました」
杉本「投了すな!!!」
まとめ
というわけで、藤井聡太七冠の接待将棋失敗エピソードをヒントに、時事落語を創作してみました。
天才にとって「手を抜く」ことの難しさ。普通の人なら簡単にできることが、天才にはできない。これは、ある意味で贅沢な悩みですが、本人にとっては深刻な問題なのかもしれません。
将棋の世界に限らず、仕事でも「ここは手を抜いて」「適当でいいよ」と言われても、それができない職人気質の人っていますよね。完璧主義というか、妥協を知らないというか。
でも、社会人として生きていくには、時には「ほどほど」の加減も必要。そのバランスが難しいんですよね。
※この物語は実話をヒントにした完全なフィクションです。実際の会話内容などは創作であり、登場人物の名誉を傷つける意図は一切ありません。
次回もまた時事ネタでお会いしましょう。お後がよろしいようで。
今日の教訓: 「本気で手を抜こうとすると手を抜けず、適当に手を抜こうとすると本気になる」という禅問答。天才が自分で自分を詰ませる究極のジレンマである。接待将棋、詰み。師匠の苦労も詰み。


