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【古典落語】不動坊 あらすじ・オチ・解説 | やもめ嫁いびり妙工作、偽幽霊婚活妨害大作戦、論理破網で金で解決

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話芸の殿堂-古典落語-不動坊
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不動坊

3行でわかるあらすじ

やもめの利吉が同じ長屋のお滝さんと結婚することになり、嫉妬した他のやもめたちが講釈師に偽幽霊をやらせて脅かそうとする。
しかし利吉が「借金35円を払ったのは誰だと思ってるんだ」と論理的に反論し、逆に幽霊にお金を渡して供養してもらう。
最後に偽幽霊の正体がバレて、「幽霊稼人(遊芸稼人)でおます」というオチで落ちる。

10行でわかるあらすじとオチ

やもめ暮らしの利吉のところに家主が来て、お滝さんとの縁談を持ちかける。
お滝さんの夫の講釈師・不動坊火焔が地方巡業先でチブスで死に、35円の借金を払ってくれる人と結婚したいという。
利吉は喜んで承諾し、今夜からお滝さんが来るので風呂に行って身を清めることにする。
風呂場で浮かれて他のやもめたちの悪口を言ったため、それを聞いた徳さんが仲間と結託して復讐を計画する。
講釈師の軽田胴斉に不動坊火焔の幽霊役をやらせ、新婚夫婦を脅かして坊主にしてやろうと企む。
天窓からふんどしで胴斉を吊り下げて幽霊として登場させ、「髪を下ろして坊主になれ」と脅す。
しかし利吉は冷静に「35円の借金を払ったのは誰だと思ってるんだ」と論理的に反論する。
さらに幽霊に20円を渡して「四人で分けて供養してくれ」と逆に金を払って解決してしまう。
ふんどしが切れて胴斉が落ちてきて正体がバレ、講釈師が幽霊のまねをして金を取ったと責められる。
胴斉が「幽霊稼人(遊芸稼人)でおます」と答えるオチで、職業詐欺的な言葉遊びで落ちる。

解説

「不動坊」は上方落語発祥の古典演目で、別名「不動坊火焔」「幽霊稼ぎ」とも呼ばれる。2代目林家菊丸の作とされ、後に3代目柳家小さんによって江戸落語に移植された歴史を持つ。明治時代の「遊芸稼ぎ人」制度という時代背景を反映した作品としても貴重である。

この落語の最大の特徴は、タイトルの不動坊火焔が既に死んでいて実際には登場しないという珍しい構成にある。また、恋愛や結婚を題材としながらも、経済的な論理で問題を解決していく実用的な展開が印象的である。利吉の「35円の借金を払ったのは誰だ」という反論は、感情論ではなく経済的事実に基づいた合理的な主張として描かれている。

見どころは最後の「幽霊稼人(遊芸稼人)」という言葉遊びのオチである。明治2年(1869年)に政府が発布した「遊芸稼ぎ人」という芸能者の営業許可制度を背景とした時事的なユーモアで、当時の観客には非常にタイムリーな笑いとして受け取られた。現代でも職業詐欺的な皮肉として楽しめる秀逸なオチとなっている。

あらすじ

やもめ暮らしの利吉のところへ長屋の家主が訪ねてくる。
嫁をもらわないかという話だ。
長屋に住んでいるお滝さんの亭主の講釈師、遊芸稼人の不動坊火焔が地方巡業先でチブスで死んだという。

骨を引取りに行ったりした費用がかさんで、不動坊の残した借金が35円。
お滝さんはこの借金を結納代わりに払ってくれる人のところへ縁づきたいという。
利吉もお滝さんのことは、以前からまんざらでもなかったので、二つ返事で喜んでお滝さんを嫁にとることにする。

利吉は今晩からお滝さんが来てくれるというので、さっぱりと小ぎれいするために風呂に行く。
家の内からかんぬきを掛け、鉄びんをぶら下げて行く舞い上がりようだ。

洗い場で一人でお滝さんとのやりとりや、長屋の残りのやもめ三人の悪口などをしゃべり始める。
これを聞いていたのが徳さん。
鰐皮(わにがわ)の瓢箪の顔のようだといわれ、利吉に詰め寄る。
利吉はその場をなんとか取りつくろい、そそくさと風呂から上がってしまう。

おさまらないのが徳さんだ。
長屋に帰り、やもめ仲間の裕さん、新さんを集め利吉に仕返しをしようと相談を始める。
今夜、不動坊火焔の幽霊を出し、二人をおどして髪をおろさせ坊主にして、明日の朝、皆で笑ってやろうという趣向だ。
幽霊役には、不動坊の留守中にお滝さんを口説いて、ドンと肘鉄砲ではじかれた講釈師の軽田胴斉を引っ張り込むことにする。

幽霊を出す時の大鼓、幽霊火のアルコールなどの段取りをつけ、雪がちらつく中を出かける。
利吉の家に梯子を掛けて上り、天窓から幽霊役の胴斉を腰からふんどしを5、6本つないで降ろす。

ここでアルコールの幽霊火が出るはずだが、アルコールをアンコロと聞き間違った、裕さんがビンにあんころを詰めて買ってきたので幽霊火は出るはずはない。
徳さんからぼろくそに言われた裕さんも徳さんに言い返し、屋根の上で内輪もめが始まってしまった。

途中で宙吊りになったままの胴斉は、ふんどしが腹に食い込み痛がってわめき始めた。
仕方ないので太鼓だけ打って、幽霊を下の部屋に降ろす。

幽霊(軽田胴斉) 「恨めしぃ~、不動坊火焔や、わしが死んですぐによそへ嫁入りとはあんまり胴欲な。
それが恨めしゅうて浮かばれん。二人とも髪を下ろして坊主になれ~」

利吉 「お滝さん、恐がることおまへん。 あたしら恨まれるよなことしてまへんで。あんたが死んだあとでちゃんとした仲人を立ててもろた嫁はんですわ。 それにや、おまはんが残した35円の借金は、いったい誰が払ろたと思てんねん」

まことにごもっともな言い様で、幽霊の胴斉はたじたじで返す言葉もない。
そして利吉は金で話をつけようと一人前5円、四人で20円で手を打つことになる。

金を受け取った幽霊の胴斉は金勘定をし、二人にいく久しゅう睦まじくなんて言っている。
これを見ていた屋根上の連中は急いで幽霊を引上げようとふんどしをたぐったが、結び目が天窓の角へ食い込んでほどけてしまう。
上の三人は地面に、幽霊は利吉の家の中に落っこちる。

利吉 「なんじゃお前は。」

幽霊(軽田胴斉) 「隣裏に住んでおります軽田胴斉という講釈師」

利吉 「講釈師、講釈師が幽霊のまねして銭取ったりするのんか」

幽霊(軽田胴斉) 「へえ、幽霊稼人(遊芸稼人)でおます」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 不動坊火焔(ふどうぼうかえん) – 講釈師の芸名。「火焔」は不動明王の背後にある炎を意味し、迫力ある芸名として使われました。
  • 遊芸稼ぎ人 – 明治2年(1869年)に政府が発布した芸能者の営業許可制度。落語家、講釈師、芸者などが該当しました。
  • 講釈師(こうしゃくし) – 軍記物や史実を語る芸能。落語家とは別の職業で、講談とも呼ばれました。
  • やもめ – 配偶者を亡くした人。この噺では男性やもめたちが登場します。
  • 35円 – 明治時代の金額。現代の価値で約35万円から70万円程度。庶民にとっては大金でした。
  • 天窓(てんまど) – 屋根に設けた明かり取りの窓。江戸時代の長屋では換気用に使われました。
  • チブス – 腸チフスのこと。明治時代には恐れられた伝染病でした。
  • 家主(いえぬし) – 長屋の大家。住人の世話や仲介を行う役割がありました。

よくある質問(FAQ)

Q: 不動坊火焔は実際に登場しますか?
A: いいえ、既に死んでいるため登場しません。この噺のタイトルの人物が登場しないという珍しい構成が特徴です。

Q: なぜ利吉は幽霊を論破できたのですか?
A: 35円の借金を払ったのは自分だという経済的事実を突きつけたからです。感情論ではなく合理的な論理で反論したのが特徴的です。

Q: 「幽霊稼人」のオチの意味は?
A: 「遊芸稼人(ゆうげいかせぎにん)」という明治政府の芸能者営業許可制度の言葉と、「幽霊」を掛けた言葉遊びです。講釈師が幽霊のまねをして金を稼いだという皮肉が込められています。

Q: 35円は現代のいくらくらいですか?
A: 明治時代の35円は、現代の価値で約35万円から70万円程度と言われています。庶民にとっては簡単に払えない大金でした。

Q: この噺は江戸落語ですか、上方落語ですか?
A: 元は上方落語ですが、江戸落語にも移植されています。2代目林家菊丸の作で、後に3代目柳家小さんが江戸に持ち込みました。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 柳家小さん(三代目) – 上方から江戸に移植した名人。論理的な利吉の反論を巧みに表現しました。
  • 古今亭志ん生(五代目) – 昭和の名人。やもめたちの嫉妬と偽幽霊の滑稽さを見事に演じました。
  • 桂米朝(三代目) – 上方落語の人間国宝。元の上方版を格調高く演じました。
  • 柳家小三治 – 現代の名人。利吉の冷静さと幽霊の慌てぶりを対比的に描きます。

関連する落語演目

同じく「幽霊」が登場する古典落語

「長屋・庶民」がテーマの古典落語

「言葉遊び」がオチの古典落語

この噺の魅力と現代への示唆

「不動坊」のオチ「幽霊稼人(遊芸稼人)」は、明治政府の芸能者営業許可制度と幽霊を掛けた見事な言葉遊びです。講釈師が幽霊のまねをして金を稼いだという皮肉が効いています。

この噺の魅力は、利吉が幽霊に対して感情論ではなく経済的論理で反論する点です。「35円の借金を払ったのは誰だ」という主張は、現代のビジネスにも通じる合理的な思考です。さらに、金で解決してしまうという展開は、江戸時代の実用主義を反映しています。

現代的な視点で見ると、この噺は「嫉妬と復讐の失敗」を描いています。やもめたちの嫉妬心から始まった偽幽霊作戦が、逆に金を払わされて終わるという皮肉な結末は、感情的な行動の愚かさを示しています。

また、タイトルの人物が既に死んでいて登場しないという珍しい構成も見どころです。不動坊火焔は物語全体を通じて重要な存在でありながら、実際には一度も登場しない不在の主人公として機能しています。

実際の高座では、偽幽霊の演技、利吉の冷静な論理、やもめたちの慌てぶりを演じ分ける演者の技量が見どころです。機会があれば、ぜひ生の落語会や動画配信でお楽しみください。


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