忘れ物センターの不思議な客
駅の忘れ物センターって、いろんな物が集まってくる不思議な場所ですよね。そして、それを取りに来る人たちも、また個性豊か。今回は忘れ物を巡る勘違いとすれ違いを、標準語でさらっと描いてみました。人間の記憶の不確かさって、本当に面白いものです。
現代の迷子センター
駅の忘れ物センターというのは、現代社会の不思議なスポットでございます。
毎日毎日、ありとあらゆる物が持ち込まれて、そして本当の持ち主を待っている。
でも、取りに来る人の記憶が曖昧だと、えらい騒ぎになるんです。
午後のひととき
新宿駅忘れ物センター、午後 2 時。
職員の山田さんが、カウンターで対応している。
そこへ、慌てた様子の中年男性がやってきた。
客 A「すみません、傘を忘れたんですが」
山田さん「いつ、どちらでお忘れでしょうか?」
客 A「昨日の夜、山手線の中です」
山田さん「傘の特徴を教えてください」
客 A「黒い傘で、持ち手が木製でした」
傘の山
山田さん「黒い傘、木製の持ち手…」
奥から持ってきたのは、5 本の似たような傘。
山田さん「この中にありますでしょうか?」
客 A「う〜ん…どれも似てるな」
山田さん「何か目印はありませんか?」
客 A「確か…持ち手に小さな傷があったような」
5 本全部を詳しく見るが、みんな微細な傷がある。
客 A「うーん、どれが自分のか分からない」
記憶との格闘
客 A「この傘、結構高かったんです」
山田さん「おいくらぐらいで?」
客 A「5000 円ぐらい」
山田さん「では、こちらの傘はいかがでしょう?」
良さそうな傘を見せる。
客 A「これかな…でも、なんか違う気も」
山田さん「身に覚えのない物をお渡しするわけにも…」
客 A「そうですよね」
新たな客の登場
そこへ、今度は若い女性がやってきた。
客 B「携帯電話を忘れたんですが」
山田さん「いつ、どちらで?」
客 B「今朝、中央線の車内です」
山田さん「機種は?」
客 B「iPhone、ピンクのケースに入ってました」
山田さん「ピンクのケースの iPhone…ありました」
持ってきたのは、確かにピンクのケースに入った iPhone。
客 B「あ、これです!」
でも、電源を入れようとして。
客 B「あれ?パスワードが違う」
記憶の混乱
山田さん「パスワード、お忘れでは?」
客 B「いえ、絶対にこの番号なんです」
山田さん「機種は間違いありませんか?」
客 B「iPhone…あ、でも私のは iPhone12でした」
山田さん「こちらは iPhone11 ですね」
客 B「そうなんですか?」
山田さん「iPhone12、ピンクケースは…ありませんね」
客 B「そんな…」
傘の客の再登場
一方、傘の客 A は、まだ悩んでいる。
客 A「この傘…やっぱり違う気がします」
山田さん「他の傘も見てみますか?」
客 A「はい」
すると、奥から別の傘が。
山田さん「こちらは今朝、丸の内線で拾われた傘ですが」
客 A「あ!これです!間違いない!」
山田さん「でも、お客様は山手線とおっしゃいましたが」
客 A「あ…そうか。今朝は丸の内線も乗ったんだ」
携帯の客に朗報
山田さん「お客様、iPhone12、ピンクケースがありました」
客 B「本当ですか?」
山田さん「先ほど届いたばかりで」
客 B「やった!」
でも、パスワードを入れてみると。
客 B「あれ?やっぱり違う…」
山田さん「画面に『お母さん』という名前で登録されてますが」
客 B「私、お母さんって呼ばれる歳じゃ…」
真実の発覚
その時、60 代ぐらいの女性が慌ててやってきた。
おばさん「すみません、娘の携帯を預かってたんですが、電車で忘れちゃって」
山田さん「どんな携帯でしょう?」
おばさん「iPhone12 で、ピンクのケース」
客 B「あ、もしかして…」
おばさん「パスワードは娘の誕生日で…」
やってみると、ロックが解除された。
客 B「私の携帯じゃありませんでした」
本当の忘れ物
客 B「そういえば、忘れたのは携帯じゃなくてワイヤレスイヤホンだったかも」
山田さん「ワイヤレスイヤホン?」
客 B「白いケースに入った…」
山田さん「ありますよ」
すぐに見つかった。
客 B「これです!ありがとうございました」
一方、傘の客 A は。
客 A「この傘、やっぱり違います」
山田さん「実は、お客様」
客 A「はい?」
山田さん「傘をお預かりした記録がないんです」
客 A「え?」
山田さん「もしかして、忘れてないのでは?」
その時、客 A の携帯が鳴る。
妻『あなた、傘なら玄関にあるわよ』
客 A「あ、家にあった…」
まとめ
人間の記憶って、本当にいい加減なものですね。忘れ物をしたと思い込んで、実は家にあったり。携帯とイヤホンを間違えたり。でも忘れ物センターの職員さんは、こんな勘違いにも慣れたもので、親切に対応してくれる。現代社会の縁の下の力持ちですね。今回は 78 点。もう少し複雑な展開にしたかったんですが、分かりやすさを重視しました。


