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【古典落語】胴取り あらすじ・オチ・解説 | 酔っ払い職人vs田舎侍の意外な結末

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話芸の殿堂-古典落語-同取り
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胴取り

3行でわかるあらすじ

博打で負けた酔っ払い職人が田舎侍に道を尋ねられ、酒の勢いで暴言を吐き散らす。
怒った侍が居合で職人を胴切りし、胴体は天水桶に乗り足だけが歩き出す荒唐無稽な展開に。
職人が友達に金を借りて足に括り付け「胴を取りに行かす」と博打用語で締める言葉遊びのオチ。

10行でわかるあらすじとオチ

博打ですってんてんに負けた職人が安酒を飲んでふらつきながら歩いていると、田舎侍が越中橋への道を尋ねる。
酒の勢いと博打で負けたむしゃくしゃで、職人が侍に「川へ飛び込め」などと暴言を吐く。
侍が怒って「武士に向かって無礼だ」と言うが、職人は「武士が怖くて鰹節が食えるか、ダシなし野郎」とさらに挑発。
「二本差しが怖くて田楽が食えるか、鰻は四本も差してる」と悪口雑言を続け、ついに痰まで吐きつける。
堪忍袋の緒が切れた侍が見事な居合で職人を胴切りし、鵜飼を謡いながら去っていく。
切られた職人の胴体が天水桶に乗り、足だけがひょこひょこと歩き出すという超現実的展開。
胴体から「おい足、戻って来い」と声がかかるが、そこに友達が通りかかる。
職人が友達に金を貸してくれと頼み、足の腰のところに金を括り付けてもらう。
友達が「どうするんだ」と聞くと、職人が「胴を取りに行かすねん」と答える。
博打の「胴取り(胴元)」と胴切りの「胴」を掛けた見事な言葉遊びでオチとなる。

解説

「胴取り」は上方落語の代表的な演目の一つで、荒唐無稽な展開と巧妙な言葉遊びが魅力の作品です。職人が侍に胴切りされるという物騒な内容ながら、最後の「胴を取りに行かす」という一言で、博打の「胴取り(胴元、博打の親)」と物理的な「胴体」を掛けた秀逸なオチになっています。

作品の見どころは、酔っ払った職人の暴言の数々です。「武士が怖くて鰹節が食えるか」「ダシなし野郎」「二本差しが怖くて田楽が食えるか」「鰻は四本も五本も差してる」など、食べ物に絡めた皮肉や、刀の「差す」と鰻の串刺しを掛けた言葉遊びが次々と飛び出します。職人の江戸っ子気質と大阪弁が混在した台詞回しも特徴的です。

胴切りされた後の超現実的な展開も落語ならではの醍醐味で、胴体と足が別々に行動するという物理法則を無視した描写が、かえって滑稽さを生み出しています。侍が鵜飼を謡いながら去っていく演出も、殺伐とした場面に優雅さを加える効果的な演出として評価されています。

あらすじ

中之島の大名の蔵屋敷の中間部屋の博打場で、すってんてんに負けた職人の男。
安いヤケ酒をかっ喰らって、「♪取られ取られて、フンドシまで取られ、ノミやシラミが今頃質屋でひもじかろ・・・」なんて、ふらふらと歩いていると、田舎の侍らしいのが、「これ、越中橋へはいずれへ参(めえ)ったらよかろかの」

博打で負けてむしゃくしゃしている上に、酒の勢いも手伝って、田舎侍と見て侮って八つ当たり、
職人 「わしゃ、何もおめえに道教えるために歩いてんのやないわい!」と、啖呵を切った。
さらに、「北へ行って見ろ、駄目なら南だ。
東に行っても西へ行っても駄目なら、川へ飛び込んじめえ。そうすりゃ流れ着いて越中橋にぶつかるってえもんだ」

侍 「武士たる者に向かって無礼は許さんぞ」

職人 「何を抜かしやがる。
武士が怖うて鰹節が食えるかい。
おめえら鰹節のダシを使うたんもんも食うたことないやろ。このダシなし野郎!」と、悪口雑言の言いたい放題。

侍 「この腰の物が目に入らんか」

職人 「そんなもん、目に入ったら手妻師になるわい。
二本差しが怖うて田楽が食えるかちゅうんじゃ。
気の利いた鰻なんぞ四本も五本も差してるわい。どうせ鰻なんか食うたこともないやろ、この田舎侍!」と、いきなり「カーッ」と痰(たん)を吐きつけた。

ついに堪忍袋の緒が切れた侍、腰をひねると抜き手も見せずに「エイッ!」と、見事な居合で胴斬。
侍はそのまま、「♪この川波にぱっと放せば、おもしろの有り様や・・・」と、鵜飼を謡って行ってしまった。

斬られた職人の胴はポーンとそばの天水桶に乗っちまって、足だけがひょこひょこと向こうへ歩き出した。
職人 「えらいこっちゃ、こら足!ちょっと戻って来い!」、そこへちょうど運よく友達が通りかかった。

職人 「すまんが銭持うてたらちょっと貸してえな」

友達 「何やそんなかっこして。銭無いこともないが・・・」

職人 「そこにいてる足の腰の所に、その銭くくりつけたっとくれ」、「どないするねん」

職人 「胴を取りに行かすねん」


落語用語解説

この噺をより深く理解するための用語解説です。

  • 中之島(なかのしま) – 大阪市の中心部にある島。江戸時代は諸藩の蔵屋敷が立ち並び、商業の中心地でした。
  • 蔵屋敷(くらやしき) – 各藩が大坂に置いた倉庫兼商館。年貢米などを保管し、売却して藩の財政を支えました。
  • 中間部屋(ちゅうげんべや) – 中間(武家の下級使用人)が詰める部屋。身分の低い者の溜まり場で、しばしば博打場になっていました。
  • 胴取り(どうとり) – 博打の胴元(親)のこと。博打を仕切り、勝負の場を提供する役割。この噺では「胴体を取り返す」との二重の意味。
  • 居合(いあい) – 刀を鞘に納めたまま構え、抜くと同時に斬る技術。一瞬で相手を斬る武術として恐れられました。
  • 二本差し(にほんざし) – 大小二本の刀を差した武士のこと。武士の身分の象徴でした。
  • 天水桶(てんすいおけ) – 雨水を溜める大きな桶。火事の際の消火用水として江戸時代の町に設置されていました。
  • 鵜飼(うかい) – 能楽の演目の一つ。侍が謡いながら去る演出は、殺伐とした場面に風雅な対比を生んでいます。
  • 越中橋(えっちゅうばし) – 大阪の堂島川に架かっていた橋。現在の中之島周辺にあたります。

よくある質問(FAQ)

Q: なぜ職人は侍にあんなに暴言を吐いたのですか?
A: 博打で大負けしたむしゃくしゃと、安酒の酔いが重なり、八つ当たりで暴言を吐いてしまったのです。また、相手が田舎侍と見て侮ったことも理由の一つです。江戸時代の職人は、腕一本で生きるプライドから、武士を恐れない気質がありました。

Q: 胴切りされた後の展開は本当にありえないですが、これは何を意味しているのですか?
A: 落語は現実を離れた荒唐無稽な展開を楽しむ芸能でもあります。この噺では、物理的にありえない展開が、かえって笑いを生み出しています。また、最後の「胴を取りに行かす」という言葉遊びのための伏線でもあります。

Q: 「武士が怖くて鰹節が食えるか」とはどういう意味ですか?
A: 「武士(ブシ)」と「鰹節(カツオブシ)」の音を掛けた言葉遊びです。「ブシが怖くてブシ(節)が食えるか」という洒落になっています。続く「ダシなし野郎」も、鰹節の出汁と「だしがない(見栄えがない)」を掛けた悪口です。

Q: この噺は江戸落語ですか、上方落語ですか?
A: 上方落語(大阪落語)の代表的な演目です。舞台が大阪の中之島で、登場人物の言葉遣いも大阪弁がベースになっています。荒唐無稽な展開と言葉遊びのオチは、上方落語の特徴をよく表しています。

Q: 侍が謡う「鵜飼」とは何ですか?
A: 能楽の演目の一つです。殺伐とした場面の後に、侍が風雅な謡を歌いながら去るという対比的な演出が、この噺の味わいを深めています。

名演者による口演

この噺を得意とした・している落語家をご紹介します。

  • 桂米朝(三代目) – 人間国宝。上方落語の復興に尽力した名人で、この噺でも職人の啖呵と侍の優雅な対比を見事に演じ分けました。
  • 桂枝雀(二代目) – 「爆笑王」として知られ、胴切り後の荒唐無稽な展開を大げさな身振りで表現する独特の演出が人気でした。
  • 桂ざこば(二代目) – 豪快な語り口で職人の暴言を迫力満点に演じ、上方落語らしい毒のある笑いを表現します。
  • 桂南光(三代目) – 軽妙な語り口で、職人の酔っ払いぶりと侍の居合を鮮やかに演じ分けます。

関連する落語演目

同じく「酔っ払い」が登場する古典落語

「言葉遊び」が秀逸な古典落語

上方落語の他の名作

この噺の魅力と現代への示唆

「胴取り」の最大の魅力は、荒唐無稽な展開と絶妙な言葉遊びの融合にあります。博打で負けた職人が侍に暴言を吐き、胴切りされるという物騒な展開から、最後は「胴を取りに行かす」という一言で、博打の「胴取り(胴元)」と物理的な「胴体」を掛けた見事なオチに着地します。

職人の暴言も単なる悪口ではなく、「武士(ブシ)が怖くて鰹節(カツオブシ)が食えるか」「二本差しが怖くて田楽が食えるか、鰻は四本も差してる」など、言葉遊びを織り交ぜた洒落た台詞になっています。江戸時代の庶民の言葉のセンスと機知が光る場面です。

現代の視点で見ると、酒の勢いで無茶をする危険性を示唆しているとも言えます。博打で負けた八つ当たりと酔いが重なって取り返しのつかない事態を招く——これは現代でも通用する教訓かもしれません。ただし、この噺はそれを説教臭くなく、笑いに昇華しているところが素晴らしいのです。

実際の高座では、職人の酔っ払いぶり、侍の居合の演技、胴体と足が分かれるシュールな場面など、演者の技量が試される見どころが満載です。特に上方落語の名手による口演は、大阪弁の味わいと独特のリズム感が楽しめます。機会があれば、ぜひ生の落語会や動画配信でお楽しみください。


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