動物園
3行でわかるあらすじ
仕事が長続きしない怠け者の男が、死んだ虎の皮をかぶって動物園で虎を演じる日当5千円の仕事に就く。
檻の中で虎を演じていたら、急にライオンとの対決ショーが始まり恐怖に震える。
近づいてきたライオンから「心配すな、わしも五千円で雇われた」と聞かされる。
10行でわかるあらすじとオチ
朝起きられず、どんな仕事も長続きしない怠け者の男のところに親類のおじさんが心配してやってくる。
男は「十時頃から始めて、昼飯付きで、昼寝もできて、四時に終わって日当五千円」という理想の仕事を望む。
おじさんは移動動物園で死んだ虎の皮をかぶって檻の中で動き回るだけの仕事を紹介する。
男は虎の演じ方を教わり、檻に入って虎の真似を始めるが、子供にパンをねだったりして危うくバレそうになる。
ようやく慣れてきた頃、場内放送で「虎とライオンの一騎打ち」の特別ショーが始まると告げられる。
係員がライオンの檻を近づけ、ライオンが男の檻に入ってくる。
観客の子供たちは震えている虎を「弱虫虎!ダメ虎!」と罵倒する。
ライオンがのっしのっしと近づいてきて、男は「なんまだぶ」と念仏を唱えるほど恐怖する。
するとライオンが男の耳元でささやく。
「心配すな、わしも五千円で雇われた」というオチで、ライオンも同じ着ぐるみバイトだったことが判明する。
解説
『動物園』は比較的新しい創作落語で、昭和以降に作られた現代的な要素を含む作品です。着ぐるみのアルバイトという現代的な題材を使いながら、古典落語の構成を踏襲した巧みな作品構成になっています。
見どころは、怠け者の主人公が理想とする「楽して稼げる仕事」が実在したかに見えて、実は恐怖体験に変わるという展開の妙です。虎の着ぐるみを着た男が、子供にパンをねだったり、石を投げられて「ウォー」と怒ったりする場面は、虎になりきれない人間の滑稽さを描いています。
クライマックスでは、密林の王者対百獣の王という壮大な対決が、実は「日当5千円のバイト同士」という現実に収束します。このオチは、見世物の裏側の現実を暴く現代的な皮肉が効いており、労働者同士の連帯感すら感じさせる秀逸な締めくくりです。
演者によっては、虎の動きやライオンの威厳ある歩き方を身振り手振りで表現し、視覚的な面白さも加わります。また、最後の「わしも五千円で雇われた」というセリフの間の取り方で、笑いの大きさが変わる、演者の技量が問われる噺でもあります。
あらすじ
どんな仕事についても長続きしない男。
朝は起きられず、力仕事も頭を使う仕事もダメ、口下手で客相手の仕事、責任を持たされるような仕事もダメ。
こんな男を心配して親類のおじさんがやって来る。
おじさんがどんな仕事なら向いているのか聞くと、「十時頃からぼちぼちと始め、昼が来たら御馳走を食わせてもらい、昼からぶらぶらして、眠くなったら昼寝をして、四時頃になったらお終いで、まあ日に五千円くらいもらえればいいでしょう」、「そんなとこあったら俺が行くは」と言うと思いきや、おじさん「ほなら、そういう所があったら行くか」、「そら、もちろん喜んで行かせてもらいますわ」
おじさんの話では、移動動物園の目玉の虎が死んでしまった。
皮をはいで残したのでそれを被って、檻の中で半日動き回るだけの仕事という。
男「へえ、いい仕事やなあ、けど一人前の大人のする仕事やない」などと、半人前にも足りないくせして言っている。
おじさんはいい加減呆れて、怒って帰ろうとすると、男は「ほな、まあやりまひょうか」ということで、おじさんの書いてくれた紹介状を持って動物園を訪れた。
係員は、「あなた虎のほうのご経験は?・・・」、むろんあるはずもなく、係員はそれではと虎の皮を着せてくれ、懇切丁寧に虎の演じ方を教えてくれた。「・・・虎は始終檻の中を行ったり来たり、ウロウロしてるもんやがな。・・・歩き方は足と頭を反対に持って行くと虎の感じが出まんねん。・・・首はこっち向けば、足はこういう具合に・・・」と、わずかな時間で事前研修も終了した。
係員はそれではよろしく頼むと言って、檻の錠前を下ろして行ってしまった。
さあ、一人(一頭か)にされた男、虎の皮を被って檻の中を不安そうにウロウロしだした。
開園と同時に人気の虎の檻をめがけて子どもたちが押し寄せて来た。
朝から何も食べていない男は、檻の前でパンをかじりながら見ている子に、「・・・なあ、ちょっとパンくれ」、なんて手を出したりして、化けの皮がはがれそうになる。
石を投げてきた悪ガキに、ウォーと叫んで脅かしたらびっくりして逃げて行った。
ようやく虎の生活にも慣れ始めた頃、場内マイクで放送が流れ始めた。「ご来場の皆さま、虎の檻の前へお集まりください。
ただいまより本日の特別サービスといたしまして、虎とライオンの一騎打ちをご覧にいれます。密林の王者の虎と、百獣の王のライオンの食うか食われるかの壮絶な死闘を最後までお楽しみくださりませ」、すぐに係員がライオンの檻を押して近づけて来た。
「そんなアホな。そんな事聞いてやへんぞ」と、怖くてうろたえるばかりの虎男の檻に、ライオンがのっしのっしと威厳たっぷりで入って来た。
それを見た子どもらは「やっぱりライオンは百獣の王やで。
それに引きかえ、あの虎は隅で小そうなってガタガタ震えているがな。弱虫虎!、ダメ虎!、ぐず虎!、早くライオンに食われちまえ」と、罵声と非難ごうごう。
ライオンは余裕綽々の足取りで虎男に近づいて行く。「ああ、近寄るな、あっちへ行け、あっちへ・・・もうあかん、なんまだぶ、なんまだぶ・・・」、するとのそのそと近づいて来たライオンが虎男の耳のそばで、
「心配すな、わしも五千円で雇われた」
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